かくれた次元

  • みすず書房
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感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622004639

感想・レビュー・書評

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  • 我々の暮らす”空間”が生物と人間にどのような影響を及ぼすかを文化人類学の観点から考察している。

    正直結論がもの足りない気もしたが、それは岡本吏郎さんの講演会を聴いて後々明らかになって行く。

    生物学的なアプローチからねずみを使った実験で、ねずみに多様な居住空間を与えることにより、人口の自動調整、ストレス、性行動の異常化などは、読んでいて退屈しなかった。

    文化的アプローチとして、民族間における空間への認知の違いの考察も新しい発見。

    著者は最後に当時の建築学、都市設計の在り方、人間の精神性に警鐘を鳴らすとともに、人間は文化の上に延長物を創り出し、それとともに生きていかなければならないということ。この辺りの解釈は難しいが・・・

    岡本吏郎さん曰く、
    ・人間は自分よりも延長物を先に行かせるのではなく、家畜化しなくてはならない。
    ・読書も延長物の一つ
    ・「攻殻機動隊」と脱同一化

    よく分からない・・・が、読んでみて決して無駄ではない一冊。

  • 「文化」というかくれた次元を、「空間」とその知覚という観点から分析する。その対象は、生物学、行動学、文化人類学、都市工学に分類されるような幅広い現象であり、示唆に富む。
    コミュニケーションの課題に接すると、「人種の違い」「環境の違い」といったように、複雑であるがゆえに、文化というかくれた次元を現象の原因として思考停止に陥ってしまいがちだ。「ちがう感覚世界に住んでいる」という本書の根底にある前提とその分析は、異文化を理解する上での大きな礎石となるように思える。
    集団、文化、都市といった複雑な派生物を考えるうえで、その対象が人間を基に構成されていることや、同じ体験から異なる知覚が生じること、こうした差異に無自覚であることが、結果として漠然とした歪みの感覚を生じるのだろう。派生物へのフィードバックの組み込みは、いまだに大きな課題として残されている。

  • 著者はアメリカの人類学者。
    人間という集団において、権力者らが、それ以外の人間の人口調節をしているのは、自然の摂理なのか?
    直接的な事はなにも書かれていないだろうが、なにかヒントが得られるかも。
    カニの個体数調節には、少し驚いた。

  • 並行して読んでたフィリップ・ボールの「流れ」と重なる部分があったり、読んだばかりのギブソンの理論(ただし、読んでない視覚ワールドの世界)が多く引用されてたり、と、読みながら混乱してしまう。
    読書の順番の前後関係は、意識をしたりしなかったりまちまちだ。かくれた次元を読むことになったのは、そもそもはジャコモ・リゾラッティの「ミラーニューロン」で脳の機能を説明するのに思わずアフォーダンスが出てきて、おぉ!と思い、ずーっと先送りにしてもはや忘れかけてた、J.J.ギブソンに挑戦せねば、となったことから始まった。「ミラーニューロン」を読み終わったときにたまたま父の家にいて、その蔵書から「生態学的視覚論」を譲り受けて読み始めるも、違和感を拭えず、一冊遡って「生態学的知覚システム」から読み直した。アフォーダンスというか、今更ながらむしろギブソンの言うのは生態学的な知覚のシステムのことであることを理解しつつ、そこには、「ミラーニューロン」でも触れてあった、「近さ」「遠さ」の感覚が抜けてるな、というところが気になった。そして同じ頃、たまたまジュンク堂池袋店のエスカレータを登ってたときに目に入った本書「かくれた次元」がそういう距離の本だったと思って手にした、という顛末で、だから、ギブソンがたくさん引用されていることには、我が意を得たり、というところだった。

    本書は、難しいものではないけども、今、東京とかの大都市で生きてて、無意識に通奏低音のように感じてるストレス(よく晴れた日に地方の広い空の下の駅に降り立つと感じる、ふぅ、というような開放感が、この日常のストレスを示してる)とその原因に気付く良い本である。「近さ」についての文化間での相違への理解や近過ぎることの孕む本質的な不安定さへの重要性を教える。

