思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620324258

作品紹介・あらすじ

京セラ創業・第二電電設立・JAL再生と、超人的な手腕を発揮した“新・経営の神様”稲盛和夫。その人間力の源泉に迫る、評伝文学の金字塔!

感想・レビュー・書評

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  • 思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫著


    1.本書
    就職、京セラ、KDDIそしてJAL再生。
    稲盛さんの全ての足跡が残されています。
    ここで見えてくるのは、スキルではありません。
    稲盛さんの考え方、生き方です。

    2.玩具タイトーの売却
    買い手スクエアエニックス当時の和田社長の回想があります。
    「京セラとの交渉は金額ではなかった。
     タイトーをどう成長させるのか?」

    3.JAL最終日
    「謙虚にして驕らず。さらに努力を。」
    本書の、いえ稲盛さんの全てが凝縮されている言霊です。そのため抜粋しました。

    4.最後に
    500ページのボリュームです。
    全く飽きない、いえ、益々引き込まれていきます。

    【渦の中心となれ。】

    稲盛さんのメッセージ。
    人生折り返し地点のわたしに強烈に刺さりました。

    #読書好きな人とつながりたい

  • 京セラ創業者の稲盛和夫の評伝。評伝の中でも、もっともよくまとまっているのではないかと思う。KDDI合併の話やJAL再生の話もその内幕にも触れられている。

    まずは、生まれから鹿児島時代、家族の関係や受験の失敗、そして就職しての上京(京都)、松風工業時代のセラミックスとの出会い、京セラ創業と結婚、組合との向き合い、世界進出、第二電電創業、JAL再生までが年代記として綴られる。その中には、創業時の血判状の話、通信参入のきっかけとなった千本さんとの出会い、有名な孫正義とのアダプタのエピソードにも触れられる。こうした歴史が、稲盛さん本人だけではなく、多くの関係者への取材を通して書き上げられたものである。

    特に通信自由化と第二電電設立やその後立ちあげ、競争の勝利、移動体通信事業への参入と成長、株式上場とNTT値下げに対抗したフェニックス作戦、PHS事業の失敗、そして合併によるKDDI設立の経緯は、自分の関わる業界であるだけに興味深く読んだ。無線通信回線敷設や多摩通信センター竣工にまつわる話、同時期に京セラが出る杭は打たれるがごとくバッシングにさらされていたことも初耳であり、いろいろなことがあったのだと改めて思う。

    「ど真剣に生きてみろ」「手の切れるような製品を作れ」「お客様の召使になれ」「ネバーギブアップ」「ベクトルを合わせろ」「渦の中心になれ」「土俵の真ん中で相撲をとれ」「人間として何が正しいかを考えろ」「常に創造的な仕事をする」といった京セラフィロソフィとして知られる言葉がいかに生まれてきたのか、が分かる。また、アメーバ経営やその会計手法がどのようにして生まれて定着してきたのかも描かれている。
    京都セラミックスでなく、"狂徒"セラミックスと揶揄をされたとも書かれているが、京セラは創業から今日に至るまで60年間以上一度も赤字を出したことがないという。そして、京セラだけでなく、第二電電(現KDDI)創業とJAL再生を成し遂げたその核には、京セラフィロソフィがあることに疑いを抱くことは難しくなってくる。
    稲盛氏がかつてスト破りを行ったことに対して著者は、「儲けるという漢字は"信じる者"と書くと稲盛は言う。それはまさしく商売の基本である信用を意味する」と書き、松下電子の信用を得るために行ったと説明するが、おそらくは「信じる者」と「儲」の関係はさらに深いものである。「フィロソフィを信じる者」とビジネスとの関係は想定するよりも大きいのではないかと思っている。

    利益に対する考え方もオーソドックスとも言えるが、それを社員のレベルまで徹底するところがフィロソフィとアメーバ経営の効果である。
    「決算書は経営者の意思と実行力の所産であり、その経営に対する考課状でもある」というが、ここでいう決算書は、会社の決算書に限らず事業部の決算書もそうであり、事業単位、部単位、の決算書についても当てはまる。
    また、公明正大に利益を追求することを是とし、「企業の利益は社会への貢献の結果だ」という。「企業というのは、良い商品を安く供給して社会を豊かにする。そのように社会に貢献した結果として、我々は利益を頂戴しているんだ」と心の底から考えているのである。

