ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」

著者 :
  • 毎日新聞出版
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620325187

作品紹介・あらすじ

既存の枠にとらわれない新しい価値観をどのように生み出していけるのか。
「個」が強調される中、信頼に足る家族・コミュニティーをいかに作り上げることができるのか。
みなの声に耳を傾ける社会を実現するには、どうすればよいのか。

霊長類の目があれば、自ずと答えは見えてくる。

学びの基本、サル真似ができる霊長類は人間だけ?
大量発生中のイクメンはゴリラ型の父親?
「ぼっち飯」ブームは、人間社会がサル化している証拠?
現代日本の民主主義はゴリラのそれ以下?

動物の一種としての人間に立ち返り、これからの共同体・国家のあり方を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の山極さんは、ゴリラ研究の世界的権威であり、京都大学総長でもあります。内容は「毎日新聞」の連載コラムに手を入れたもので、手頃な長さの小文集です。自ら群れの中に入って体験したゴリラの生態を「鏡」に、今の人間の考え方や行動を、それが個人としてのものもあれば、集団としてのものもありますが、省みて、分析・評価し、山極さんなりの示唆を書き連ねています。ゴリラ・チンパンジー・オランウータンといった類人猿は、やはり私たちと同類との感を強くしますね。今の人間は「無くしつつあるもの」が多すぎる気がします。

  • 人間の在り方を、類人猿と触れてきた先生の立場から考える本です。社会人類学的な本かと思ったのですが基本的にはコラムのようで、気楽に楽しく読めました。
    人間という大くくりとゴリラを比べるのはなかなか乱暴ではありますが、ホモサピエンスの社会性と残忍さは一体どこから発生したのだろうと考えるととても興味深い。
    ゴリラの社会性はなかなか面白く、家父長のようなオスゴリラでありながら、女子供の支持が得られないと立ち行かないのがユーモラス。ゴリラは父親も子守をするようでなんとなく昨今のお父さんのようです。
    比べれば比べるほど、人間はその狡さと性格の悪さで発展してきたような気がしてしまいます。ゴリラのように生きるというよりも人間自体は救いが無い生き物なので、根本的に謙虚になるしか無いような気持になりました。
    同胞同士で傷つけあってきた数千年、または数万年。今では地球を覆いつくし国境を作り、一番安価な資源である人間の命を湯水のように浪費してきました。同胞にすらそうなのですから、自然環境なんて二の次三の次、どんどん絶滅に追い込んでいます。少しばかりのヒューマニズムで気まぐれ救済を施しますが、そもそもヒューマニズムってなんですかという所ですよね、ヒューマンは駄目だっていう議論からスタートしているのですから。

    すっかり話は逸れましたが、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンの方が人間より乳離れ遅いって知らなかった。オランウータンは7年位母乳を飲むようです。

  • 少し前の話ですが
    京大の学生寮「吉田寮」のことが
    いっとき話題になっていましたね
    その時に
    「学生諸君も もう少しゴリラらしく対応できれば
     いいのだけれど…」
    というニュアンスのコメントが
    山際寿一総長のお言葉として
    報じられていた記事を読みました
    それも
    どちらかといえば
    ーなんということを
     人間ならぬ
     ゴリラ並みに例えるとは
    という非難めいた調子で
    紹介されていたように覚えています

    むろん
    山際寿一さんの真意は
    気高く賢明で協調を重んじる
    尊敬すべきゴリラ諸君
    としておっしゃっているのですが…

    改めて、思うのは
    地球上で傲慢になってしまった
    我々ニンゲン、
    そしてニホンジン、
    に対しての
    傾聴すべき警告の書になっています

  • あまり中身を見ずに手に取ったので、ゴリラが物申す!のような内容なのかと考えていたが、「変なゴリラ」と化したことのある京大総長、山極先生が霊長類視点から現代の人間社会を見つめて、生物としての人間はどういったものなのか、何の影響で現代社会はこうなってしまったのか、今の社会はこうしていかないと…と問題を提示していく。
    元々がコラムだったこともあって、どちらかといえば社会学メインという印象。でも合間で急に入る霊長類やサル、ゴリラの話が飽きさせず、何が問題なのかを理解しやすくしてくれている。

    あとゴリラ愛がすごい。

  • ゴリラの視点からとらえた人間社会。
    鋭い!!目から鱗ではっとさせられた。
    高校生ぐらいのときに知ってたら京大目指してたなぁ。

  • 久々に、目から鱗!
    そして、衝撃的な解釈で、涙が出てしまった。

    外国で暮らし、異文化を知る。
    それだけなら、自分自身にもある話だけど、
    筆者は、ゴリラの住む森で、ゴリラに受け入れてもらい、ゴリラと遊び、ゴリラに「友達」として認められるまでになった。
    そんなガチのフィールドワークの体験に基づき繰り広げられる洞察。
    比較対象が、人間の文明同士、人類の文明数千年をはるかに凌駕し、類人猿ができた数十万年前に及ぶから、圧倒的。

    まず、「父親」とは、社会に認められて初めてできるもの。動物界でオスが育児に参加する種は、ゴリラくらい。「父親」役のゴリラは、雌や子供の期待に応えるようにふるまう。
    ヒトは二足歩行の上頭が重くなってしまったために未熟な状態で生まれるから、育児にオスが関わることになった。
    親の役割を虚構化し、子育てを共同体ですることにした。

