ぜんぶ本の話

  • 毎日新聞出版
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感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620326344

作品紹介・あらすじ

ケストナー、ル・グィン、ヴォネガット、福永武彦… … 世界は素敵な本で溢れてる!
小説家の父と声優の娘が読む喜びを伝える対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 読書は競わない。読んだ本の数だとかスピードだとかはどうでもいい。面白い本を読んだら、話し合いたいし、薦めたい。年齢も関係ない。同じ本でもそれぞれで読み方が違う。そして本読みはいつも本に飢えている。  だから寄ると触ると「何か面白い本読んだ?」「これ良かったよ」と薦めあう。今ではお互いの専門ジャンルも違うので、相手がアンテナを張っていないであろう、でも絶対に好きだと思う本を見つけると、やった!と得意になる。とても平和的で建設的。

    と、池澤春菜は「まえがき」で書いている。
    この時娘は45歳。えっ!?いつの間に‥‥。私は30代のエッセイストだと思っていた。彼女の半生語りを聴き、なおかつ調べると、声優から始まって、歌手、女優、エッセイ、SF書評(え?日本SF作家クラブ会長なの?)、最近は匿名でアニメ脚本まで書いているとな。本書では、翻訳もやりたいし、小説も書きたいと宣言している!知らなかった。かなり活躍している。よその家の子どもの成長は速い。

    池澤夏樹は、娘と「すべて本の話」をテーマに児童文学、少年文学、SF、サスペンス、チョロリと時代小説などを縦横に語る。聴いていると、娘の守備範囲にかなり寄り添っている。放任主義で育てたらしいけど、溺愛しているのが丸わかりだ。流石に俎上にあげた本は200冊弱「しか」ないけど、池澤夏樹もほぼ読んでいる。そして、池澤春菜じゃないけど、付箋紙貼りまくり、参考になる本は以下の通り。

    ⚫︎ 『ムーミン谷の彗星』『ムーミンパパ海へいく』は、案外狂気の世界。
    ⚫︎ ヴェルヌの小説にはどれもひねりがある。たとえば『八十日間世界一周』(以下は省略)
    ⚫︎ 『星の王子さま』でよく問題になるのが、キツネを「飼いならす」という箇所だよね。 Apprivoiserという動詞について。(以下は省略)
    ⚫︎金原水端訳、宮崎駿絵の『水深五尋』(ロバート・ウェストール、岩波書店)。
    ⚫︎ 『モービー・ディック・イン・ピクチャーズ』(スイッチパブリッシング刊行)という本、知ってる?  『白鯨』を各ページごとに文章を一部抜き出して、残りをイラストで埋める、それを全ページでやった大作でね。翻訳は柴田元幸。←これはついポチッてしまった。もうすぐ届く。
    ⚫︎「テセウスの船問題」からSFの中の「魂」問題を扱った本に、トマス・ピンチョンの「V」、「歌う船」、カレル・チャペックの『 R. U. R』、『ブレードランナー』などに話が及んでゆく。
    ⚫︎ クリスティについて今でもよく議論されるのは、『アクロイド殺し』はフェアか否かという話だよね。(以下は省略)
    等々‥‥とっても楽しい!

    でも、さらっと読書の真髄も語っている。
    ⚫︎ 読書って自分自身は本に向かって開かれているんだから自閉ではないんだよ。(略)本を読みふける子どもを、親は信じていい。本とのつきあいはこちらの主体がいる。そこがゲームとは違う。

    さらにいえば、池澤夏樹も池澤春菜も、本書で初めて「自分語り」をしている。
    特に、私は池澤夏樹と福永武彦とのちょっと複雑な親子の歴史を初めて知った。池澤夏樹は『塩の道』という詩集以外は、福永の存命中には何も書かなかったらしい。夏樹はいう。「作家としての自分は、好きなものをほぼ好きなように書いてきた。福永武彦から直積的な影響は受けていない。でも作家が一人身近にいたことで、そういう人種がどんなふうに暮らすのか、書く前から想像はついていた。そういう意味での影響はあったと思う」距離を置きながらかなり意識している。
    娘の春菜も父の夏樹を「あとがき」で冷静に分析していた。
    「池澤夏樹の魅力は世界との距離感だ。中ではない、外でもない。中と外の境、境界、波打ち際。端っこから世界を見ている。中にいては見えないものを見ようとする。それはたぶん、灯台守とか、船の不寝番のような、ひとりだけの孤独な場所だ。だけど、中にいては見えない美しいもの、離れすぎては気づけない愛しいものを見ることができる場所でもある。」

    池澤一族3代のかなりレアな話もある、思った以上にお得な一冊だった。

    2022年6月5日読了







  • お父様が最高の本読み仲間であるという池澤春菜さん。
    羨ましいです。
    私の父も本が大変好きでしたが、もうこの世にいないので、話ができません。(50代で早逝しました)
    私事で恐縮ですが、高校のときビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』をどちらが早く全巻読めるか、競争したことを思い出しました。父は完読したけれど、私は遂に完読できずじまいでした。

