虫とゴリラ

  • 毎日新聞出版
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感想 : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620325804

作品紹介・あらすじ

〈虫とゴリラ〉の目で、人間の世界をとらえ直す! 
情報化社会の中で、コンピューターに支配されつつある現代日本人に贈る〈日本の2大知性〉によるビッグ対談!

感想・レビュー・書評

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  • 「虫(養老)とゴリラ(山極)」は分かりますが、このタイトルはチョットねって思いました。

    人間の社会はこれでいいの?虫とゴリラの視点で人間のおごりに物申す。という内容の本です。
    今まで山極寿一先生の著作は未読なので、養老先生との対談形式なら山極先生の知識や思想を知るのに良いかと思い読んでみました。

    芸がないと感じた「虫とゴリラ」というタイトルですが、山極先生が「と」について語る場面がありました。
    西洋の「a」and「b」は、 「a」か「a」ではない「b」であるが、日本の「a」と「b」は、その2つが同じ価値観を持って相互を了解し合える関係になるのだと。
    この発言があったから、『虫「と」ゴリラ』というタイトルにしたのだと勝手に決めつけました。

    このお二人の価値観はおそらく似ていて、対話を読んでいてもすべてを言わずとも分かり合えている感じがします。
    もう少しやさしく(知識レベルと価値観が違う)読者にもわかるように説明して欲しい箇所もちょくちょくありました。
    見方を変えると、この両者はお互いに新しい発見は見出しにくい間柄なのかも知れません。

    お二人が広範で深い知識を得た背景には、身体を使った豊富な体験が基盤にあることが良く分かります。
    情報の蓄積が進んだ現在、虫や植物は図鑑やインターネットで調べればすぐに見ることができます。
    それではダメで、「虫捕り」や「植物採集」ができる場所に行かないと本当の自然を理解することはできないと力説しています。
    自然の中では、嗅覚や触覚や聴覚など持ちうる全ての感覚を駆使しているのでインプットの質と量が違ってくるのは当然ですね。

    ところが、人間は自然を壊し過ぎたと嘆いています。
    技術が進歩し、できなかったことが「できるようになる」と人間はどんどん「やっちゃう」。
    野山を切り崩し、ビルや道路などを作りすぎた。
    その結果、昔はめったに出遭うことのなかったサル、シカ、イノシシが近年人前に現れるようになった。タヌキやクマも。

    自然現象に法則性を求める試みが行われているが所詮無理であり、自然を情報化すること自体がそもそも間違いだと養老先生は言います。
    「ここにある虫が飛んできた。何が起きますか?」って、わからない。
    確かに、いくら科学が進歩しても宇宙や地球や自然については分らないことだらけです。
    例えば、一本の木があって、枝がどのように伸びて、葉がどのように茂るかということすら永遠に分かりそうにありません。

    本対談の後半部では、虫やゴリラから離れて人間の愚かさを憂いています。

    未来の社会にとって大切なことは、安心を保証することですが、現在はそれが大きく崩れています。
    技術の進歩は安全を作ることができますが、その安全を安心にできるのは人です。
    ところが、現代は人への信頼が揺らいでいます。

    本来信頼を作るためのコミュニケーションが信頼を壊す作用を持つようになってきたからです。
    政治でもビジネスでもフェイクが流行り、信頼が破壊されています。
    人を判断する時は、結局言うことじゃなくて、やっていることで判断することになります。
    言ったことはやらないで、反省するそぶりもない人を信頼し将来を託すことはできないですから。

    安心に対する保証が感じにくいのは、自然への信頼が揺らいでいるせいでもあろうというのは本書らしい意見ですね。
    自然とも感動を分かち合う生き方を求めていけば、崩壊の危機にある地球を救うことができるというのも同感です。

  • 一般教養として読むのももちろん楽しい1冊ではあるが、「教育」の視点から読み進めると、ハッと気付かされることがほんと多いなと痛感。
    今の教育がいかに自然の摂理に反してるか、養老さんと山極さんは的確かつ痛快に断じてくれているので、私にとっては清々しい気持ちにさせてくれる内容だった。
    やはり、経済界に動かされている今の日本の教育は不健全なんだなという確信を、またひとつ得ることができた。

  • 虫の専門家とゴリラの専門家の対談本。いかに人が自然を差し置いて自分勝手なモノの見方をしているかを考えさせられた。専門的な話を軸に、身近なテーマを幅広く扱っているため、とても読みやすく読み応えもある一冊であった。

