夜と霧 新版

制作 : 池田 香代子 
  • みすず書房
4.23
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本棚登録 : 9303
レビュー : 1092
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622039709

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  • ■『夜と霧』 V.E.フランクル著 みすず書房

    【後編 メシヤ再降臨準備時代/世界大戦】
    心理学者V.E.フランクルが直接体験した、ナチス政権下の収容所での体験がつづられています。収容所に収監され、明日命が奪われるかもしれない極限の状況下にて、しかし心理学者として、自身を検体として分析を進めます。人間の心の強さ、美しさを逆境の非現実の中から力強く教えてくれる、感涙の一冊です。

    すべてはフランクルの主観で語られていきますが、学者としてできるだけ客観的に自身の内面を見つめようと努めています。人を人と扱わない、極限状態の中で、誰が死んだとしてもそれが日常になってしまい、心が動かなくなってしまうことに、フランクル自身が驚きを覚えます。あるものは、完全に希望を失い、あるものはカポーに阿り、命を巡って人間の心が急速にすたれていく様を描写していきますが、フランクルはそういう自身を冷静に見つめながら、それでも良心的です。そもそもの人間性が環境を受け止め切れるか、できずにあふれてしまうのか。現れる姿は様々ですが、その中でも互いを思いやろう、美しさを感じよう、祈り求めようとする姿は、人間の本性的な強さを伝えてくれます。
    印象的なのは、フランクルがともにとらえられた妻を思い夜を過ごすシーン。触れることができなくても、その生死がわからなかったとしても、愛し合った記憶と、現在も続くその感情が、そこにはいない妻を目の前に現存させ、愛を語らせ、現実の困難を和らげることを果たしているのです。真実の夫婦の愛の形を見せられたような、喜びがありました。しかもその時実際には、妻の命はなかったのですから。それを本人が知ったのは終戦後でしたが。
    収容所のユダヤ人の状況のみならず、管理するドイツ人たちの姿も克明に描きます。ナチスを絵にかいたような残酷な管理者もいる反面、ドイツ人たちの良心の痛みを描く場面もあります。この手記の最後、静かに解放された生き残った収監者たちは、それぞれの思う場所に散っていきます。フランクルと共に帰る友人は、終戦と解放に興奮し、また自身の処遇に憤りを覚え、作物のなる畑を直進します。フランクルはそんな場面も冷静に描写します。普段ならこんなことはしないだろうが、自身のおかれた考えざるべき境遇と、そこから解放されたことにより認められた自身の正義が、小さな義を踏み潰すことをなんとも思わない、と。逆にフランクルの心の細やかさに驚かされます。収容所から解放された直後から、畑の作物と、その所有者の迷惑を省みるべき、我であるという良心の厳正さに、です。

    構成は3つに分かれています。はじめは、当時のドイツおよび、その周辺国家と、そこに住むユダヤ人たちの状況および、収容所の状況です。これは2段組の構成で100ページほどになります。2つ目は、フランクル自身の手記です。これがこの書の本編です。そして最後は写真資料です。収容所の残酷な写真も、モノクロで多々残されています。
    はじめと最後はホロコーストを知るときに、まず目にする資料です。あえて言えば、この本で目にしなくても、ほかで見ることのできるものです。だから飛ばしても結構。フランクル自身の手記(70ページほど)だけを読んでも、この本の価値は十分にわかると思います。



    <世界大戦関係の資料>
    ‐書籍
    『夜と霧』 V.E.フランクル
    ‐映画
    『シンドラーのリスト』 スティーブン・スピルバーグ監督(アメリカ)
    『ライフ・イズ・ビューティフル』 ロベルト・ベニーニ監督(イタリア)

  • 心理学者自身が、体験したアウシュビッツなどでの強制収容所体験に基づく被収容者心理の分析は説得力が大いにある。

  • ナチスの強制収容所に収監された心理学者の体験記。
    前半は収容所内の中で起こった悲惨な出来事が語られていて、夢中になって読んだ。
    後半になると、精神的な話になってきて、むしろそちらがこの本の真骨頂だと思うのだけれど、あまり共感はできなかった。
    体験した人にしかわからない世界なんだろうと思う。

  • 旧版に比べて 重厚感に欠ける。

  • 図書館で借りた本。

    ナチスの強制収容所経験者であり、医者の作者が、心理学的な視点で書かれた本。

    ということで読み始めたが、意味の分からない所が多く、理解しにくかった。
    難しすぎたのかも。

  • 【夜と霧】 ヴィクトール・E・フランクル

    ユダヤ人心理学者のヴィクトール・E・フランクルの収容所生活の体験記。
    著者は学者らしい観察眼で、極限におかれた人々の心理状態を分析する。なぜ監督官たちは人間を虫けらのように扱って平気でいられるのか、
    被収容者たちはどうやって精神の平衡を保ち、または崩壊させてゆくのか。こうした問いを突きつめてゆくうち、著者の思索は人間存在そのものにまで及ぶ。というよりも、むしろ人間を解き明かすために収容所という舞台を借りているとさえ思えるほど、その洞察は深遠にして哲学的である。
    「生きることからなにを期待するかではなく、・・・生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題」というような忘れがたい一節が、新しくみずみずしい日本語となって、随所に光をおびている。本書の読後感は一手記のそれではなく、すぐれた文学や哲学書のものであろう。 (Amazopn商品説明より)



    先に読んだ「神様のカルテ2」の中で紹介されていました。webで検索し、評判が高かったので借りてきましたが、私にはすこし難しすぎました。。哲学的なコトや精神分析的なコトはイマイチよくわかりません。。

  • 心理学者からの考察で書かれていた体験記でまぁまぁ面白かったです。

著者プロフィール

ヴィクトール・E・フランクル(Viktor Emil Frankl)
1905年、ウィーンに生まれる。ウィーン大学卒業。在学中よりアドラー、フロイトに師事し、精神医学を学ぶ。第二次世界大戦中、ナチスにより強制収容所に送られた体験を、戦後まもなく『夜と霧』に記す。1955年からウィーン大学教授。人間が存在することの意味への意志を重視し、心理療法に活かすという、実存分析やロゴテラピーと称される独自の理論を展開する。1997年9月歿。
著書『夜と霧』『死と愛』『時代精神の病理学』『精神医学的人間像』『識られざる神』『神経症』(以上、邦訳、みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』『宿命を超えて、自己を超えて』『フランクル回想録』『〈生きる意味〉を求めて』『制約されざる人間』『意味への意志』(以上、邦訳、春秋社)。

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