憲法の涙 リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください2
- 毎日新聞出版 (2016年3月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620323756
作品紹介・あらすじ
改憲派も護憲派もウソばっかり!立憲主義とは何か。民主主義とは何か。日本を代表する法哲学者が吼える。読書界震撼の「リベ・リベ」、第2弾!
感想・レビュー・書評
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法学に精通する著者が世論を賑わせている日本国憲法の第9条と集団的自衛権との関係について自身の見解を述べた一冊。
法学に精通している著者の憲法の見解は非常に勉強になりました。
安倍政権が行おうとしている改憲についてや集団的自衛権について批判的に捉えている人々の考え方が一概に反戦の方向に向いていないことや国民投票にかけて全国民が憲法について向き合うことへの提唱は共感するものもありました。
近年、安保法案の成立くらいから安倍政権での改憲の話題がよく出ていますが、真意とするところがいまいち分からなかったのですが、本書を読んで9条の意義や日本がこれまで平和であったことや他国の防衛などを理解することができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安倍政権は立憲主義を破壊している!!
集団的自衛権の行使は憲法違反!!
9条守れ!!
と叫んでる護憲派の方々・・・
ちょっと待って・・・
護憲派の方々が言うのも何だかおかしいでしょ?
憲法守れ?いやいやいや・・・
護憲派の皆様も随分欺瞞があるでしょ・・・
9条守るんだったら専守防衛どころじゃなく、自衛隊解体で日米同盟破棄だし・・・
専守防衛を守るんだったら憲法(明文)改正するべきだし・・・
著者は護憲派を「原理主義的護憲派」と「修正主義的護憲派」の2グループに分けてその欺瞞を突く・・・
原理主義的護憲派は、9条のもとで自衛隊と日米安保が存在するのは違憲だ、と言いながら・・・
自衛隊&日米同盟の廃止!とか現実を変える努力も、逆に現実に合わせて9条削除!とか憲法を変える努力もせず、自衛隊と日米同盟の便益のみ享受して居座っている、と・・・
修正主義的護憲派は、9条のもとで自衛隊と日米安保を容認するという従来の内閣法制局見解と同じ【解釈改憲】を採用しながら・・・
安倍政権の集団的自衛権行使OKという【解釈改憲】は批判する、ご都合主義じゃないか、と・・・
どちらにも共通しているのは・・・
憲法を尊重するフリをしつつ、9条を裏切る自衛隊や日米同盟の存在にコッソリと便乗はするし、容認もしてたりする・・・
そして自分たちの政治的ご都合主義を、【憲法を利用して】隠蔽しようとしている点・・・
著者はこの点をもって憲法が泣いている、と書いているわけですね・・・
憲法守るって言ってる方々も憲法を裏切っているじゃんか、と・・・
著者は別に安倍内閣、自民党の解釈改憲や改憲案を良しとしてない・・・
けれども、護憲派学者さんや似非リベラル勢に対してもフェアに切り込んで行っている・・・
その辺がとても学者さまとして誠実に思われます・・・
確かにそれ(上記)が道理だよなぁと考えさせられる・・・
その他、長谷部恭男さん等からの反論への反論や・・・
9条削除論・・・
徴兵制論・・・
なども、なかなか面白く、参考になるのでオススメでございます・・・
スグ読めるし・・・ -
憲法系の本としては中々腹落ちする内容でした。
日本国民である子供や知識のあまりなき人に対しても「日本とはどんな国?」にという問いに自分の言葉で答えをできるようになるべきだと思ってます。
そういう意味だと9条は欺瞞に満ちた、大人による都合の良い解釈をされているのだと思います。
子供が9条を読むと自衛隊は明らかに違憲と思います。護憲派が何も変えずに保持するのは欺瞞以外の保身と自己都合でしかないと思います。
9条廃止や徴兵制といったラディカルな意見は耳を閉ざしたくなりますが、今の平和が何によって保たれていたのか、今後の平和を保つには何が必要なのかを考えると、このような意見は正しいのではないかと考えます。
日本の未来を担う子供たちにも分かりやすい言葉で憲法を見直すべきではないですかね?
