リヒター、グールド、ベルンハルト

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622042556

感想・レビュー・書評

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  • リヒターのフォトリアリズムをどう解釈したら良いのかという指針が欲しくて手に取った。万人に勧められる本ではないが、物語を読んでいるかのような語り口の批評だ。比較的読みやすい。グールドの演奏、ベルンハルトの著書、どちらも味わったことはないが、この本を読んで興味が湧いた。これを機に、聞き、読んでみようと思う。

  • この著者は,どこかで翻訳文を読んだことがある気がするが,本人の文章を読むのは初めて。もちろん,リヒター関係の本であることが読んだ理由。タイトル通り,画家ゲルハルト・リヒター,音楽家グレン・グールド,小説家トマス・ベルンハルトというジャンルが異なる芸術家について書かれた批評書。そういえば,『ゲーデル,エッシャー,バッハ』という本があったな,と未読ながら思い出す。違う分野の表現に共通のものを見出すというのも批評の面白いところ。
    著者によれば,本書の中心にはリヒターがいるとのこと。書名では一番最初にくるが,章としては3人のうちの最後。リヒターが好んで用いる音楽にグールドがあり,とある小説でグールドがちょこっと登場する物語の作者がベルンハルト。グールドはきちんと聴いたことがなくても私は存在を知っていたが,ベルンハルトはいくつかの作品が日本語になっているようだが,私は知らなかった。著者はリヒターから始まって芋づる式にこの3人の作品世界にのめり込み,それらに共通する主題を見出したというが,リヒターが1932年のドイツ生まれ,グールドは1932年カナダ生まれ,ベルンハルトは1931年にオランダで生まれるという同時代性もそこにはある。本書の構成は分かりやすく,以下の通りである。

    表現の原子 0
    音の粒子 1 グレン・グールド
    言葉の粒子 2 トマス・ベルンハルト
    イメージの粒子 3 ゲルハルト・リヒター
    絶望のマシーン 4

    なかにサンドイッチ状に挟まれた各芸術家に関する批評文はある意味で分かりやすい。いちいち参考文献を示したり,特定の作品を詳細に分析したりという学術的な側面はほとんどなく,あくまでも著者自身の捉え方,解釈をその内的論理で展開する。といっても,短いながら内省的な序文に対して,かなり素朴な記述もあるし,繰り返しも少なくない。でも,1章から3章までで著者がいわんとする3人の作品世界の共通性というのは十分理解できる。
    その上で,最後の4章はどういう意味があるのだろうか。冒頭からプラトンの話が出てきて,批評や科学,モダンとポスト・モダン,その上で芸術の役割などの大きな話が展開し,いまいちついていけない。しまいには,批評というものの多くが芸術を駄目にするみたいな議論もあり,本書そのものの意義を無にしてしまうような記述もあったり。まあ,でも批評ってのはこれくらい自由であっていいと思うし,リヒターについての解釈も学ぶことがけっこうありました。

  • 表現の原子0
    音の粒子1 グレン・グールド
    言葉の粒子2 トマス・ベルンハルト
    イメージの粒子3 ゲルハルト・リヒター
    絶望のマシーン4
    あとがき
    (目次より)

  • 絶望マシーン。

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著者プロフィール

1957年生まれ。名古屋大学理学部物理学科卒。素粒子物理学専攻。東京工業大学像情報工学研究施設に研究員として2年間在籍。コンピュータ・ヴィジョンの研究に従事。科学哲学、人工知能、美学に関する評論活動。著書『メカノ──美学の機械、科学の機械』『ノード──反電子主義の美学』(いずれも青弓社)。

「年 『メカノ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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