    『生き方』が中国で300万部超のベストセラーとなっているという。中国が急速に資本主義経済への移行を進める中で、京セラ・KDDI・JAL再生を大成功させた物語は日本でよりもより多くのレスペクトを集めているのかもしれない。

    「考えて考えて、本当に一歩一歩真剣に働いてきたら明日が自ずから見える。しかし、あさっては見えない。見る必要もない。一歩進めれば一歩先が見える。その一歩一歩の延長で未来のことが成し遂げられる」ということも、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」ということも、中国の新興企業の方により刺さるのかもしれない。

    あまり知られていないことだが、京セラのアメーバ経営において、業績と報酬をリンクさせていないことが挙げられる。素晴らしい業績を上げたアメーバに与えられるのは名誉と誇りである。仲間から寄せられる感謝や賞賛こそが最高の報酬と感じられる状態になることがアメーバ経営が成立する条件である。このことは本書でアメーバ経営について語るときに強調されている点である。事業部制以上に分権化が下部組織におよび、採算管理がアメーバごとの日当たり付加価値の算出ができるようになっているというのは経営イノベーションであるが、決して多くの企業に取り入れられていない。また、経営の感覚をアメーバのリーダーに持ってほしいという願いと期待でもある。それは、フィロソフィの観念がどこかで欧米型の企業経営理論と合致しないところがあるからではないかと考えている。

    夜のコンパで親交と結束を図り、採用時には人柄をもっとも重視し、京セラのフィロソフィに共感できない人には辞めてもらう。決してあきらめず、苦労に苦労を重ねて求めるものができない社員に向けて、「君は神に祈ったか」と聞く。「緊迫感を伴った状況でしか、創造の神は手を差し伸べないし、また真摯な態度でものごとに対処しているときでしか、神は想像の扉を開こうとしない。暇と安楽から生まれるものは、単なる思い付きでしかないのである」と考える。こういった働き方は時代には合っていないのかもしれない。

    著者もそのあたりのことは気にかけていて、「彼のたどった道の延長線上には、これからの経営の最適解はもはやないのかもしれない」と書いている。しかし、「過労死するような労働環境は論外だが、ほどほどに、適当に、肩の力を抜いて立派な仕事ができるほど、この世の中は甘くない。必死になって働くことを否定してしまっては、人的資源を唯一の資源とするこの国が衰退に向かうのはもちろん、人々は生きていくことの意味さえ見失ってしまう」として、「働き方改革は、こうした稲盛の言葉の否定ではないはずだ」と続ける。
    働く時間を短くすることは手段であり、働き方改革の目的ではなく、フィロソフィで示される働き方と相反するものではないだろうと説明する。それは、著者の心のどこかでは、働き方改革の指針とは矛盾するものであることを認識しているのである。単純に、その働き方が時代にそぐわぬ、時代遅れのものになってしまったとは言うべきではないだろう。

    そして、最後に『生き方』に書かれた次の言葉で締めくくるのである。

    「働くということは人間にとって、もっと深遠かつ崇高で、大きな価値をもった行為です。労働には、欲望に打ち勝ち、心を磨き、人間性をつくっていくという効果がある。単に生きる糧を得るという目的だけではなく、そのような副次的な機能があるのです。ですから、日々の仕事を精魂込めて一生懸命に行っていくことがもっとも大切で、それこそが、魂を磨き、心を高めるための尊い「修行」となるのです」


    最後に、「経営12箇条、稲盛会計学 七つの基本原則」「六つの精進」「京セラフィロソフィ」「KDDIフィロソフィ」「JALフィロソフィ」のそれぞれの項目をまとめたものが付記されているのが便利。

    ----
    【三社合併】
    本書では、DDI、KDDI、IDOの三社合併についても比較的詳しく書かれている。
    その中で、KDDに対する評価が辛辣である。

