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Amazon.co.jp ・本 (425ページ) / ISBN・EAN: 9784622039358
感想・レビュー・書評
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ノーベル賞受賞前に書かれた自伝。
ユダヤ人にとって不穏な時代に暮らし、ナチスドイツに攻め込まれた国を飛び出して、自由フランス軍へ参加、戦争で負傷し、戦後30歳から研究生活に一学生としてからの再スタート。
それでも友人や家族に恵まれ、自身が目指した研究分野の開花も相まって、没頭した研究で素晴らしい成果を上げるまで、その波乱万丈の半生が描かれている。
単なる成功者のサクセスストーリーではなく、その時代だからこその熱い思いや絶望感とまさに命がけの日々、そして家族や友人、恋人との決して綺麗ごとだけではないエピソード。
一人間として一生懸命に生きた人間の姿が読んだ後にもずっと心に残る。
研究者としての名誉はそんな彼への天からのご褒美なのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1965年にノーベル生理学医学賞を受賞したフランソワ・ジャコブ。本書は、その波乱の半生を内省的に綴った感動的な自叙伝。辻由美さんの翻訳がすばらしい。
1920年、フランスのユダヤ人家庭に生まれ、パリで多感な少年・青年時代を過ごす。医学の道に進むが、40年、状況は一変。母の死、ナチスドイツのフランス侵攻。身の危険を感じてイギリスに逃れ、ドゴール率いるフランス自由軍に加わり、4年間北アフリカ戦線を転戦する。そしてドイツ軍による爆撃で負傷。
戦争終結後、なんとか社会復帰はしたが、医師の道は断念。いくつもの職を経るうちに、進むべき道が新たに興りつつあった遺伝学研究しかないと思うようになる。しかし、キャリアがないため、どの研究施設からも門前払いされるも、最終的にパスツール研究所のアンドレ・ルウォフに熱意を買われて拾われる。この時30歳。研究にのめり込んでゆき、やがてジャック・モノーとの共同研究が実を結ぶ。本書はその結実の年、1960年で終わっている(ノーベル賞受賞はこの5年後だ)。
読みどころは、ナチスの侵攻を許してしまった当時のフランスの政治情勢と、ルウォフの研究室にみなぎる活気と熱気。個人的に興味深かったのは、何人もの女性のことが綴られている点。それと、ドゴールと会話をする場面。1回は1940年大西洋の船上で将軍として。もう1回は1959年パリのエリゼ宮で大統領として。ドゴールらしい挿話が笑みを誘う。 -
詩人みたいな科学者
辻由美の作品
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