ユキの日記 病める少女の20年

  • みすず書房 (1978年1月1日発売)
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本 ・本 (334ページ) / ISBN・EAN: 9784622023159

感想・レビュー・書評

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  • 神谷恵美子さんの本に書評が載っていて、気になって探した本だけどすごく良かった。カトリックの家庭に生まれ喘息を患うユキという病弱な少女の、8歳から21歳までの日記の抜粋。喘息のため学校に行けず自宅でほぼ引きこもりのような状態を強いられていて、その鬱屈とした生活と内省が綴られている。肉体だけでなく段々と精神も病んでいくのだが、精神的には驚くほど早熟で文才もあり、欝々とした内容ながら非常に読ませる文章でびっくりした。16歳にして、「最も人間的なこと、それは苦悩だと思っている」と…。
    幼い子供のころからひたすらに愛をもとめながら、自分の世界のすべてだった家庭ではそれが得られず、孤独と寂しさを叫び続けているのが胸を打つ。自分の世話をしてくれる母を心から愛しながら、自分を思うように愛してくれないことを深く憎む。父や兄弟とも折り合いがそんなに良くなく、彼女からするとぞんざいに扱われていた。そして成長して失恋することで、ユキの心は決定的に壊れてしまう。
    そのあたりになるともう文章もところどころ意味が取れないような長文になったりして、私を愛して、という生々しい叫びも性的なにおいを帯びて一層激しくなり痛ましいのだが、その圧倒的な感情は目をそらすことが許されない感じがする。

    私とユキの状況はとても比べられるものではないが、体に染みいるようにああ、わかるなあと思うところもあった。閉塞感のある毎日にあって「私が精神的成長もなく、毎日をうかうかと送っていくのがこわい」し、いつかそれを清算させられるのではないかという恐怖。神の前で自分は罪人でしかありようがないというあきらめ、そして神は取るに足らない私に心をわずらわせることはないだろうというかなしさ。どれも深く身に覚えがあって、ユキと一緒に私も震えた。でも私はユキではないから、その恐怖からは脱出しなければならない、とも思う。
    重たくて重たくて、でもただ手を離すことは許されないような本だ。もう少し抱えて、いろいろ考えてみたい。

  • 幾重にも自分自身に錘を課し続け、沈んで行く少女のイメージが心に残る。
    長い長い日記であり、本人の苦しみが繰り返し綴られているにも関わらずその一文一文に深い真理があり、冗長には感じられない。

    文体はどこか翻訳調で、理性的で、時代性を超越している。
    心理学、精神医学に興味のある方にはぜひ読んでもらいたいと思った。

  • 画像が無い・・・読破するのに最もパワーの必要だった作品。後半のある一節は人間失格依頼の衝撃でした。

  • すすっすごい・・・一少女の文学作品であります。

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