    まず、最初に合併の話が出たとき、「KDD幹部は、本当に殿様みたいでかみ合わなくて苦労しました」と稲盛さんは著者に語ったというように一度は破談する。その直後、トヨタ系のTWJと合併をしたが、さらに経営を苦しくしてしまう。約1年後に合併の話を持ち出すことになる。

    それに対して、「「我々は以前とは変わりました」と言ってきたが、変わっていたのは財務内容だった」と全くきつい皮肉を込める。

    さらに合併に際して、リストラを求められたのだが、そのリストラについては次のように書く。
    「稲盛は贅肉の多さが目立つKDDに対し、「合併前に経営のスリム化をお願いしたい」とリストラを求めた。
    14,700人いた従業員を五年間で2,000人削減する目標が立てられたが、いざ早期退職を募集すると応募する者が殺到し、難なくこれを達成することができた。役所的な雰囲気の会社だっただけに、みな稲盛流経営に恐れをなしたのである。
    合併後の元KDDの存在感は、否応なく低くなってしまった。彼らのプライドの高さと時勢を見る目のなさが、自らの首を絞めたのである」
    稲盛流の経営に恐れをなしたというよりも(おそらくきちんと理解してはいなかった)、有利子負債の多さに将来性を感じられずに出て行ったというのが割と真実に近かったのではないかとも思う。

  • 評伝として抜群に面白い。稀代の経営者の物語

    *感想
     稲盛イズムに同意するかは人によるが、間違いなく多くの学びのある本である。稲盛氏の生涯を追うことで、経営、ビジネスの原則、一種の法則を見出せるからだ。

    〇読んで面白いと思った点
    *経営には原則がある
     稲盛氏は業界が全く異なる大企業の経営を行い、どれも飛躍的な成長に導いた。ファインセラミックスを主軸とした「京セラ」、通信業の「第二電電(後のKDDI)」、航空業の「JAL」である。これらから分かるのは、「経営は一つの専門職であり、原則がある」ということだ。業界の知識よりも「顧客目線でビジネスをする」「無駄を減らして利益を追求する」というのはどの企業にも通ずるであろう

    *「人間としての生き方=会社経営」を掲げることの稀少性
     最近は、松下氏や稲盛氏のように、人間性・哲学をそのまま経営ノウハウとして語るような企業家が少なくなってきている気がする。経営学やマーケティングが発達し、「いかに儲けるか」「いかに勝つか」を追求した経営ノウハウが広く蔓延している。今の時代に稲盛氏の哲学を読み返すのは逆に新鮮だった。「人間としての高みを追求することが、良い経営につながる」というのは今でこそ面白い

    *稲盛氏が抜けたらつぶれた松風工業
     稲盛氏は新卒で入社した松風工業の人事、体制に絶望して起業を決めた。新卒で入社したにもかかわらず、魅力的な新製品を開発し、数年がたつ頃には会社の屋台骨のような存在になっていた...。すごい

    *稲盛氏の人生、前半は失敗続き
     京セラ創業後は快進撃を続けるが、それまでは社会的に失敗することが多かった。就職、大学受験と共に希望通りには進まなかった。また、中学を浪人して行った2度目の高校受験にも失敗している

  • 評伝作家の第一人者、北氏の最新作は稲盛氏。著者が存命中の方の評伝を書かれるのは初めてではないだろうか。
    KDDI・au、JAL。京セラの創業は言わずもがなだが、この2社の成功も約束されたものでは決してなく、むしろ失敗必然とみる人も多かった起業・再生だったことに改めて驚く。
    手の切れるような商品、ど真剣に働くなど、真っ直ぐに生き・働くことの素晴らしさを痛感できた。
    読み終えて背筋が伸びる一冊。