    同時に、あまり触れられていないが、僕にはむしろ遠さの重要性が忘れられていると感じた。電話、メール、SNSで関係の「遠さ」が弱まっている。孤独が減っている。それはどういうことか。
    不安を感じるほどの遠さ、つながりを辿れないほどの距離、そういうものがある。生物はそれほど群衆からは離れない。仲間を失うことは生命の危機につながるし、何より、繁殖の機会を逃す。
    しかし、人間には、こういう遠さというのが重要性をもつ場合がある。ジョーゼフ・キャンベルの「千の顔を持つ英雄」にあるように、多くの非文明的社会で、大人になる段階での通過儀礼があってそれを模したものが神話構造の「旅立」「通過儀礼」「帰還」というものになる。この「旅立」というものが、まさに遠さになる。ここに近さを離れ彼岸へ渡る、ということがある。そしてそこで挫折があり、助けがあり、超克があって、通過儀礼を経た大人として帰還に至る。バンジージャンプの死を賭したジャンプも、人の手の助けが届かない領域への旅立ちであり、紐による救いであり、それを乗り越えての帰還になっているのだろう。
    現代では、本書にあるように近さの過剰による問題が起こっている、が、同時に、遠さの希薄にも繋がっていることで、通過儀礼の機会を失っている。大人になる、というタイミングを得ないまま、大人になる。
    ギブソンからの流れで、近さを課題に読んでたが、遠さに気づかされた読書だった。

  • 類型的・断定的なところが少々気になるが、45年前に出版されたとは思えない程、いまでも面白く読むことができる。古典とはそういうものだろう。近年の書籍はジャンルが細分化されすぎる点が気になるが、本書はジャンルの縦割りを軽々と超えていてそこが魅力であろう。

  • 『かくれた次元』
    原題:THE HIDDEN DIMENSION (1966)
    著者:Edward T. Hall(1914-2009)
    訳者:日高敏隆(1930-)
    訳者:佐藤信行(1929-)

    【メモ】
    ・本書前半はヒト以外の動物について。第十章以降の人間を対象にした後半では、文化(具体的な区分は本文を参照)ごとに観察された差異を分析している。

    ・些細な愚痴
     「訳者あとがき」の最後に、度量衡の換算を敢えて行わなかった理由(「奇妙な正確さ」を避けるため)が述べられているが、私はその理屈を理解できていない。
     177,178頁の表等なら換算しないのも分かる。しかし、メートル法を叩き込まれた日本語話者が、例えば文中の「22フィート」をすぐ理解できるのだろうか。『ハリー・ポッター』か。
     せめて簡単な換算表を本書の冒頭に書いてほしかった。実際は、訳者あとがきの最後に「ちなみに1インチは……」と書いているが、その位置では役に立たない。また、換算しないことを一貫したのであれば、そのような「因みに」を残す必要も薄い。

    【版元】
    四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/304頁
    定価 3,132円(本体2,900円)
    ISBN 4-622-00463-1 C1010
    1970年10月30日発行

    今日の世界では、われわれは、多くの情報源からのデータに圧倒され、さまざまの文化に接触し、世界中いたるところで人びとにインヴォルヴされてゆく。それとともに、世界全体とのかかわりが失われているという意識もしだいに強くなっている。
    本書は、人間の生存やコミュニケーション・建築・都市計画といった今日的課項とふかく結びついている“空間”利用の視点から人間と文化のかくれた構造を捉え、大量のしかも急速に変化する情報を、ひとつの統合へと導く指標を提供するものである。
    ホールは、二つのアプローチを試みる。一つは生物学的な面からである。視覚・聴覚・嗅覚・筋覚・温覚の空間に対する鋭敏な反応。混みあいのストレスから自殺的行為や共食いといった異常な行動にかられるシカやネズミの例をあげ、空間が生物にとっていかに重要な意味をもつかを示す。人間と他の動物との裂け目は、人びとの考えているほど大きくはない。われわれは、人間の人間たるところがその動物的本性に根ざしていることを忘れがちである。
    もう一つは文化へのアプローチである。英米人・フランス人・ドイツ人・アラブ人・日本人などの、私的・公的な空間への知覚に関して多くの興味ぶかい観察を示し、体験の構造がそれぞれの文化にふかく型どられ、微妙に異なる意味をもつことを示す。それはまた疎外や誤解の源でもあるのだ。
    このユニークな把握は、人間に人間を紹介しなおす大きな助けとなり、急速に自然にとってかわり新しい文化的次元を創り出しつつあるわれわれに、新鮮な刺激と示唆をあたえてやまない。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/00463.html

