テクストの快楽

  • みすず書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622004714

感想・レビュー・書評

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  • アフォリズムである。真のロランバルトの理解には自分はまだ遠い。

  • バルトがテクストについて追究していたものは、音楽でいうならば、12音技法のようなものだったのだろうか?しかし、技法にとらわれないということならば、それとも違っているのかもしれない。
    いずれにせよ、テクストについて箴言の形式で書かれ、理論的構築を目指して書かれてはいないことから、その意図するところを読み取ろうとするのは、なかなかに困難を伴うのである。

  • 日常世界を線形的に同じ感じで進み行くわたしが書物の表紙を開くことは、別の存在を開くことに止まらず、風を切って知的世界の裂け目に入るという意味を持っている。同じ裂け目の中に、同じ声を聞いている、同じ気持ちの人たちがいるのを感じ、流れ星がたどり着いた場所にいるような感じもしてくる。
    一番ときめくのは、永続的な反復練習に似た比較で、複数の泡を熱心に学び、複数の対象を執拗に知悉して、ある全然違う日常世界が見え、一瞬だけ全然違う自分の在り方が見えた瞬間。過去から未来から時を融和させ、偶然ではありえない壮麗な世界を視る。

  • 「マラルメだけが自分の肌を自由にできた」とは、『ニューロマンサー』のパンサーモダンズたちのような特性か。その点、バルト自身は「横切る」だけと述べている。すべての逆を行き、テクストを楽しむ。その快楽は説明できない、とまで言う。
    この本の各章の表題は伏せられていて、巻末に目次として記されている(しかも訳者あとがきの後にだ)。p71「読書」で語られるバシュラールがいい。それはエクリチュールからは自由な態度、感覚のテクストだろう。固定しない、されたくないバルトは、揺らぎの中で読まなくてはならず、その用語は常に定義されない(させない)。日本人のありようにも似た中庸性。
    論理的に真理を追求する生面目さの対局に「快楽」がある(沢崎氏のあとがきより)。

  • 定義されること、わか“られる”こと……これらを忌避し続けたテクストが提供できるものは、ただ快楽のみになるだろう。ということを、定義されることを避けながら、意味を揺るがせながらバルトはテクストを提示し続け、トピックをアルファベット順に並べるという方法を用いて逃げ切っている。こういった手法というか嗜好は、むしろ現代小説に求められるものではないだろうか。

  • 「愛する者と一緒にいて、他のことを考える。そうすると、一番よい考えが浮ぶ。仕事に必要な着想が一番よく得られる。テクストについても同様だ。私が間接的に聞くようなことになれば、テクストは私の中に最高の快楽を生ぜしめる。読んでいて、何度も顔を挙げ、他のことに耳を傾けたい気持に私がなればいいのだ。私は必ずしも快楽のテクストに『捉えられて』いる訳ではない。それは、移り気で、複雑で、微妙な、ほとんど落着きがないともいえる行為かもしれない。思いがけない顔の動き。われわれの聞いていることは何も聞かず、われわれの聞いていないことを聞いている鳥の動きのような。」

    「われわれは全体を同じ緊張度で読みはしない。テクストの『完全性』をあまり大事にしない、無造作なリズムで読む。知りたい一心で、なるべく早く物語の白熱する部分(それは常に物語の関節であり、謎や運命の暴露を進行させる部分だ)に到ろうとして、(《退屈》そうに思われる)ある箇所を斜め読みしたり、抜かしたりする。……快楽の源泉であり、技法である合成語分離法は、ここで、散文的な二つの縁を向い合わせる。秘密を知るのに有用であるものと有用でないものを対立させる。それは単なる機能性の原理から生じた断層である。それは直接言語活動の構造からは生れない。言語活動の消費の時にだけ生れるのである。作者はそれを予見できない。すなわち、『読まれないであろうこと』を書こうとすることはできない。しかし、偉大な物語のもたらす快楽は、読むことと読まないことの織りなすリズムそのものだ。プルーストやバルザックや『戦争と平和』を逐次的に読んだ者がいるだろうか(プルーストの幸せ、それは、誰も、読むたびに、決して同じ箇所はとばさないということだ。)」

    「私が物語で味わうものは、従って、決して内容ではないし、構造でさえない。むしろ私がその美しい外被につける擦り傷だ。」

    ・「テクストの快楽、それは幸せなバベルだ。」

  • Amazon、¥840.

  • 正直なところ知識が足りない部分が多かったですし、わかりませんでした。
    抽象的であるようで、しかし、自らの読書体験をふり返ると、重なるところがあります。

    終わらせることの快楽というのは、これまでの読書ではよくありました。
    しかしテクストそのものの快楽とは……

  • バルト大好き!!

  • 714夜

    ロラン・バルトは物語のサスペンスを追って行く「直線的読書」を知的な快楽と規定したうえでこういっている。「もしすべての物語が『父』を登場させることにあるとすれば、それはオイディプース的な快楽なのである」と。・・・-前田愛『文学テキスト入門』p31の記述

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著者プロフィール

(Roland Barthes)
1915-1980。フランスの批評家・思想家。1953年に『零度のエクリチュール』を出版して以来、現代思想にかぎりない影響を与えつづけた。1975年に彼自身が分類した位相によれば、(1)サルトル、マルクス、ブレヒトの読解をつうじて生まれた演劇論、『現代社会の神話(ミトロジー)』(2)ソシュールの読解をつうじて生まれた『記号学の原理』『モードの体系』(3)ソレルス、クリテヴァ、デリダ、ラカンの読解をつうじて生まれた『S/Z』『サド、フーリエ、ロヨラ』『記号の国』(4)ニーチェの読解をつうじて生まれた『テクストの快楽』『ロラン・バルトによるロラン・バルト』などの著作がある。そして『恋愛のディスクール・断章』『明るい部屋』を出版したが、その直後、1980年2月25日に交通事故に遭い、3月26日に亡くなった。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「2023年 『ロラン・バルト 喪の日記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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