誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃

  • 毎日新聞出版
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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620326078

作品紹介・あらすじ

イノベーション不足、研究力の低下……「科学技術立国ニッポン」はなぜ幻と消えたのか? 国力低下の真因を探る渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 毎日新聞の連載記事が元となった一冊。取材が基本なので多くの関係者の主張が紹介されるに留まるが、この20年の日本の科学界の歩んできた衰退の経緯を振り返るのにはとても便利。いわゆるPDCAのCの部分だけど、日本には基本的にこのCは無くてPDのみのドードー巡りが続いているのかもしれない。官僚の無謬性の原則というやつかもしれない。犯人捜し、責任追及をしても仕方ない(本書では何となく犯人が特定されている)が、この20年の敗戦への道を精査して、どうしてこうなったかを理解することは大事だろう。
    この本を読んで、「(官邸)トップダウンによるスピーディーな意思決定、効率化」って、要は、社会主義体制、共産党独裁的に近づけていこうってことだなって感じた。いくら優秀なトップによって目の前の短期的な問題の解決が達成されても、長期に渡れば権力が腐っていくのは歴史の教えるところ。上の目ばかり気にして、やがて誰も何も考えなくなってしまう。
    1995年の科学技術基本法のスタートから、その後の科学技術政策は全て、経済発展のための科学・技術という発想だったようである。科学者・研究者がしだいに意思決定から排除されていき、今やすっかり経済・産業政策に成り下がってしまった。内閣府に集められた”有識者”の年配の方々らが、現場も知らずに自分らの経験で教育”改革”を主導してかき回しているのは、昨今の大学入試改革の混乱でも周知の通り。
    また、国立大学法人化と基盤経費削減は、時期が一緒なのでセットのように見えるが、セットとして始まったわけではなかったようだ(「遠山プラン」での法人化では基盤経費は確保することが付議されていた)。法人化の前から、国の財政難から国立大の基盤経費の削減は議論されていて、法人化によって寄付やらその他の事業による収入源を得る自由を確保するためにも、終盤で国立大自身から手に平を返して法人化を推進した面もあるようだ。

  • 現代において「科学技術立国 日本」という姿を真と捉えているものは多くないだろう。基礎科学を中心としたノーベル賞の受賞は、その姿が是であったかつての残滓として、もう数年は続くのかもしれないが、その先どうなるかは分からない。

    本書は科学技術立国がどのように幻想の産物となり果てていったのかをアカデミアや製造業・情報通信などの民間企業のトップや研究者たちへのインタビュー、中国をはじめとする海外の科学技術に対する注力具合やその投資の実態などに基づいてまとめられたノンフィクションであり、幻想の崩壊を実感できる優れた一冊。

    これを読むと、崩壊しつつある日本の科学技術をどう立て直すかは、文科省に代表されるアカデミアや、経産省に代表される民間企業など、各組織が個別に取り組むだけでは解決不可能であり、国家レベルで取り組むべく重要な政策的イシューであるということを痛感する。

  • 東2法経図・6F開架:409A/Ma31d//K

  • 大学で理系学部を専攻していたため、今の日本の科学力の低下は憂いている。本書ではこれまでの政策や関係者のインタビューから、日本の科学力の凋落を分析している。
    特に基礎研究をおざなりにし、出口のある研究に注力する今の姿勢では、今後さらなる科学技術の発展が見込めないため、タネを撒くように、基礎研究にも力を入れてほしいと思う。

  • 誰って、決まってるだろ。「東大法学部卒」の連中だよ(=科学のリテラシーのない官僚ってこと)

  • 日本の科学者、技術者は恵まれてない、って話。資源のない日本は技術で食っていかないといけないのに、それを育てる制度、予算、社会風土が全然ない。尊敬もない。

    ある研究者がつぶやいたという。
    「もし将来、子供ができたとしても、研究者になることは勧めないな」
    これは心に刺さった。

    いつの間にか日本に先進的な研究はほとんど見当たらず、中国が毎年のようにノーベル賞を取るようになってから気づいたのではもう遅いんだ。今すぐ変えないと!