リベラルも保守も自己都合のためのフレームワークであって、それにとらわれない議論が必要で、国民は分かりやすさと、想像力をもって、日本という国を安全保障の観点でどうしたいかを考えないといけないですね。 -
9条削除・徴兵制導入を唱える「怖いオジサン」の論争的提言
『リベラルのことは嫌いでも〜』の続編だが、前著を未読でも大丈夫。ロールズの正義論など法哲学の小難しい議論は省き、安保と9条により特化しているのでわかりやすい。前著の読者にとっては多少重複も多いが、各方面からの異論や批判への回答、補論なども含まれているので読みごたえがある。
改憲派にも護憲派にも、その罪と欺瞞を具体的にあげてバッサバッサと切っていく様は痛快だが、やはりリベラルにはより手厳しく容赦がない。国会前でデモしてる若人には、叫ぶべきは「9条守れ!」じゃなくて「9条変えろ!」だろ?と疑問を投げ掛け、憲法を「うそ臭い空念仏」化させる護憲派の言説に呆れ、解釈改憲を「大人の知恵」とうそぶく修正主義派には、そもそも安倍政権の解釈改憲を非難する資格なしと断罪し、「違憲事態の固定化」を狙う原理主義派には、憲法が泣いていると憤る。
いったい9条が大事なのか? 憲法が大事なのか? 憲法がこれだけないがしろにされ、コケにされているのだから、国民はもっと怒らなければならない、というのが、著者の止むに止まれぬ義憤なのだろうが、その主張も本書で再三再四批判している、高みからのエリート主義的発想にも思えるし、むしろこれだけあやふやな状態の憲法で、曲がりなりにも戦後70年やってこれたことの方に感動を覚え、憲法をも超える国民の知恵に思いが至った。
日本列島自体、今後数十年以上は繰り返し地震や火山の噴火などの自然災害に見舞われることが予想され、そのたびに自衛隊員による献身的な救援が必要とされるであろう状況で、「戦力」とも認知されず憲法外に置かれた自衛隊の存在を思うと、本書の提言の広範なひろがりを待つまでもなく、『敗戦後論』でかつて加藤が主張していた「選び直し」や、政治的主体性を強めるという目的での改憲へのハードルは、ますます低くなりつつあるように思えるのだが、果たしてどうか?
「欺瞞にふける者は、その欺瞞を批判されると別の欺瞞的手段でそれを隠そうとする。嘘をついた者は、その嘘を指摘されると別の嘘でごまかそうとするのと同様に。護憲派も改憲派と同様「欺瞞の蟻地獄」に陥っている」
9条改廃により自衛隊をいったん「戦力」と認めた暁には、それを統制し濫用を防ぐ統制規範を憲法に盛り込むべきだという著者の主張だが、戦争に至るまでの歯止めだけでなく、戦争が始まった後の歯止めも盛り込むべきだろうと思った。またぞろ「一億総玉砕」では、同じ轍を繰り返すことになるだろうから。 -
前著に続いてこちらも読んだ。前著は正義論についてだったが、今回は法哲学を中心とした憲法論。前著でも憲法についていくらか扱っていたが、その幅を広げてより深めた内容になっている。そんで今の日本の置かれている政治的状況からするとタイムリーな内容。
井上達夫の立場はよくわかった。ロジカルで非常に筋が通っているし、バランスもとれていて、これがリベラルかと学ばされるところ多い。ただ、護憲派、改憲派ともに井上に滅多切りにされているが、どこに人生としての価値を置くかで、どちらの立場も理解できてしまうところはある。私たちは個人は、自分が考える前から社会におかれており、個の連帯の中で生きることを必定とされている以上、正義に基づく判断基準が優先されるべきだというのは疑うことができないが。
様々な方向に思考を飛ばされる一冊だった。いつも以上に新聞が気になりだした笑
17.5.7 -
東大の学者でこういう人もいるんですね。
9条
①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