    そして、皆さんご存知かと思いますが、春奈さんのおじい様は福永武彦さんです。
    でも、春奈さんは、読むこと、書くことは血でなくて、環境だとおっしゃっています。
    私は目下、SFが読んでみたいけど、何を読んだらわからないジャンルなので、春奈さんの「SFはパパの書庫があった」というのも羨ましいと思いました。

    この本で一番読みごたえがあったと思うのは、児童文学の章です。
    『星の王子様』の基本にある世界観は農業というのは初めて知ったし、『ムーミン』のアニメは楽しいけれど原作はかなり鬱々とした暗い話だというのも知りませんでした。
    少年小説はイギリスだという結論も興味深かったです。

    SFの章では、日本はSF・ファンタジーに関して、翻訳大国であるということ。
    これはやっぱり読まないと損なジャンルかもしれないと思い、挙げられた書名をメモしましたが、お薦めの、『サンリオSF文庫総解説』を買うのもいいかも(私には少し高度な気もしますが)しれません。

    春奈さんの書評やエッセイは拝読したことがありますが、脚本家でもあられたことは、マルチな方だと驚きました。小説を書きたいとも思っていらっしゃるそうです。

    そして、私は池澤夏樹さんの評論は拝読したことがあるのですが、小説は『スティル・ライフ』を積読していますが、なんとまだ1冊も読んでいないことに気づきました。
    春奈さんお薦めの『マシアス・ギリの失脚』と小説ではないけれど、『いつだって読むのは目の前の一冊なのだ』は前から読みたかったのですが、読んでいないので是非、読まないとと思いました。

    • nejidonさん
      まことさん、こんにちは(^^♪
      この本、なかなかの人気みたいですね。
      池澤さんはさほどファンではないのですが、レビュー中の「児童文学」か...
      まことさん、こんにちは(^^♪
      この本、なかなかの人気みたいですね。
      池澤さんはさほどファンではないのですが、レビュー中の「児童文学」からの流れにとても同意しています。
      「星の王子様」も「ムーミン」もまさにその通り。
      日本人が可愛いキャラとして定着させただけで、ムーミンは結構辛辣で意地悪なお話が多いです。スナフキンなんて嫌な奴ですよ・笑
      児童文学のみでなく、昔話・民話の世界でもイギリスはその宝庫ですし。
      (本来はイギリスという括りでは大雑把すぎてよろしくないのですが)
      出来れば移住して生涯読み続けたいと思ったほどですよ。
      豊かな話が生まれる土壌というものを研究できたら面白いでしょうね。
      それらを紹介しているというだけで、この本は良い本だなと思った私も変ですね。
      楽しいレビューでした!
      2020/07/27
    • まことさん
      nejidonさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます(*^^*)
      この本は、私もブクログランキングに載る前から読みたくて、...
      nejidonさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます(*^^*)
      この本は、私もブクログランキングに載る前から読みたくて、図書館に予約1番目で、やっと昨日届いて、取りにいった本です。
      レビューをお褒めいただきありがとうございます。

      確かに、この本の児童文学の章は読みごたえがありました。(本来、春奈さんといえばSFというイメージでしたが)
      ムーミンのスナフキンって人気のキャラクターですよね。
      この本の児童文学の章を読んだあと、私も「児童文学も、こういう風に、研究された話を支えに読んだら面白そうだなあ」と凄く思いました。(何も支えがないと私の場合、ただの子ども向けの話としかわからないと思うので)
      また、何か、面白くて読みやすい、児童文学の研究書なども、御存知でしたら、nejidonさんにも取り上げていただきたいです。
      2020/07/27
  • 池澤夏樹・春菜の父娘が本と読書について語った対談を文章化したもの。児童文学・SF・ミステリーなど、いままで読んできた本が多数紹介させている。そのほとんどが海外作品だったため、始めは読み進むのがシンドかったが、第六章『謎解きはいかが?(ミステリー)』以降で、知っている作品が出て来てからは、スイスイ読み進むことができた。なので、☆3です。

  • とてもディープな読書対談でした。かっちりと手応えのあるものをたくさん読んできたお二人の姿がくっきりと見えてきます。親子ですけれど、すごく対等な、ちょっとドライな仲の良さも、嫌味がなくて好感が持てます。一箇所だけ、他の方に対して「あれ?ちょっと上から目線??」と、どきっとした箇所があり、読んだ私の感じ方が過敏だったかなと思うので、もう一度時間を置いて読み直すつもりです。こちらがある程度の読書量がないと楽しめない本なので、知らないことが出てきても、ふむふむと気軽に読んで、こちらの読書量を底上げしましょう。