  • 稲盛和夫氏の主な歩みは、次の通り。
    ・昭和 7年 鹿児島市薬やく師し 町において出生。
    ・昭和26年 鹿児島県立大学工学部入学。
    ・昭和30年 松風工業入社。
    ・昭和33年 上司と技術開発の方針で衝突。新会社設立を決意。松風工業を退社。
    ・昭和34年 京都セラミック株式会社(宮木男也社長)設立。取締役技術部長に就任。
    ・昭和40年 時間当り採算制度、懇親会(コンパ)制度導入。
    ・昭和41年 本社機能を滋賀工場へ移転。京セラ社長就任。
    ・昭和42年 経営理念制定。「京セラフィロソフィ」第1集発行。
    ・昭和58年 盛和塾の前身となる京都盛友塾発足。
    ・昭和59年 第二電電企画株式会社を設立し、代表取締役会長に就任。
    ・昭和60年 京都経済同友会の代表幹事就任。第二電電株式会社(DDI)に社名変更。第1回京都賞授賞式を国立京都国際会館で開催。
    ・平成 9年 京セラと第二電電の取締役名誉会長に就任。臨済宗妙心寺派円福寺にて得度。僧名「大和」。
    ・平成15年 社会福祉法人盛和福祉会を設立、理事長に就任。
    ・平成16年 米国初の「盛和塾」発足。
    ・平成22年 日本航空(JAL)、会社更生法の適用を申請。稲盛、JAL会長に就任。
    ・平成24年 JAL、2年7カ月という短期間で株式再上場を果たす。
    ・平成30年 京都賞賞金を5000万円から1億円に倍増。

  • その生い立ちから若手社員時代、京セラ創業、DDI創業、そしてJAL再生に至るまで、「新・経営の神様」稲盛和夫氏の半生を記した一冊。

    「アメーバ経営」として有名な、小規模チームを事業単位としてリアルタイムでの数値の見える化により独立採算を促す徹底的に合理的な経営管理手法、その一方でJAL再生においても揺らぐことのなかった「全従業員の物心両面の幸福の追求」という情理の心、これらの根底にある「フィロソフィ」や「利他の精神」、そして「動機善なりや、私心なかりしか」と自らを律する克己心、人として正しいならばどこまでも追求する並外れた探究心、あらゆる権威を否定する反骨心があり、これらに呼応するかのように惹きつけられた多くの人々との出会いや別れ、確執、成功と失敗、修羅場の連続が語られる。

    自身によるこれまでの著書からの引用や、本書の取材で初めて見つかった若手時代に父親に宛てた手紙などを通じて「人間・稲盛和夫」がその時何を思いどう行動したのかを追体験できる。また、今もその評価が完全に定まっているとは言い難いJAL再生についてもその内情を含めて詳細に記載されており、何より企業人として「ブレないフィロソフィ」を持つことの大切さ、一方でそれを持ち続けることがどれほど難しいことなのかを痛感する。「新・経営の神様」の集大成であると同時に、読者に人として「働くこと」の意味を今一度本気で考えることを促す一冊。

  • 利他の心。利他の循環こそが社会を豊かにする。

    ど真剣に生きてみろ。

  • あらゆる点で、ノンフィクション・評伝のお手本のような本
    500ページ超のボリュームであるが、エピソードの密度が濃く、テンポがよい。

    前半生は受験の失敗や就職の失敗など赤裸々に描かれている。
    後半生の快進撃はむしろ前半生に表れている。

    「信義を重んじ、礼節正しく、仁信を旨とする。」
    三つの戒め 負けるな、嘘をつくな、いじめをするな

    薩摩の教育が人生を形作っている。

    無理やりとも思える無機化学への学問変更、碍子メーカへの就職、
    セラミックの出会い、人生の師の出会いが運を呼ぶ。
    まさに「生命の実相」にある引き寄せの法則のように。

    「動機善なりや。私心なかりしか」(南洲翁遺訓)

    第二電電の創業のときもJALの再建の時もこの理念に立ち返り決断している。
    孫正義との出会いも描写されているが京セラフィロソリーを元にしたとすると松下幸之助のように評価していないのはむべなるかなという印象。

    哲学をもった経営者が出にくい昨近、まだ現役の経営者が存命でいることに思いを致すには最高の本。

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著者プロフィール

昭和35年(1960)12月24日生まれ。
著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)(講談社) 、『陰徳を積む 銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)、『胆斗の人 太田垣士郎 黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫』(毎日新聞出版)『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)などがある。

「2022年 『本多静六 若者よ、人生に投資せよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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