神谷美恵子著作集 4

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622006343

感想・レビュー・書評

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  • 神谷美恵子の文章が読みやすいのもあるけれど、ウルフ自身も関係者も、当時のイギリスの中産階級のあり方もぜんぶおもしろかった。しかし本人だけではなく親兄弟の性格とか欠点までも調べ上げられてしまうのだから、芸術家はたいへんだ。

    ウルフは鬱病で自殺したんだとばかり思い込んでいたが、子どもの頃から躁鬱と統合失調のミックス観たいな発作が周期的に出る人だったようだ。そういう病気を抱えながら名作を生みだしていった陰には夫レナードの献身的なサポートがあったわけで、ウルフの没後20年以上一人で暮らしたレナードと作者の交流には胸を打たれるものがあった。

    ウルフの書簡集と省略抜きの日記は日本語に訳されていないようだ。本書によると日記は文学として優れているそうなので、いつか翻訳版がでたらうれしい。

  • NHKBSで放映された英国ロイヤルバレエによる『ウルフ・ワークス』を見て、
    「ヴァジニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』『オーランドー』『波』の内容がわかればもっと楽しめるではないか?」と思いました。

    そうしたら、私の好きな神谷美恵子さんがウルフを研究した本を出されていて、この三作品についても書かれているらしいことがわかりました。

    結論としては『ダロウェイ夫人』についてはわかり、バレエを再度楽しむことができましたが、他の二点についてはほとんどわかりませんでした。
    なぜなら、神谷美恵子さんはこの作品を仕上げる前に病気で亡くなってしまったからです。

    ヴァジニア・ウルフは生涯にわたって再発する精神病を患っていて、1941年59歳で入水自殺しました。
    神谷美恵子さんは英文学に造詣が深い精神科医で、ヴァジニア・ウルフと呼ばれる現象を、なるべく先入観なしに眺め、彼女自身の内的世界や彼女のErlebnissweise(体験様式)や彼女の病をふくむ全存在に感情移入し、これを理解しようとするほうが安全と思いました。
    このような方針によって、なぜ彼女があのように生き、かつ書いたかを少しでも理解し、また精神医学者たちに、興味ある研究症例を提供することができればと思ったのです。

    ウルフの作品や他の研究者の資料を読み、ウルフの夫や甥に実際に会い手紙の交換もします。
    しかし必要な資料が完全にそろわず、仕上げることができない。
    どんなにかもどかしかったことでしょう。
    そうしているうちに心臓の病気で亡くなってしまったのです。

    天国でウルフと美恵子さん、会えたでしょうか。
    だといいなと思う。

    • nejidonさん
      nagisa-libraryさん、こんにちは♪ はじめまして。
      いつも興味深いレビューを載せて下さって、楽しみに読ませていただいてます。
      ...
      nagisa-libraryさん、こんにちは♪ はじめまして。
      いつも興味深いレビューを載せて下さって、楽しみに読ませていただいてます。
      (私の拙いレビューにもポチをたくさん下さって、ありがとうございます)

      ヴァージニア・ウルフは夢中になって読みふけった頃があります。
      心に引っかかるものがあって、これは何だろう?とまた読んでしまう魅力がありますね。
      別件ですが、フランス映画で「まぼろし」というオゾン監督の作品があるのですが、
      主役の教師(シャーロット・ランブリング)の、授業のテキストが「波」でした。
      ちょうど読んでいる時期にこの映画とリンクした、懐かしい思い出です。

      これからも、どうぞよろしくお願いします。

      ところでこのコメントがご迷惑でしたら遠慮なく仰ってくださいね。
      速やかに削除しますので。
      2018/04/12
    • 凪紗さん
      nejidonさん
      コメントありがとうございます。

      nejidonさんは文章を書くのがお上手で、いつも感心しています。
      また拝読さ...
      nejidonさん
      コメントありがとうございます。

      nejidonさんは文章を書くのがお上手で、いつも感心しています。
      また拝読させてください。

      ヴァージニア・ウルフをたくさん読まれたって、凄いですね。
      私はロイヤルバレエの観客の喜びぶりを見て、イギリス人にとって日本人における芥川・三島・太宰みたいな感じなのか。
      あるいは私にとっての須賀敦子さんみたいな存在なのかなと思いました。

      本を読んでいると、次々リンクしていきますね。
      今年になってブクログを始めたら、それがさらに進んでいくみたいです。
      2018/04/13
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著者プロフィール

1914-1979。岡山に生まれる。1935年津田英学塾卒業。1938年渡米、1940年からコロンビア大学医学進学課程で学ぶ。1941年東京女子医学専門学校(現・東京女子医科大学)入学。1943年夏、長島愛生園で診療実習等を行う。1944年東京女子医専卒業。東京大学精神科医局入局。1952年大阪大学医学部神経科入局。1957-72年長島愛生園精神科勤務(1965-1967年精神科医長)。1960-64年神戸女学院大学教授。1963-76年津田塾大学教授。医学博士。1979年10月22日没。

「2020年 『ある作家の日記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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