人間にとって自分とは何か

  • みすず書房 (1999年2月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784622039631

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  • 【自分とはなにかを研究する】
    自分とはなにかをここまで様々な角度から検討した本は初めて見た。

    科学から、宗教から、言語学から、「自分」というものを見つめて考察していくプロセスはとても面白い。

    著者が述べているように、たしかに生物学的に脳が解明されていき、自分とは何かについての研究が進めば、人の「自分」に対する捉え方は変わるのかもしれない。今、自分の頭の中で「自分ってなにしたいんだっけ?」と問いかけたとして、それは自分という存在が自分に問いかけているわけだが、そもそも「自分」と考えている「自分」など存在せず、脳みそのどこかが考えているわけである。

    その脳みその中にある「自分」を見つけられた時、世界中が変わるようなことが起こり得る可能性はある。全世界中の人間が、「自分」について明確になれば、なにか新しい動きが起こり得るからだ。

    しかし現段階で、それは不可能である。「自分」とは、今見に見えている世界をもつ自分であり、「1+1=2」を考えられる自分でしかない。

    自分が日本人であるとか、群馬県民であるとか、キリスト教徒であるとか、そういう集団的ななかでの「自分」はあれど、結局自分は「自分」であり、孤独だ。

    良きも悪きも、現代社会の個人主義的な思想、考えは、本来に「自分」と見つめ合うことの出来る絶好の機会なのだと思う。「天皇陛下のもとに!」といったくそったれなプロパガンダなどは、「自分」とはなにかを考えるのを妨げるだけでしかない。

    「自分」の集まりである社会のなかで、「自分」がどう生きていくのか、そしてどう死んでいくのか。それを考えるしか、脳が解明されるまではないのだとおもう。「自分」という人間を正しく捉えること、正しく理解すること、それが自分の人生を少しでも楽しく、幸せに生きるための唯一の方法であると私は思う。

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著者プロフィール

1925年東京に生まれる。1947年東京大学理学部物理学科卒業。科学思想史専攻。科学評論家。2011年歿。著書『性科学論』(1975)、『自我と宇宙』(1982)、『科学と読書』(1986)、『人間にとって自分とは何か』(1999)、『ヒトの言語の特性と科学の限界』(2011、以上みすず書房)、『心と物と神の関係の科学へ』(1993、白揚社)ほか。訳書 シュレーディンガー『生命とは何か』(1951、岩波新書、2008、岩波文庫)、バナール『歴史における科学』(1956)『宇宙・肉体・悪魔』(1972、新版2020)、ウィーナー『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994)、メダワー『若き科学者へ』(1981、新版2016)、ダイソン『多様化世界』(1990、以上みすず書房)ほか多数。

「2020年 『宇宙・肉体・悪魔 [新版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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