- 丸善出版 (2019年10月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (316ページ) / ISBN・EAN: 9784621304242
作品紹介・あらすじ
シニアワインエキスパートの岩田健太郎医師が
医療ジャーナリストの岩永直子氏と7時間にわたり
医療情報の見方,食事,睡眠,未病を軸に対談.
11冊の健康本をクリティークしたが
いつも思いもよらぬ方向へ脱線.
本書ではその脱線加減も忠実に再現
12世紀イタリアで記された
『サレルノ養生訓』はよいワインの選び方や
健康法を論じた予防医学の書.
わが国では,貝原益軒が
『養生訓』で心身の養生を説いた.
今も昔も根っこは同じ.
知性の発動は『If not』の吟味の先にある.
感想・レビュー・書評
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本書を一言でいえば、脱線本だ。これを良しとするなら読んでもいいだろう。
岩田健太郎、岩永直子の両氏による対談本。
健康本11冊を批評している。
取り上げられている本は、下記のようにベストセラーとなった本が多い。
『スタンフォード式 最高の睡眠』 (西野精治/著)
『医者が教える食事術 最強の教科書』 (牧田善二/著)
『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』 (デイヴ・アスプリー/著)
私は健康には関心があるため、これらの本は読んでおり、今も所有している。各書のどこを切りだして批評したかもわかるし、本書で書かれている箇所も読み返して検証もできる。
本書を買う前に、目次や、取り上げられている本を見て、「これはためになりそうだ」と期待して購入した。しかし、内容は思っていたのとは違った。
各章は本の批評からはじまるが、話は必ず脱線する。医療の問題、医師の働き方の問題、マスコミの報道批判など。本の批評よりも脱線した話の方が長いのが難点。本の内容について批評した部分は、半分にも満たない。批評対象の本から引用はとても少ない。元の本を読んでいなければ、どのような内容の本を批評したのか概要がつかみづらいだろう。
あとがきで、岩永氏はこう書いている。
対談というよりは、ほとんど岩田先生の独演会でしたが、 (中略) 脱線こそに医療との向きあい方のヒントがたくさん詰め込まれていると感じたので、流れに任せる形で広がっていく議論を楽しみました。(p302)
これが良くなかった。
岩永氏が医療記事の記者だから、話は自然と医療の話に展開してしまったのだろう。岩永氏も自分の関心のある話だがら、話が脱線してもあえて戻さない。結果として、岩永氏の関心のある医療の話の方が比重が多くなってしまっている。
医療のあり方の話としては価値があるが、本来の趣旨とは、ズレたものになってしまっている。健康本の批評に興味のある読者は、肩透かしを食う形である。
対談相手が、健康本を出している人であれば、まったく違った内容になっていたはずだ。
対談相手は、吟味して選ばなくてはならないというのが、本書から得た一番の教訓だ。あとがきで、岩永氏は普段健康本をあまり読まない、むしろ敬遠していたと書いている(p301)。そうであれば、健康本の対談では、聞きに徹するしかない。対談のために、多少書籍を一夜漬けで読んできても、意見を交わすことはできないだろう。
岩田医師による、まえがきは以下のように読者の興味をひくものだった。
世にある健康本は全く役に立たないのか。あるいは、もし役に立つ本があるとすれば、それはどういう本なのか。役に立つ本と、立たない本はどこが違うのか。どうやったら、両者を(医学の専門知識なしで)峻別できるのか。この命題に取り組んだのが本書である。(pIII)
命題の追及には失敗したといわざるを得ない。
対談中には、以下のような身も蓋もないことも言っている。
岩永:健康本の良し悪しを見分けるコツなどはありますか?