  • 人間を外から(自然側から)見てきたお二人が、現在の人間社会に対する危機感を話し合う。

    なんでも情報化、均一化、工業化することによって、こぼれ落ちるなにかがあると。うまく言語化はできないが、人間に必要なものがそこにはあると。

    情報に溢れる中、情報化された部分だけを鵜呑みにするのではなく、情報化されきれていない部分まで物事を見てみるよう意識して見たい。

    少し抽象的で理解しにくいところがあった。
    お二人とも知識経験豊富なため、行間で語り合っている部分が多々あったのかもしれない。

  • Amazonセールで安くなっていたという理由だけで購入したが、ここ最近で1番面白かった。

    人は物事に意味を見いだしたがるが、自然界から見ると意味がなんて存在しないことも多々ある。
    無理に意味を見出そうとするから自分の都合の良いように解釈して作り替えようとする。

    私自身、何かしらの意味を持って行動すべきと常に考えている中で、この考えは新鮮だった。

  •  新聞書評や書籍広告で面白そうな本があれば、切抜いてコルクボードに貼付けている。その後、縁があったり機を見たりで入手したら、コルクボードから外した書評の切抜きを本に挟んでシオリの代わりにして読んでいく。
     『虫とゴリラ』も書評の切抜きをコルクボードに貼付けていたもので、市立図書館で借り受けた一冊だ。解剖学者で昆虫に造詣の深い養老先生と、ゴリラ研究者で京都大学総長の山極先生の対談だ。自然科学を研究してこられた2人の先生には、現代社会の進化が自然界の普遍性から大きく逸脱していると見えているようだ。
     対談の内容は、山極先生の書かれたあとがきに上手くまとめられている。あとがきだけでも十分感じ入る内容だが、全編、なるほどとうなづきながら、面白く読めました。

  • 動物としての人間、日本人を考えたときに、当たり前だけど現代社会はとても不自然で、その不自然が歪みを生んでいるのは、誰しも感じるところはあると思う。そして、そんなときに自然の中にいる動物や虫たちのような生き物、或いは田舎の生活などから学ぶことがたくさんあるのだなあ、と思わされる対談。学んだからといって、すぐに変えられるわけではないのだけど、それでも不自然さに気がつくだけでも価値があるのではないか。

  • 独特の感性に基づいた2人の学者の対談であり、いろいろなキーワードを拾い上げることができる。

    言葉の「同じ」という機能、
    一体化、共感、共鳴、
    職場の机の石、
    歯車、一次中枢神経とピアノ
    モノを媒介にして変わった明治維新と戦後
    人間のつくるシステムには「界面」がない
    こぼれ落ちた現象、感性

    今後、どのような世界を作っていきたいのか、日本をどうしていきたいのか、考える上で重要な観点となるのではないか。

  • 2021/02読了。山極先生と養老孟司先生の対談。虫とゴリラというタイトル通り、昆虫やゴリラ、自然と現代社会をはじめ、情報化社会、五感など縦横な議論を展開。

  • お二人とも大学で教育に携わっていらっしゃったフィールドワーカーなので、やっぱり、教育に関する言葉がズシズシ響く。
    以外、一部引用。

    --心地よいものばかり求めていったら、ダメになると思います。……AIが分析したら、心地のいいものばかりつくる可能性がありますよね。(山極先生)
    --今のような環境に子どもを放り込んじゃうと……ようするにもう、「受け付けない人」ができちゃう。(養老先生)
    --学校って、何かを教わる場所だと、皆さん思っていませんかね。学習というのはようするに「自習」なんですよ。……自分が学ぶ以外に、学びはないんです。(養老先生)
    --学習というのは「自習」と「対話」だと思います。(山極先生)

    人間教育の鍵は、幼児期と思春期にある、とのこと。もっと早く読んどけばよかった……

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著者プロフィール

1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。幼少時代から親しむ昆虫採集と解剖学者としての視点から、自然環境から文明批評まで幅広く論じる。東大医学部教授時代に発表した『ヒトの見方-形態学の目から』(筑摩書房)で89年、サントリー学芸賞。2003年刊行の『バカの壁』(新潮新書)は450万部を超える大ベストセラーとなった。

「2021年 『まる ありがとう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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