新・資本主義宣言 (7つの未来設計図)

  • 毎日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620322032

作品紹介・あらすじ

七賢人と共に描く日本発の「第三の軸」。有史以来はじめての課題に直面している我々人類のために-「近代の秋」における成熟を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 民主党の古川元久元国家戦略担当大臣を中心とした、「新しい資本主義と成長を考える会」の議論をまとめた本です。会のメンバーの渋澤健さんから出版に先立って頂き、拝読しました。
    これから世界に訴求して行くべき日本的な精神を表すキーワードとして、「吾唯足知」(われ、ただ、足るを知る)という、京都龍安寺のつくばいの文字が何カ所かで引用されていました。私もこの言葉は好きなのですが、この言葉をどう受け取るかは微妙なので、余り使わないようにしていました。でも、この本の中の座談会で田坂広志さんが上手い説明の仕方をしていて、「物質的な制約があるから、これで我慢するということではなく、精神的に満たされているから、これで十分だという、成熟を意味する言葉だ」と言っていて、これが一番要点をついているように思いました。
    更に、この本の中で一番なるほどと思ったのは、高野山大学で修行を積まれた永田良一さんが引用されている、真言宗の「理趣経」にある「大欲得清浄」という教えです。この経典は長らく門外不出、直伝のみの教えとされてきたのですが、それは経典に「欲を持て」と書いてあって、これを教えの意味を良く分かっていない人が読むと誤解されるからだそうです。この真の意味は、「誰かのために、何かのために役立ちたいという、清らかで浄化された大きな欲を持ちなさい」ということなのだそうです。
    これは、田坂さんが言っていることに通じると思うのですが、人間の限りない欲望が資本主義が暴走する原因なので、この欲望をどう抑えるかが重要だという、ありがちでシンプルで身も蓋もない議論ではなく、人間の持っている前に進もうとする強いエネルギーを、より良い方向に持って行くためにはどうすれば良いかという議論を積極的にするべきなのだと思います。
    つまり、人間に本来的に内在しているのは「限りない欲望」ではなく、「成長に対するあくなき志向」であり、この「成長」を「金銭的な増分」と理解してしまうと資本主義の暴走が始まるのであって、人間のエネルギーをより良い方向に止揚する新しいパラダイムが必要だと理解すべきなのだと思います。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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