歴史の本棚

  • 毎日新聞出版 (2022年8月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784620327495

感想・レビュー・書評

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  • ◆昭和史の名著 意義明らかに[評]平山周吉(雑文家)
    <書評>『歴史の本棚』加藤陽子 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/205772

    『歴史の本棚』(毎日新聞出版) - 著者:加藤 陽子 - 加藤 陽子による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    https://allreviews.jp/review/5961

    歴史の本棚 | 毎日新聞出版
    https://mainichibooks.com/books/social/post-580.html

  • 日本近現代史が専門の歴史学者加藤陽子氏による書評集で、テーマは「未来のために過去はある」、つまり歴史に学ぶっていうことなんだけど、わたしにはかなり難しかった。挙げられている本も専門的な本が多いし、評している文章の言葉も堅く難しく感じて、集中して読まないとよく理解できないような。わたしは歴史苦手なので基本的なことがわかっていないっていうことも大ありなんだけども。それでも、(挙げられている本は読めないとしても)書評をなんとか読むだけでも勉強になり、知識が若干増える気はしたので、ためになったと思う、思いたい。

    そんななかでも、著者にとっては楽しみとして読む本と思われる、あるいは新聞の書評欄に掲載された一般人向け?の本かもと思われる本をメモ。例えば坂本泉「インビジブル」は読んでみたい。この坂本泉氏って存じ上げなかったんだけど、ネットで検索するうちこの方が選ぶおすすめ戦後史の小説というページにいきあたり、そこからまた読んだことのない作家を知り、読みたい本が増えた!!「昭和史」的な小説ってたくさんあるじゃん、と。あと、脚本家井上ひさしが東京裁判三部作という芝居を書いているとか初めて認識したし、著者が角幡唯介は全部読んでいるとか、いろいろこれからの読書の参考になりそう。

  • 加藤氏の専門は1930年代の日本の軍事と外交。歴史を学んできた氏が「推す」本がこちらです、というコンセプトでまとめられた本、だという。

    主に毎日新聞の「今週の本棚」の書評集と、今は無き月刊誌「論座」(朝日新聞社)に「新・文庫主義」として連載されたもの、本の解説として執筆したやや長めのもの、の3種類からなる。2007年から2022年までのもの。
     
    取り上げる本も文も難しい・・・ その中でやっと
    〇「戦線」林芙美子著 中公文庫 (論座・新文庫主義2007.11月)がやっと読めるレベルだった。

    林芙美子の戦線への派遣での文。中公文庫になっていた。
    芙美子の伝記で文学者たちの従軍での一人突出した行動をあれこれ読んだあとなので興味深い。しっかり文は書いていたということだ。

    「戦線」(朝日新聞社 1938.12)に「新女苑」(1940.4月号に掲載されたルポの一変「凍れる大地」を加えたもの。
    林芙美子は歩く。「腐ってちぎれてしまいそうに」なる足音。「豆の出来た足の裏に、まるでバターでも塗るように、メンソレータムをべたべたに塗りつけて靴を」はく。
    ・・初期の詩のような表現!

     芙美子は食べ物を夢想し、かつ食べる。「酸味でじゅくじゅくしたにつばのためるような梅干しを一ツたべてみたい」。鶏を調理し「鶏の汁を飯盆で掬って唇もとへ持っていきますと、金色に光ったこまかい脂肪の玉が、びっしりつゆの上に浮いて」いる。・・小泉武夫博士の描写の向こうをはる、美味しさ溢れる描写力だ。とある。
     食レポの直後に亡くなった芙美子。これは、芙美子の食レポの文を読んでみたくなった。

    そして「私は」という、主語を明示した発語で始まる文が異様に多いとある。

    支那事変なんて、遠慮深いちっぽけな言葉で、今度の戦いを謙遜しなくてもいいと思いますが(中略)「戦争」でいいではありませんか。

    事変を戦争といった芙美子は、戦争を批判的に生きた確かな一人にちがいない、とある。

    〇わが青春無頼帳 柴田錬三郎著 中公文庫 2007.9
    柴田は大正6年3月26日生まれ。なんと、再招集先が「各連隊のゴクツブシを集めたといわれる広島宇品の暁部隊」だったとある! 柴田氏はここで南方行きの船に乗り、バシー海峡で撃沈され、沈没する船から上官とともに海に飛び込み救助された、というのだ。

    2022.8.20第1刷 2022.9.10第2刷 図書館

  • 専門書についての新聞書評が、やたらハードル高く感じてしまうのは、やっぱ自分の知識量不足のせいなんだよな…と改めて感じさせられる本作。”それでも日本人は~”で、分かりやすく噛み砕かれた論評にやられたクチなんだけど、あれはあくまで、高校生相手だったってのもある訳で。その流れで、入門書的な本の紹介を期待していたんだけど、なかなかそうはいきませんわな。自分が読んで興奮した書を勧めるとなると、それが専門分野となるとなおさら、見える景色が全然違うもんだな、と。でも、自分の無学を思い知らされる読書体験も必要かな、と。って、そればっかな気もするけど。

  • 歴史とは単なる暗記科目でもロマンでもない、という見方を教えてくれたのは、同作者の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』だったが、それをふまえた上で、やはり歴史学を味わうには膨大な知識が必要なのだと本書で痛感した。
    著者の知識量に脱帽する。

  • 東大教授加藤陽子氏による、歴史の重みを感じさせる本の珠玉の書評集。

  • 歴史学者による書評集。

    毎日新聞の「今週の本棚」欄に掲載されたもの、月刊誌『論座』(朝日新聞社)に「新・文庫主義」として連載されたもの、本の解説として執筆されたやや長めの文など、3種から構成されている。(p.4)

