噺は生きている 名作落語進化論

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  • 毎日新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620324593

感想・レビュー・書評

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  • 広瀬さんの本はいつもわかりやすくすらすら読める。

    談笑師匠の芝浜はラストでお酒を飲んでしまうってのをポッドキャストで聴いてからどうしても聴きたかったんだけど、配信で販売もしてないし、落語会を聴きに行くのもまず不可能でがっかりしてたらこの本で明かされていた☆彡
    そうかあ、こういうストーリーかあ、ってわかってもやっぱり聴きたいと思わせるのはウマイよね。

  •  同じネタでも噺家によって演出は異なる。どの師匠についたかにもよるし、噺家自身の感性・強み・工夫といったものが大きく影響してくる。人気でかかることの多い4つのネタ『芝浜』『富久』『紺屋高尾と幾代餅』『文七元結』について、おそらく日本でいちばん落語を聞いている著者が、源流にさかのぼり、実名を挙げながら、系統立てて解説する。
     たとえば『芝浜』は〈よくできた女房が亭主を立ち直らせる美談として洗練させた〉という三木助が源流。談志は〈現代人としての感情を大胆に注入し、別次元の「感動のドラマ」に仕立てた〉。利口な役は大家におしつけ、亭主に惚れている可愛い女房へ変え、ダンナをだます罪悪感からの解放といったところに焦点を当てた。志ん朝の女房は賢しらに見えないよう、ダンナをじょうずに転がしつつ立てるところは立てる。〈真実を打ち明けて謝る女房に向かって、熊が「お手をあげなすって」と返す〉ダンナもやはりかわいい。〈亭主の素直さ〉に特徴がある圓楽のテイストは「現代的なホームドラマ」。寄席の爆笑王・権太楼の特徴は、やはりコテコテな感情演出。女性の演じ方がうまいといえばさん喬だと思うが、なるほど最後の女房がすんごい長尺に。談志の流れにある立川流の3人もそれぞれおもしろい。談春は〈軽妙なやりとりと談春特有の「泣き節」とが交差するラブラブ夫婦の物語〉に。志らくは談志の「可愛くてバカな女房」の流れをさらに突き詰めた。談笑の演出が、自分としてはすごいと思う。「私が嘘をついてました、ごめんなさい」と謝る女房に「オレ、これ知ってたよ」と返す勝五郎。嘘をつきつづけて辛いのは、女房だけじゃなく、勝五郎のほうもとする新展開には、うなるばかりだ。ネタばらしはしないが、少々ひねりを加えたオチも見事。実際聞いたときも、おーっとなった。
    『芝浜』だけで、しかもだいぶつまんでコレなんだから、あとの3つ(数え方では4つ)も推して知るべし。2人や3人比較をすることはあっても、これだけ深く、かつ網羅的にこのテーマで書けるといえば、著者を措いてはないだろう。もちろんこれを楽しめるのは、ある程度落語に親しみがある層だとは思うし、こうした本が出版できるということはいよいよ落語「ブーム」もただの流行現象ではなくなったということかもしれない。
     個人的には立川流の現代的な演出が好きだ。談志の型をそのまま受け継ぐのではなく、談春・志らく・談笑といった弟子がそれぞれに自分の工夫を盛り込んでいるのが、本書でも読みどころの一つとなった。落語を聞いて読んで楽しく、また読んでから聞くのもおもしろい。中級編からの、最高の落語案内だと思う。

  • 噺の歴史という縦糸、噺家さんによるその噺の演出の違いという横糸が絡み合う伝承と創作の歴史。そうやって噺は生きているんだということを知ると、より落語がたのしい。あっ、でもそんなこと知らなくてもよい!それでもたのしめるのも落語だから。

  • 誰それはこう…誰それはこの噺家の設定を踏襲してあぁしてアレンジ…と実際噺を聞かないとわからないね!とYoutube見ながら確認したり。最近の噺家さんのは見たことあるのでイメージしながら読める。文七元結が好きな私としてはいろいろな解説が読めて興味深かった。

  • 当たり前ですが古典落語の演目は内容やストーリーが決まっています。
    サゲ、と言われる最後のオチも当然決まっています。

    しかし、これも当たり前の話ですが同じ演目でも落語家によって全く違う味わいがあります。

    特に大ネタと言われる有名な演目では、皆が独自色を強めて聞き手に強烈な印象を与えるようにアレンジします。
    「芝浜」「富久」「紺屋高尾」「文七元結」
    これらの演目を名人と呼ばれる落語家はどう演じたか。

    ありそうでなかった本です。

  • 落語ファンによる落語ファンのための本。
    古典落語5席を談志・志ん朝といったレジェンドから白酒・一之輔といった現役まで演出を語る。
    同じ噺でも演習によって演じ分けるのが落語の魅力であるのは確かだが、流石に本で読むと少し眠くなる。
    でも、落語の魅力が凝縮されている。
    是非。

  • 2017年7月刊。くらべる落語。落語の有名な5つのネタを題材に、落語家による演じ方の違いを丁寧に解説している本。同じ演目でもここまで違うのかと驚く。それぞれの噺家の個性がにじみ出ている描写が素晴らしい。落語は伝承されるだけでなくアレンジされ続けていくものだったのか!

    ◆【引用メモ】落語の演目とは単なる「ネタ=素材」であり、一つの演目に対して一つの決まったテキストが存在するわけではない。(中略)一つの演目が一つの型に固定化されることは決してない。噺は、生きている。だからこそ、落語は面白い。(p.3 はじめに)

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著者プロフィール

広瀬和生(ひろせ・かずお)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒業。へヴィメタル専門誌「BURRN!」編集長。落語評論家。1970年代からの落語ファンで、毎日のように生の高座に接し、自ら落語会のプロデュースも手掛ける。『この落語家を聴け!』『現代落語の基礎知識』『落語評論はなぜ役に立たないのか』『談志の十八番』『「落語家」という生き方』『僕らの落語』『噺は生きている』『21世紀落語史』など、落語関係の著書を多数上梓。


「2022年 『小三治の落語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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