護憲派には二つある。一つは、自衛隊と日米安保条約は違憲とする原理主義的護憲派。もう一つは、自衛隊は違憲ではないとする修正主義的護憲派。
井上先生の9条2項でなく丸ごと削除論
・安全保障の戦略は憲法で凍結してはいけない
1項も安全保障の基本政策を述べている(非武装中立が違憲から集団的自衛権容認まで 解釈の幅がある可能性)
1項を削除して非武装中立まで選択肢にいれて民主的立法過程での討議にゆだねよ
・もし戦力を持つなら「条件付き制約」を憲法に書き込んでおくべき。
=シビリアン・コントロール、開戦決定への事前国会承認、徴兵制、良心的兵役拒否。
徴兵制は、無責任な好戦感情に政府と国民が駆られる危険性への歯止め
セカンドベスト-護憲的改憲 専守防衛の枠内で自衛隊を位置づける
サードベスト-保守的改憲発議
↓井上達夫×モーリー「護憲派と憲法の涙」
https://youtu.be/r3nr_uD5His
↓宮崎哲弥 x 井上達夫
https://youtu.be/VD6Jm29XZo0
↓田原総一朗×井上達夫×篠田英朗「集団的自衛権とトランプと国際主義の行方」
https://youtu.be/71TG5YZJKdo -
自衛隊と憲法9条の整合性に焦点当てた本。いわゆる改憲派と護憲派の双方の主張の矛盾点を列挙し、9条をまるごと削除すべき、という持論を展開している。国の安全保障に関わるイシューを憲法に書き込むべきではない、というのがその主張の背景。
"現在の9条は 、安全保障の基本を 「非武装中立 」に凍結してしまっている 。それが容易に変えられないから 、右も左も解釈改憲で対応し 、結果として九条を死文化させている" -
評判になった著者の『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください―井上達夫の法哲学入門』の続編で、前著で反響のあった憲法・安全保障問題に関する著者の考え方について、誤解を解き、批判に応答することにより、その趣旨をさらに明確にして再擁護することを目的としている。
憲法第九条は文言上絶対平和主義を採用しており自衛隊は違憲な存在であるという認識のもと、現在の日本の護憲派は、憲法を尊重するふりをしつつ、九条を裏切る自衛隊と日米安保の存在にこっそり便乗する、ないし、それを容認しさえする、憲法論的欺瞞を抱えており、改憲派よりも憲法に対する罪は重いとする。そして、憲法第九条の今後のあり方について、「最善」は、九条削除であり、具体的には、安全保障戦略の基本は憲法で凍結すべきではないが、「どのような戦略が選ばれようと、それが乱用されないための戦力統制規範は憲法に入れろ」という意見だとし、国民が無責任な好戦感情にあおられないための歯止めとして「徴兵制+良心的兵役拒否」も組み込むべきだと主張している。「次善」は、護憲的改憲、「三善」は、保守的改憲発議、「最悪」は何も変わらないことだとしている。
自分は、憲法解釈としては、著者の考えは基本的に間違っていないと思う。ただ、「修正主義的護憲派」と本書で言われている従来の内閣法制局的な解釈も成り立つ余地はあり、そうであるならば、確かに限定的な集団的自衛権容認も違憲ではないという結論になるだろう。そして、今後の憲法第九条のあり方としては、著者は「次善」としている護憲的改憲が望ましいと考える。自衛隊がこれだけ定着している以上、憲法第九条第一項の趣旨は維持しつつ、自衛隊を憲法にきちんと位置付けることが、立憲主義の精神からも必要だと考えるからである。 -
前作に引き続き、憲法を巡る諸問題を論じています。
前作よりも9条の問題にフォーカスしているので、その主張が明確に感じられるなっていますね。
9条があるから侵略されない、というような主張の間違いが明確に理解できます。
護憲派こそ改憲を主張すべきという主張がしっくりきます。