  • 歴史に関心無くても「エッそうだったんだ」と驚きと気づきある、お得本。歴史から炙り出される、この国の現状と世界情勢。歴史を未来を創り出す力にしなければならないが、繰り返されるばかり。ウクライナ侵攻と国際社会の支援も素直に見られなくなる。供物?なんだろうな…結局。「公共的記憶すら持てない日本」「民力含めた広義の国防」「人間の常識に敬意を払いつつ世間の常識を批判する」とても紹介された本まで届きそうにない…無念。

  • 近現代史を語る上で非常に参考になる書籍を加藤陽子が評する本で、この分野に興味を持つ人々にとっては大変に危険な本だということもできるだろう。というのは次から次に読まなくてはと思ってしまうので、いくら手元に金があっても間に合いそうにない。
     さすが加藤陽子である。

  •  著者による既発表の書評集。著者の専門の日本近代史関連のものが多いが、中では自分が既読の本、読もうと思った本のほか、自分からは手に取らないだろう南原繁や林芙美子の著作も本書で概要を知ることができた。

  • 以前著者の本を読んで、異論が渦巻く日本の1930年代の歴史を切れ味よく語る学者と常々思っていたところ、学術会議の6人の報道に「さもありなん」と注目して、新刊を待っていたので早速本書を手に取ってみた。
    書評にとりあげられた57冊のうち小生が読んだことのある本は「神聖喜劇」(大西巨人)一冊のみ。「あらら」と思いながらも読み進むと、最後の「おわりに」に「本書が対象とした書籍の多くは研究書だ」とある。
    小生が読む本の多くは、歴史にしろ政治にしろ、一般向けに分かりやすく紐解いた解説書である。研究書に直接当たるのはちょっとハードルが高い。
    しかし、本書の書評をそれなりに楽しめたのは、今まで読んできた一般向けの「解説書」の原典のエッセンスの匂いを嗅ぐことが出来たからと思った。
    本書で、第一次世界大戦後の欧州では「経済成長が著しかった・・国際分業が浸透した結果、各国は比較優位業種を淘汰する必要に迫られ、国内に『繁栄の中の苦難』を等しく抱え込むようになっていた・・・この苦難を除去するために社会主義や平和主義の方向での解決を図れば・・・体制転覆の恐れが生じ、膨大な財政出動も必要とされる。体制と財政の二つながらの崩壊を覚悟せねばならなくなった時、各国の政治指導者は『自衛のためのやむにやまれぬ戦争』の道を選択したのではなかったのか」という部分を読んだ時は、現在の世界情勢を思い起こし、ゾクゾクするような興奮を覚えた。
    いやー、歴史はやっぱり面白い。

  • 日経ビジネス202295掲載 評者:日経ビジネス編集部


    加藤陽子の推し本紹介
    歴史は過去を振り返る時に初めて生まれる
    過去は未来のために蹂躙される(夏目漱石) 本文より

  • https://opac.kokushikan.ac.jp/opac/volume/898733?current=1&total=1&trans_url=%2Fopac%2Fsearch%3Fbarcode%3D01028088%26base_url%3Dhttps%253A%252F%252Fopac.kokushikan.ac.jp%26count%3D50%26defaultpage%3D1%26defaulttarget%3Dlocal%26order%3Drecommended_d%26searchmode%3Dcomplex

    『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の著者による書評集。「未来のために過去はある」と言いたくて書かれた書評を収録。(p.5「はじめに」より)
    著者の専門分野である日本の近現代史を中心に、特に戦争や外交に関する本が多く紹介されています。
    紹介されている本はほとんどが研究書であるため、決して読みやすいとは言えませんが、本書を読むだけでも、未来へ向け、現在と過去を考えるヒントが得られるはずです。

  • 追体験したい本がほとんどない

  • 未来のために過去がある、と言いたくて本書は書かれたそうだ。
    前作「この国の形を見つめなおす」の第6章の書評を通じて著者の思考や指向を開陳したスタイルを本作では全面的に展開している。
    著者の1930年代の日本の軍事と外交に資するような文献が多い。
    それでもジョンルカレや近代史と一見関係のないタイトルも見かける。
    全体の構成としては以下の通り
    1 国家の役割
    2 天皇という孤独
    3 戦争の教訓
    4 歴史を読む
    5 作品に宿る魂

    本書で取り上げられた書物はほとんど読んだことのないものばかりだが、以下興味をもったものを記す。
    1から「情報参謀」「インビジブル」「帝国の計画とファシズム 革新官僚、満州国と戦時下の日本国家」
    2から「天皇と東大」(この書は引用されただけ)「東京裁判を読む」
    3から「戦争」大岡昇平
    4から「地下道の鳩」
    床に入る時のパートナーに相応しいかな?

  • 歴史には、様々な切り込み方がある。特に情報の多い近代については、どこに立脚するかで見える歴史が変化する。歴史の専門書を紐解くことは、ほぼ無い。けれど、そのエッセンスだけでも十分に楽しかった。「歴史を知る読書」より、自分には感じる面が多かった。

  • 挙げられる作者の大半は聞いたこともない人物ばかりであり
    歴史書の類も概観めいた広く浅くといったものに偏りがちな身からすると
    サーキュレーターとしての仕事が専門家としての立ち位置から信頼に足るのは疑いないが
    平易すぎずそれでいて断念せずに済むような適度な骨太さで書評を編んでいく充実ぶりは、別の分野でもこの書のような案内役が一分野に一冊に限らず広がってくれればと期待したくなる。

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著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2023年 『「戦前歴史学」のアリーナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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