    【目次】
    口絵写真(1~26) [/]

    日本版への序 [i-ii]
    まえがき [iii-viii]
    目次 [ix-xi]

    第一章 コミュニケーションとしての文化 003

    第二章 動物における距離の調節 013
    動物におけるスペーシングの機構(逃走距離・臨界距離・接触性動物と非接触性動物・個体距離・社会距離)/人口調節/トゲウオの連鎖/マルサスの再検討/ジェームズ島での大量死/捕食と人口

    第三章 動物における混みあいと社会行動 037
    カルフーンの実験(実験のデザイン・シンクの発達・求愛とセックス・巣づくり・子の保育・なわばりと社会組織・シンクの生理的結果・攻撃行動・軽度のシンク・カルフーンの実験の要約)/混みあいの生化学(外分泌学・糖銀行モデル・副腎とストレス・ストレスの効用)

    第四章 空間の知覚――遠距離受容器 目・耳・鼻 062
    視覚空間と聴覚空間/嗅覚空間(嗅覚の化学的基礎・人間の嗅覚)

    第五章 空間の知覚――近接受容器 皮膚と筋肉 076
    オフィスにおけるかくれたゾーン/温度空間/触覚的空間

    第六章 視覚的空間 095
    総合としての視覚/見える機構/立体視

    第七章 近くへの手掛りとしての美術 111
    現代の諸文化の対照/知覚の歴史としての美術

    第八章 空間のことば 130
    知覚への鍵としての文学

    第九章 空間の人類学――組織化のモデル 145
    固定相空間/半固定相空間/非公式空間

    第十章 人間における距離 160
    空間の力動性/密接距離/個体距離/社会距離/公衆距離/距離はなぜ「四つ」か?

    第十一章 通文化的関連におけるプロクセミックス――ドイツ人・イギリス人・フランス人 182
    ドイツ人(ドイツ人と侵害・「プライベートな圏」・空間の秩序)/イギリス人(電話の用い方・隣人・寝室は誰の部屋か・話し声の大小・目の行動)/フランス人(家庭と家族・開いた空間のフランス的使用・星型と格子型)

    第十二章 通文化的関連におけるプロクセミックス――日本とアラブ圏 206
    日本(混んでいるというのはどの程度からか・日本人の空間観念、「間」を含む空間)/アラブの世界(公共の場での行動・プライバシーの観念・アラブ人の個体距離・向いあうこと、あわないこと・インヴォルヴメント・囲みこまれた空間についての感情・境界)

    第十三章 都市と文化 228
    制御の必要/心理学と建築/病理学と過密人口/単一時的時間および多元時的時間/自動車症候群/包括的共同体建築/未来の都市計画の趣意書

    第十四章 プロクセミックスと人間の未来 249
    形対機能、内容対構造/人間の生物学的な過去/解答の必要/文化をぬぎすてることはできない

    付録 遠近法の13のヴァラエティーに関するジェームズ・ギブスンの論文の摘要 [261-267]
    訳者あとがき(一九七〇九月 日高敏隆 佐藤信行) [269-270]
    文献 [1-14]

  • 図書館本 361-H21(100080067495)

  • 180428 中央図書館
    古い写真図版がたくさん載っているが、シカゴのとうもろこしタワー?はだいぶ前から立っていたのだ。その他にも、フランス人は身体テリトリーが他国よりも小さく、公共の場で密集するのをあまり気にしないとか。ドイツ人とはそりゃ合わないな。

  • 『パブリック空間の本』で紹介されていた1冊。
    空間利用の視点から、人間と文化の隠れた構造を捉えています。生物学的アプローチも、文化的アプローチも非常に興味深いものがありました。
    概念的で古い本なのですが、なかなか面白かったです。
    訳が日高敏隆さんというのが、少し意外というか驚きでした。
    日本に対してはとても好意的に書かれていて嬉しいのですが、ベイルートの「いじわるの家」、これはヒドイ!ホントいじわる(^^;; 今でもあるのかな?

  • 本書P51の「混み合いの生化学」の記述を読んだ際、鳥肌立つ思い出あった。

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