岩田:「こうすればいい」なんて見分けるコツはないですよ。そういう安易なコツがあると思うのが、そもそも幻想で。
(中略)
一般読者もみんなハウツー本に飢えているのでしょうが、世の中の多くのことはハウツーじゃわからない。「こうやったらいいという方法はありませんか」というニーズに対して、「これだけやっておけば大丈夫!」というのが、この手の健康本が売れる最大の根拠になっていて、「これだけやっておけば大丈夫!」という本のほとんどが信頼に値しない。だから「こうやれば本が吟味できる」という方法もないってことです。(p236-237)
下記のように、本選びの参考になる記述はあるが、健康本の話題は少ないということは知っておいた方がよい。
岩田:これ、暇さえあれば、ちゃんと調べてみたいのですが、ダイヤモンド社って、信用できない健康本が多いと思うのですよ。じつは以前に、この出版社から本を出さないかと打診されたことがあって、一所懸命原稿をつくって見せたら、「この内容ではうちでは出せません」と言われてしまって。
岩永:なぜですか…?。
岩田:もっと「煽る」「過激な」「釣りワード」がないと、売れないからだそうです。(p153)
これは一個人の体験で、エビデンスレベルは低い。だが、一般人が知りえない裏話としては興味深い。さまざまな健康本を読んできた経験と照らし合わせても、たしかにそのとおりだと納得できる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2階書架 : WA009/IWA : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410165727
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p. 137 「デマや噂はものすごく盛り上がりますが、その後にそれを打ち消す情報が入ってこない。」
→大手マスコミさんの行動そのものよな。
p. 138「宗教的にワクチンを嫌う人は、個人レベルではたくさんいるし、その事実は受け入れなければなりません。信じる権利は自由です。むしろ統制的に思想を縛る方がやばいわけで、反ワクチンの人がいる社会というのは「健全性の担保」だと思います。 -
医療と医学の違いについて、余り明確に区別できていなかったと痛感した。
科学的に説明することと、個人の価値観や感情を重んじることは別のこと。
個人の価値観に寄り添おうとして、科学的に間違った情報で説明してはいけない。
また、情報に関しては、信用できる人を探すのではなく、信用できる情報かを判断することが大事。 -
【琉球大学附属図書館OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB29141628 -
徹底してロジカル。語り得ないものを語らないこと。
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読了。さまざまな健康本を採り上げて、そこで書かれていることの妥当性を対談形式で吟味する企画。成分主義とかエフェクトサイズの話とか、正味のリスクとベネフィットの話など学びが大きかった。あと岩田先生がときどき暴走して自分の考えを滔々と述べはじめるんだけど、それを岩永さんが何度も引き戻そうとするくだりが面白くて、あそこで腹を立てて席を蹴らない岩永さんの忍耐力すげえって思った。
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対談はあまり好きではないが、この本は「対話」として成り立っている。良い点、悪い点をきちんと分けて挙げており、真っ当な姿勢だと思った。
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イワケン先生の読書録に健康本が羅列されるのを見て、こういう本がいつか出てくるだろうな、と楽しみにしていた。イワケン本で書評集って、個人的には何とも美味な取り合わせ。でその内容は、意外にも対談って形をとっているけど、良く脱線することまで含めて、この形式は正解。ふと考えてみたら、これまで読んだ書評集の中でも、お気に入りのものはだいたい対談集だった。納得。健康本は玉石混交で、でもやっぱり”石”の方がずっと多くて、かといってタイトルだけではなかなか判断できない、ってことが分かった。『このタイトルで中身まともなん⁉』みたいなのもチラホラあったし。結局はリテラシーの問題やね。
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Twitterで存在を知り、この二人の本なら読まなきゃと購入。 連休で一気に読んだ。
思いもよらぬ(?)脱線も含め、医師とメディアの考え方の違いなど垣間見ることができ大変面白かった。
文中で紹介されている本は読んだことあるものもあれば、タイトルで敬遠気味だったものもあった。ただ、この本を読んで一回読んでみるかと思った本も出てきた。
また、ここは良い、ここはダメとクリティークしていく力を身につけるという点は、医療に関わるものとして自分もまだまだ磨いていく必要あると感じた。
著者プロフィール
岩田健太郎の作品
