ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620325187

作品紹介・あらすじ

既存の枠にとらわれない新しい価値観をどのように生み出していけるのか。
「個」が強調される中、信頼に足る家族・コミュニティーをいかに作り上げることができるのか。
みなの声に耳を傾ける社会を実現するには、どうすればよいのか。

霊長類の目があれば、自ずと答えは見えてくる。

学びの基本、サル真似ができる霊長類は人間だけ?
大量発生中のイクメンはゴリラ型の父親?
「ぼっち飯」ブームは、人間社会がサル化している証拠?
現代日本の民主主義はゴリラのそれ以下?

動物の一種としての人間に立ち返り、これからの共同体・国家のあり方を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • ◯大変面白かった。最近ゴリラがマイブームだったので、何かゴリラの本を読もうと思って手に取ったのだが、ゴリラの本というよりは、著者の魅力が溢れる本という方が正しいような気がする。
    ◯新聞で掲載されていたコラムがまとめられた本であり、ゴリラに関する知識が別段増えるわけではない。著者の世界を見るときの考え方、京都大学総長として、学生を教える側としての考え方が心を打つコラムが多い。その語りに思わずグッときて、自分の生活を改めてみようと思うこともある。なんというか徳が高い。
    ◯タイトルはこれ以外は考えられないが、ゴリラに興味がない、タイトルで買ってみた、それ以外の人にも幅広く読んでほしいと思う。

  •  ゴリラ研究の第一人者にして、京大総長の、毎日新聞に寄せたコラムをまとめた、非常に読みやすい一冊。
     2012年4月から16年3月までの記事をもとにしたものだが、著者の筋の通った考え方に共感する。
     ゴリラ、サルを通じていかに人間が進化してきたかを知れるともに、果たして本当に我々は進化しているのかとも考えさせられる。
     また本書では、大学総長となった著者の大学の運用に関する考え方にも触れることができる。
     ゴリラに心血を注いだ著者だからこそ説得力があるのだろうが、よく日本人は、日本をよく理解してしていないとの指摘もあるが、それは日本という領域のみで考えるからで、一端世界に出てみればその特徴、特異性が容易に理解できるように、人というものも一端離れて別生物から眺めてみるのも、大きな理解の一助となるのだろう。
     

  • ゴリラの国へ留学してきたという著者。ヒト、サル、ゴリラ、霊長類は他にもあるが、一体何が違うのか。ヒトは本当に進化してきたのか。ゴリラにあって、サルやヒトには無いもの。それは進化と共に置き忘れてしまった共生の心なのかしら。コミュニケーション能力や他者を慮る能力に長けているゴリラの国から戻ってきた著者が、これからの人間社会のあるべき姿について、非常にわかりやすい語り口で述べている。ひとつの文章量も読みやすい。

  • 著者の山極さんは、ゴリラ研究の世界的権威であり、京都大学総長でもあります。内容は「毎日新聞」の連載コラムに手を入れたもので、手頃な長さの小文集です。自ら群れの中に入って体験したゴリラの生態を「鏡」に、今の人間の考え方や行動を、それが個人としてのものもあれば、集団としてのものもありますが、省みて、分析・評価し、山極さんなりの示唆を書き連ねています。ゴリラ・チンパンジー・オランウータンといった類人猿は、やはり私たちと同類との感を強くしますね。今の人間は「無くしつつあるもの」が多すぎる気がします。

  • 人間の在り方を、類人猿と触れてきた先生の立場から考える本です。社会人類学的な本かと思ったのですが基本的にはコラムのようで、気楽に楽しく読めました。
    人間という大くくりとゴリラを比べるのはなかなか乱暴ではありますが、ホモサピエンスの社会性と残忍さは一体どこから発生したのだろうと考えるととても興味深い。
    ゴリラの社会性はなかなか面白く、家父長のようなオスゴリラでありながら、女子供の支持が得られないと立ち行かないのがユーモラス。ゴリラは父親も子守をするようでなんとなく昨今のお父さんのようです。
    比べれば比べるほど、人間はその狡さと性格の悪さで発展してきたような気がしてしまいます。ゴリラのように生きるというよりも人間自体は救いが無い生き物なので、根本的に謙虚になるしか無いような気持になりました。
    同胞同士で傷つけあってきた数千年、または数万年。今では地球を覆いつくし国境を作り、一番安価な資源である人間の命を湯水のように浪費してきました。同胞にすらそうなのですから、自然環境なんて二の次三の次、どんどん絶滅に追い込んでいます。少しばかりのヒューマニズムで気まぐれ救済を施しますが、そもそもヒューマニズムってなんですかという所ですよね、ヒューマンは駄目だっていう議論からスタートしているのですから。

    すっかり話は逸れましたが、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンの方が人間より乳離れ遅いって知らなかった。オランウータンは7年位母乳を飲むようです。

  • 少し前の話ですが
    京大の学生寮「吉田寮」のことが
    いっとき話題になっていましたね
    その時に
    「学生諸君も もう少しゴリラらしく対応できれば
     いいのだけれど…」
    というニュアンスのコメントが
    山際寿一総長のお言葉として
    報じられていた記事を読みました
    それも
    どちらかといえば
    ーなんということを
     人間ならぬ
     ゴリラ並みに例えるとは
    という非難めいた調子で
    紹介されていたように覚えています

    むろん
    山際寿一さんの真意は
    気高く賢明で協調を重んじる
    尊敬すべきゴリラ諸君
    としておっしゃっているのですが…

    改めて、思うのは
    地球上で傲慢になってしまった
    我々ニンゲン、
    そしてニホンジン、
    に対しての
    傾聴すべき警告の書になっています

  • 霊長類研究者の山極先生が京都大学の総長時代に執筆された著書。
    ゴリラやチンパンジー、サルなどの生態と人間の生態を比較しながら、現代社会で我々が直面する様々な課題について言及しており、大変興味深い内容でした。
    今更後戻りはできないですが、グローバル化も進んで人間社会の規模が大きくなりすぎて生きづらくなっているんだろうなとゴリラの群れの話などを読んでいて感じました。
    「道徳は自分が属したい共同体があってこそ成り立つ。それがなければ、道徳は心に宿らないのである。道徳の低下は、現代の日本人が急速に孤独になったことを示している。」と書かれており印象に残りましたが、小中学校で「特別の教科」として位置づけられるようになった道徳の授業では現在どんなことを教えられているのか気になりました。

  • 霊長類学者である著者からの提言ともいえる1冊。書いた当時は京都大学の総長でもあったようだ。
    人間とゴリラを対比させ、人間のよいところは継承し、ゴリラのよいところは取り入れ、これからの社会をよりよくしたいという思いがよくわかる。
    特に、争いを避けるゴリラを例に出し、平和への思いを強く伝えている。

  •  ゴリラ目線で人間を見ることで、人間がわかることは多くある

  • あまり中身を見ずに手に取ったので、ゴリラが物申す!のような内容なのかと考えていたが、「変なゴリラ」と化したことのある京大総長、山極先生が霊長類視点から現代の人間社会を見つめて、生物としての人間はどういったものなのか、何の影響で現代社会はこうなってしまったのか、今の社会はこうしていかないと…と問題を提示していく。
    元々がコラムだったこともあって、どちらかといえば社会学メインという印象。でも合間で急に入る霊長類やサル、ゴリラの話が飽きさせず、何が問題なのかを理解しやすくしてくれている。

    あとゴリラ愛がすごい。

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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