  • 眼の毒(読)だ~

    ぜんぶ本の話 | 毎日新聞出版
    http://mainichibooks.com/books/essay/post-726.html

  • 父と娘の本に関する対談。
    羨ましい。

    私も、読んだ本について思う存分語り、読んでない本について存分に語られているつもりで、つまり第3の話者のつもりで読みました。
    もう本を読みながら心の中で語る、語る。

    だって児童文学、少年文学、SF、ミステリ、好きなジャンルの本ばかりなんですもの。
    比較的少年文学は読んでいないけれど。

    私はイギリスの文化(小説、音楽、映画)が好きなのですが、児童文学というのは圧倒的にイギリスが多いのだそうです。
    なるほど、子どもの頃イギリスの児童文学を読みふけった結果、すり込まれたんやな。

    物心ついた時から周りには本が当たり前にある環境で育った娘は、留学していた時、段ボール箱1箱分の本を持って行った。
    それっぽっちの本、すぐに読み終わってしまう。
    そうしたら、そのあと読む者もなく、どうしたらいいのだろうと恐怖だったと。
    (実際には体調不良で途中で帰国したようですが)
    私は、家に本がふんだんにはなかったので、何度も何度も同じ本を読んで育ちましたから、多分一通り読み終わったら最初から読みなおすね。
    何の恐怖もなく。

    最強の読書人親子だと思いますが、実は彼らは翻訳物の児童小説で育ったので、日本の者をあまり読んでいない。
    それは私もわかる気がする。
    昔風の言い回しが今も残る近代の日本文学より、今の言葉で訳してくれている翻訳物の方が断然読みやすかったし、遠い世界の風物を想像する楽しみもあったり、何より日本の小説は(児童文学も)辛気臭くて説教臭くて貧乏ったらしいものが多かったので。

    でも、池澤夏樹は「何が面白いの?」と切って捨てた『次郎物語』は、私すごく面白く読めたんだよねえ。
    それに出て来る無計画の計画は、今も私の行動指針だ。
    だから感想なんてものは人それぞれなんだよね。

    読みながら心の中で大いに語っていたので、多分私の血液はふつふつと煮えたぎっていたと思います。
    そのくらいエキサイティングな読書でした。
    ああ、楽しかった。
    でも本当はリアルでこういう話をしたいんだよねえ。
    だれか誘ってくれないかなあ。←自分からは出て行けない小心者

  • 父親と娘が、こんなふうに共に読んだ本のことを話し合うなんて、素敵だなぁ、と思う。しかも、こんなにも心ゆくまで・・・。
    春菜さんが子供の頃、本にのめり込んでも、お父さんは見守っていた。「本を読むことは自閉ではない、自開なんだよ。だから心配ない」という池澤さんが素敵。

    SFやミステリはあまり読まないのでさらっと読み、児童文学のこと、池澤さんの家族のことについてをしっかり読んだ。春菜さんが忘れられない、大好き、という物語でも、父はそうとは限らない。「出会うのに遅すぎたのかも」という。児童文学には、ふさわしい出会いの時期があるのだ。
    夏樹さんは、父のいるうちは小説を書こうとしなかったこと。母は本を読む人の邪魔をしてはいけないという人だったから、母親が本を読み始めたら今日は夕食のおかずに僕がコロッケを買いに行くんだな、と思ったこと。春菜さんが父の言葉に耳を傾けて真剣に聞いている様子が伝わってくる。
    藤沢周平さんの娘さんのエッセイも、お父さんについての素晴らしい本だったけど、これもまた父と娘の本として心に残った。

  • 本をたくさん読む人たちは、もちろんどんな才能があっても、本が好きという立場ではわたしたちと同じところに立ってくれる。読書というのは贅沢な趣味だな!!池澤夏樹さんの読書エッセイも絶対好きだと思うから読みたいし、こういう人たちのセレクトショップには信頼が置けるので、河出の全集も少しずつ揃えられたらなと思いました。

  • 書評集付録で対談を読んだことがあったけど、本作は純粋に親子二人の対談本。自分もその場に居合わせて、一緒に読書論を交わし合ったような気分を体験できる。内容がちんぷんかんぷんだとそうはいかないけど、本書はちょうど良い感じ。本好き同士の話は面白い。そして、父・夏樹氏の発言から引いたこのフレーズに、自分の感想は集約される。

  • 読書案内。親子の読書談義。
    SFがテーマの章を中心に、興味があるところを拾い読み。
    積読状態だったスー・バーク『セミオーシス』の内容を盛大にネタバレされて爆笑。
    アン・マキャフリー『歌う船』シリーズの紹介がとても良かった。
    他の章で気になったのは〈ムーミン〉のシリーズ。
    有名な『カササギ殺人事件』もそろそろ読みたいところ。
    好きな作家であるロアルド・ダールやアーナルデュル・インドリダソンの話題も少しながら出てきて嬉しい。

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著者プロフィール

1945年北海道生まれ。作家、詩人。著書に『スティル・ライフ』(芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』『静かな大地』など。訳書に『カヴァフィス全詩』など。

「2022年 『ポータブル・フォークナー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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