    西洋文明は、シートンのような、動物が環境の影響によって共同体を形成したり、人間と共通の特徴を持つ、といった研究を嫌ったらしい。あくまで、人間は自然から切り離されたものであり、独立したものである。ヨーロッパには、森でさえ隅々まで人の手が入っている。
    一方の日本やアフリカは、手付かずの森がたくさんある。
    日本には、動物がヒトとなり、家族の一員となる昔話がたくさんある。
    霊長類の行動を観察し、ヒトのコミュニティの考察に応用する霊長類学は、今西錦司が提唱し、日本でスタートした。しかし、当初は、「擬人化」といって欧米からは見向きもされなかったらしい。

    人間は、言葉を手にすることにより、感情をも代々伝えることができるようになった。その結果、怨念的な感情も伝えることができるようになってしまった。
    ゴリラも、昔は狂暴な動物とみなされ殺された。
    芥川龍之介の「桃太郎」。鬼にしてみたら、悪いことしてないのに成敗されてしまう。
    個人はみんな優しく、思いやりに満ちているのに、民族や国の間で理解不能な敵対関係が生じるのはなぜか。
    つくり手側から物語を読むのではなく、多様な側面や視点に立って解釈してほしい。

    大学はジャングル!いろんな生物がそれぞれの個体の繁栄のための最適化をし、出たり入ったりする。

  • 君たち(人間)はどう生きるか、のセンスの良さ。
    内容は京大総長による現代社会批評である。気遣い、笑いの共有、広い共同体などはサルにはない人間特異な性質。ネットばかり見て個人の利益だけ考えるのではなく、せっかく人間なのだからもっと他者と関わったら?という話。サルが進化の過程でその能力を身につけなかった理由も、中立的な立場で論じている。どちらがいい、どちらが悪いと断定しないところが優しい。しかしその言い方だと、私はサルでもいいと思ってしまうんだよな。
    ゴリラ愛が随所に溢れていて素敵。

  • ゴリラや類人猿を書いた科学ノンフィクションかと思ったら、文明批評のエッセーであった。

    現代の人間社会より、ゴリラの世界の方が平和だというのはよくわかるが、ゴリラに倣えといったところで世の中は何も変わらないだろう。

  • 山極総長の考えがまとめられた本。
    研究内容が、ゴリラ社会からみた(第三者視点)人間社会であるため納得する部分が多く、面白かった。
    特に、人間特有に進化した部分については大切にしたいと感じた。

    <メモ>
    食事
    サル→分散して、けんかしないように
    人間→分け合い、向かい合い仲良く食べる
    ⇒信頼関係を築くためではないか。個食が増えると、共感能力や連帯能力を低下させる

    白目
    人間が獲得した形質
    目を追い同調し、つよい信頼関係

    父親
    家族だけでなく、隣人にも認められなければならない
    共同体=互酬性

    AI(P.49)
    今のAIは学習から適切な方法を導き出す
    なので、「まずい」レストランはという質問は苦手
    「うまい」場所に収斂してしまう
    今の中高生も苦手だという。
    文章の意味を考えず、言葉を検索し、頭の中で個々の属性だけをつなぎ合わせているのである。

    P.50
    言語は環境を名付け、それを持ち運びせずに他者に伝える効率的なコミュニケーションである。
    見えないものを見せ、現実にはないものを想像させて、人間に因果的な思考や抽象的な概念をもたらした。
    文字は言葉を化石化させて、時間や空間を超えて伝達できる道を肥田木、電子メディアの登場は画像や映像の技術を革新して、人間の視覚と聴覚を拡張した。

    これらの過程を通じ、人間は脳にとどめておいた気沖や知識を外部のデータベースに収納し、」そこにアクセスすればいつでも利用できるシステムを構築したのである。

    時間
    距離は時間の関数だった
    7日も歩いたところなど
    時間はお金で買えるものになっているが、
    信頼で作られたネットワークはお金では買えない
    時間をかけて話をすることで作られる
    →情報化はその逆を行っている

    幸福
    自分の時間を、自分の欲求を最大限満たすために効率よく過ごす。
    →いつまでも満たされない
    幸福は仲間とともにあり、信頼による互酬性に基づく
    信頼には共に生きた時間が必要だ。

    教育
    過剰な情報は想像する力を奪う
    人間の体を使って何ができるのか、どんな発想の展開が可能か、それを知るには人と出会い、実践の場に参加しなければならない

    理性と感情
    理性は人の目によってもはぐくまれる。
    個人主義になると理性がききにくくなる
    道徳とは共同体の中で成り立つもの
    また多様な文化や価値観も道徳を混乱させているだろう

    シートン動物記
    日本人は研究の際シートンのように個体に名前を付けた。
    西洋の昔話では動物は人間になれない
    日本の昔話では動物が人間とともに行動する
    共存の実感を持っている

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著者プロフィール

(やまぎわ じゅいち)
日本の人類学者、霊長類学者にして、ゴリラ研究の第一人者

1952年 東京都生まれ
1975年 京都大学理学部卒業
1977年 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
2002年 京都大学大学院理学研究科教授
2011年 京都大学大学院理学研究科長・理学部長
2014年 京都大学総長 就任

「2019年 『動物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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