リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.79
  • (30)
  • (44)
  • (42)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 485
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620323091

作品紹介・あらすじ

偽善と欺瞞とエリート主義の「リベラル」は、どうぞ嫌いになってください!戦後70年。第一人者によるリベラル再定義の書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 著者の考える「リベラル」については良くわかったし、自分の思想も著者が考えるそれに近いとは読んでいて思ったが、ただ、これって超理想論だよなぁと言うのが感想。語句の解説が丁寧で分かりやすく、日常生活にも応用できそうだと思えたのが良かった。こういうのが人文知なんだろうな。

  •  今日本で「リベラル」が嫌われているというのはたしかにそうだと思います。エリート層・知識人が机上で楽しんでいる知的遊戯。あるいは、潔癖で高潔な空虚なユートピア的言説。そんな風に捉えられ、嫌われているのでしょうか。たしかに日本ではそういった側面は大いにあると思います。ただ、それが「リベラリズム」の否定になってほしくない、ということは私も常々思っていて、本書のタイトルはそんな私にクリティカルヒットしました。

     安全保障の分野にかんする論考では、著者自身が言及するようにたしかに少し「耳障り」な話もあります(「九条削除論」「徴兵制の導入」)。その思想は、私のそれとは異なる部分も大きく、全面的に首肯することはできないのですが、それでもこれは「筋の通った」言説である、と思いました。少なくとも、本書でやり玉に挙げられているような「原理主義的護憲派」の人たちよりはよほどましですし、そういった人々の欺瞞を明らかにした点で本書には大きな価値があります。

     民主党政権の失敗で「熟議民主主義」そのものに「決められない政治」のレッテルが貼られてしまっている、というのは重要な指摘です。「熟議」のプロセス自体は極めて真っ当で、民主主義の根幹にあるものではないでしょうか。著者のいうように、民主主義は愚者が、失敗から学んでいくものであると思います。そうだとすれば、もう一度「熟議」のプロセスが見直されなければいけないのではないか、そう思います。

  • わかりやすかった。
    同意出来ない部分についても、今後の思考の材料になるので読んで良かったと思う。
    ただ、「原理主義的護憲派」を「電車で化粧する女性」に例えるジェンダー意識は頂けない…。
    性別限定しないで出来る例えが幾らでもあるだろうに…。

  • 「皇族には人権がない。皇族とは日本最後の奴隷である。彼らを解放しなければならない」

    マジメで役に立つ話だなーと思って読んでいるうちに、だんだんヒートアップしてきて若干ウザい感じに。血管浮き出てそうな語り口だなーと思って読み進めたら最後にオチがついて、ほっこりした。

    (引用)私は、若いころ低血圧だったのに、グローバルな規模で不正がのさばっている現実に怒り、それに呑み込まれてゆく哲学の死に怒り、最近は高血圧化してしまって、降圧剤を飲み始めています。しかし、今の状況を見ていると、還暦すぎたからといって円くなっていられない。「怒りの法哲学者」として、角を立てて生きていきますよ。

    メモ:

    ポッゲのグローバルジャスティス論。ユダヤ人を600万人ころしたホロコーストをあれだけ人類史上最大の犯罪だと批判していたその人々が、年間1800万人が死んでいる貧困の問題 (poverty related death) について積極的な支援の義務がないといっているのは欺瞞だという怒り。 p.157

    本当は人権も民主主義も西欧においてすら未解決の課題なのに、欧米人はそれらを自分たちの独占物として、伝統として血肉化していると考える。外の奴らはイスラムだろうと何だろうと関係ないという態度、偏見。これはオリエンタリズム。 p.189

  • まず、リベラリズムが自由主義ではないということに驚いた。リベラルは、本来は「正義主義」とでも訳すべきでると。公正、公平を最も重んずる思想であると。その中で、グローバルジャスティス、世界正義という概念が現れる。僕も正義とは胡散臭いと思っていた。どの陣営も正義を謳うが、その正義が争いを引き起こすと。しかし、それは本来の正義ではない。実は、正義というものは厳然と存在するが、どの正義も、それらの解釈に過ぎず、その解釈の差異で争いがおこる。しかし、世界正義というものを構築していくことは無駄ではなく、必要なことだと本書から感じた。価値を相対化するだけでは後ろ向きだ。様々な価値を受け入れつつ、それでもなお、すべてを包含する正義を探求する。それこそ人類の使命ではないか。

  • 法哲学者としてリベラリズム研究をリードし、『共生の作法』でサントリー学芸賞、『法という企て』で和辻哲郎文化賞を受賞した学界ど真ん中の碩学。文章は高度に論理的で、その緻密さゆえ「難解」とされてきた。その井上達夫が、まさかこんなにくだけたタイトルの本を出すことになろうとは。本文もインタビュー形式で、読みやすい。
     「安倍政権による政治の右旋回」が急速に進む一方、対抗軸としての「リベラル」も信用を失っている今、その政治状況への応答を動機として、リベラリズムの専門家が、その真髄を、一般読者にも理解できる平易な文体で届けようとする。しかし、これは日本の「リベラル」を擁護するものではない。むしろ、その欺瞞を鋭く指摘し、厳しく批判している。そして、法哲学的な思考態度のトレーニングを兼ねて、哲学史を遡りながら本来のリベラリズムとは何か、解説していく。
     憲法9条をめぐり、法学の内外に賛否両論のある井上説(9条削除論)についても、丁寧に書かれている。哲学の冷徹な方法論と、その根本にある情熱を同時に知ることのできる最高水準の法哲学入門だ。これが、昨今の政治状況のおかげで誕生したことは何とも皮肉だが、せっかくなので広く一般に届けたい。

  • 思索

  • <blockquote>民主主義の存在理由は何かというと、われわれが自分たちの愚行や失敗を教訓として学習する政治プロセスを、民主主義が提供してくれるということですね。完璧に頼れる人などどこにもいないが、愚者が自分の失敗から学んで成長することはできる。そのための政治プロセスが民主主義だ、と。
    民主主義は愚民政治だという考え方とは逆です。愚民政治を批判するエリートも含めてわれわれはみんな愚かさから免れないからこそ民主主義が必要だ。この考え方を私は「我ら愚者の民主主義」と呼んでいます。(P.57)</blockquote>

  • 正義とは何かを考える法哲学に初めて触れて面白かった。高校の時に読んでたら法学部も選択肢に入ったかも。

  • タイトルに反してかなり難解な個所も多い。井上達夫セルフレビューの感が強いが、同時におそらく正しくリベラリズム入門書となっている。何より人間的な温かさと主張の熱さが文章から噴き出して、それがむしろ真摯に刺さり信頼を置きたくなってしまうのだ。

全50件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

原理的なリベラリズムの立場に立って、憲法問題から政局まで、鋭く切り込む。1954年生まれ。専攻、法学。東京大学法学部教授。『他者への自由──公共性の哲学としてのリベラリズム』『普遍の再生』『世界正義論』『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください──井上達夫の法哲学入門』『ザ・議論! 「リベラルVS保守」究極対決』(共著、小林よしのり)ほか。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門のその他の作品

井上達夫の作品

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門を本棚に登録しているひと

ツイートする