  • 「Japan as No.1」と賞され、科学技術立国と呼ばれ、米国らの基礎研究にフリーライドと揶揄されながらも実用技術で世界市場を席巻した日本もいまや四半世紀以上前の話。論文数ではトップグループの後塵を拝し、実用化では他国に抜かれる一方である。こうした背景として他国躍進のほか、国家戦略の失策、大学改革を本書は指摘する。毎日新聞社編のため綿密な調査と鋭い洞察が光り、偏りのない多方面に渡るキーマンへのインタビューが内容に厚みを与えている。

    本書は良書だが、但し額面通りに受け取るには注意が必要だ。「昔はよかった」的な論調になっているが、そもそも昔の日本が科学技術関係者にとってハッピーだったのか。潤沢でない科学予算、国家主導のミスリード。そうしたなかでソニーやホンダなどのイノベーティブな民間企業、NECや日立などの重鎮民間企業の基礎研究が花開き、日本礼賛の時代を謳歌できたのである。また中国やシンガポールといった国家戦略として集中投下して一気に先進へ躍り出る国や米国シリコンバレーのような文化や土壌が整っている国と対比して日本を悲観しているが、他国の科学技術も褒められたものではない。不安を煽り現状を憂うだけではなく、世界のなかでの日本という国の科学技術をもう少し中立かつ客観的に論じる必要があるだろう。ということで1点マイナスにした。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/523046

  •  藤村修三・東京工業大教授(イノベーション論)は「たとえば量子コンピューターのように純粋な基礎研究は産業構造すら変える可能性を秘めているが、日本企業の研究はその逆を行なっており、どんどん出口(商品化)に近くなっている」と指摘する。(p.47)

     新たな知見を求める基礎研究と、安全かつ均一な細胞を大量培養し、品質を厳しく管理するストック事業とでは、細胞培養の施設基準や運営の仕方、人材に求められる資質が大きく異なる。このことから、研究・教育を主とした大学の研究所で両方を行うよりは、前述したような「民間企業ではあり得ないミス」は防げるかもしれない。しかし、iPS細胞は化合物で作る薬と異なり、細胞提供者の1人ひとりによって品質にばらつきがあるなど未解明の部分も多く、再生医療の関係者からは「製品として売り出すような備蓄には時期尚早」という声も根深い。大学から切り離したとしても、この課題は残ったままで、ストック事業がうまく回る保証はないのが現状だ。(p.99)

     運営交付金は基礎体力をつけるための、いわば「ご飯」だ。法人化直後から、必要な経費を(国立大への)不信感ゆえに削ってしまったのは大きな問題だ。ゆとりのないギシギシした中で「いい研究しなさい、実用的なことをしなさい」と言っても、もう体力がない。何でも「これは余分だろう」とカットしていったらダメだ。研究にはある程度、余裕も認めないといけない。効率、成果を求めるのでは、将来のともしびを消してしまうと思う。(p.180)

     気候変動対策を否定し、国際協調を軽んじるトランプ政権を生んだ現在の米国の風潮とは対照的な考え方にも見えるが、久能氏は「新しい価値観と伝統的な男性社会の価値観とがせめぎ合っているのが今の米国。どちらが残るか分からないが、米国は日本が思っているより柔軟な社会。20年、30年かけて世の中が変わっていくと期待している人は多い」と分析する。(pp.242-243)

  • 国立大学改革は政策の失敗だったことを認めよう。

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著者プロフィール

毎日新聞「幻の科学立国」取材班
毎日新聞科学環境部に在籍した記者による特別取材班。西川拓(デスク)、須田桃子(キャップ)、阿部周一、酒造唯、伊藤奈々恵、斎藤有香、荒木涼子が取材、執筆を担当した。

「2019年 『誰が科学を殺すのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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