- Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622016229
感想・レビュー・書評
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著者は前著『反科学論』(ちくま学芸文庫、1998年)において、科学者の立場から科学批判を展開しています。これに対して本書では、市民の立場から科学・技術を再考することがめざされています。
ある地域で原子力発電所を建設するという案が浮上すると、安全性を強調する専門家と、それに疑問を差し挟む「市民的」立場の専門家が意見を戦わせることになります。著者はこうした場合に、「これまで通りの生活を続けたい」と願う地域の住民の声が、専門家の言説を介さなければ議題に上げることさえかなわないということのおかしさを指摘しています。
科学は、問題の全体を一挙に解明するのではないと著者は主張します。社会的な需要の大きなところから研究が進められていくのであり、その意味で科学はつねに社会的なヴァイアスを帯びていると著者は指摘します。それにもかかわらず、科学的知識だけが真理だという主張が展開され、それ以外の「知」のありようは無視されることになります。とりわけ、地域の人びとに生活知として根づいている、その地域で安定した生活を営むための知識は、科学の立場からは一顧の価値もないものとして排除されてしまうことになります。しかしそうした見方は、科学者・技術者の営みも、一つの社会的営みであることをわすれているのではないかと著者は問題提起をおこなっています。
著者は、このような問題を明確に指摘するとともに、こんにちの工業・技術社会において、科学者と一般の市民がどのような位置と役割を果たすべきなのかを、考えなおす必要があると主張します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「2011年 突撃!先生にインタビュー POP」
http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=008310847