応用倫理学のすすめ (丸善ライブラリー 125)

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  • 丸善出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784621070468

作品紹介・あらすじ

「他人に迷惑をかけない限り何をしてもいい権利」(自己決定権)によって個人の権利が守られている。しかしポルノグラフィー、代理母、自殺等に関して、個人が他人に迷惑をかけないとしても、社会の側が干渉したり、個人の自己決定権を制限してくるのは何故か。また、親が子どもを守るということは、子どもの自己決定権を認めることか否か。例えば子どもは何歳になったら親に内証で人工妊娠中絶をしてもよいのだろうか。新しい学問領域である「応用倫理学」がそれらの問いに解法を提示する

感想・レビュー・書評

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  • 現実の問題を倫理学的に捉え解法を提示。コンプライアンスが叫ばれるビジネスの現場でも倫理学的思考法が必要との思いを強くした。章立ては「個人の自律」「親と子の世代間、社会的共同体」「強者と弱者」の倫理学。

  • 著者は「あとがき」で、「応用倫理学」は、「どのような原理の応用だとみなせばいいのか」を研究する領域であって、あらかじめわかっている原理を適用するのではない、と述べています。本書は、ポルノ、セクハラ、安楽死、代理母、知的所有権などの具体的な問題をとりあげ、それらについての諸問題に倫理的な判断をおこなうための原理へとさかのぼって問題を捉えなおすというかたちで議論が進められていきます。

    現代のアクチュアルな問題を俯瞰する視座を手に入れる快感を味わうことのできるという意味で、おもしろく読むことができました。

  • 図書館1階の学士力支援図書コーナーでは、大学の建学の精神に基づいた図書を3つのテーマに分けて配架しています。
    ・アイデンティティを求めて
    ・いかに生きるか
    ・視野を広げる、世界を知る力

    この本は→「視野を広げる、世界を知る力」

    配架場所はこちら→http://libopac.josai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2000044006&key=B129965614512500&start=1&srmode=0

  • 高校時代、哲学やら正義論やらに僕を導いてくれた一冊。僕にとってキッカケの一冊。

  •  「死刑廃止論」が『社会的共同性の倫理学』のなかで、語られていた。僕はブログでも書いたが、マスコミに登場して来るまともな「死刑廃止論者」の意見に出会ったことがなかったので、もやもや感があり、すっきりしたかった。この本で扱われているのはたった12頁だが、すっきりした。それは、勿論答えはひとつではないのだが、日本での、世界での 「死刑廃止論」の論点が明快に整理された点だ。
    そして、加藤氏は「死刑制度を廃止することよりも、一つ一つの事例について、慎重な判断を積み重ねていくことが大事なのであって、私はふと自分も大罪を犯すかもしれないと思うとき、死刑を願い出るという最後の救いを残しておいて欲しいと思う。」というが、ここに氏のメンタリティがうかがわれ、しかも現状では最善策ではないかと共感してしまう。
    1章の「ヘアヌードと他者危害の原則」から「鯨は食べてよいか」の12章まで、現代われわれがかかえ、答えに悩む諸問題をとりあげ、それを倫理学のゆるぎない立場から、一般人にも解りやすく論じられた見事な一稿である。

  • [ 内容 ]
    「他人に迷惑をかけない限り何をしてもいい権利」(自己決定権)によって個人の権利が守られている。
    しかしポルノグラフィー、代理母、自殺等に関して、個人が他人に迷惑をかけないとしても、社会の側が干渉したり、個人の自己決定権を制限してくるのは何故か。
    また、親が子どもを守るということは、子どもの自己決定権を認めることか否か。
    例えば子どもは何歳になったら親に内証で人工妊娠中絶をしてもよいのだろうか。
    新しい学問領域である「応用倫理学」がそれらの問いに解法を提示する。

    [ 目次 ]
    1 個人の自律の倫理学(ヘアヌードと他者危害の原則 留学生射殺事件の無罪判決 エイズ患者のプライバシー)
    2 親と子の世代間倫理学(子どもの名前と自己決定権 何歳になったら親に内証で人工妊娠中絶をしてよいか)
    3 社会的共同性の倫理学(代理母は許されるか 安楽死と尊厳死 死刑廃止論)
    4 強者と弱者の倫理学(セクハラで大事なのは使用者の責任 ハイテク社会と製造物責任法 公正の概念とアファーマティヴ・アクション 鯨は食べてよいか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  人に迷惑をかけなければ何をしてもいい、国家や社会が個人の自由・権利に干渉すべきではない、といった理屈がどう解釈され、利用されているのか。こういった点について、アメリカで「フリーズ」と言われても動いてしまい射殺された留学生の事件で「正当防衛」が理由に無罪になった話、子どもに「悪魔」と名付けた親の話、宗教上の理由で父親が輸血を拒否して息子が死亡した話など、実際に社会で起こった話を題材に、それらを巡る様々な議論や考え方を、分析した1冊。
     様々な議論になりうる問題が提示され、それらの問題に対して読者の1人1人が社会の成員としてどのような判断を下すか、ということが求められる本で、ずいぶん頭を使って読んだ。内容にも骨があって、自由主義や功利主義の考え方など、一度読んだだけでは理解できず、何度か読み返しながら読んでいった。環境倫理や生命倫理などにも触れられており、著者の提唱する「応用倫理学」にとても興味を持った。(09/01/23)

  • なんかすごい苦労して呼んだくせに中身があまり頭に残ってない。
    もう一度じっくり読んでみたい。
    ヘアヌードの字に同級生が興奮。あほかと。

  • 090607

  • 昔話題になった、親が子供に悪魔という名前をつけたこととか、自己決定能力をもつのはいつごろか(一般的に成年とは、満20歳をさすけれど、未成年で結婚したら、成年とみなされるらしい、初めて知った)、死刑廃止論が興味深かった。死刑廃止論は昔レポートで書いたことがあったから、自分の考えとてらしあわせて読んでみた。

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著者プロフィール

京都退学名誉教授

「2012年 『科学・文化と貢献心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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