ユリシーズの涙

  • みすず書房
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本棚登録 : 51
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622045298

作品紹介・あらすじ

愛犬と過ごした日々の回想、文学の内外にいる犬たちのアネクドーツを織りなした43の断章からなるエッセー。人生を知りつくした短篇の名手による愛犬家と厭犬家のための本。

感想・レビュー・書評

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  • 「愛犬家と厭犬家に向けた好著」らしいが、私には向かない。

    43のエッセイが収録されているが、出てくる人、場所、本などはほとんどわからない。たまに心に残る文章もあるが、そこにたどり着くための苦痛はかなり大きい。また、差別的な表現もあり残念だ。

  • 2000-12-00/one of the best dog stories

  • ユリシーズが誰にも分からぬように乞食に身をやつして故国に戻ったとき、愛犬アルゴスだけは主人を認める。しかし、肥料用の牛糞の中に見捨てられていたシラミだらけの老犬は尾を振るばかりで近づく力さえなくしていた。さしもの英雄ユリシーズもその姿を見て涙したという。書名の由来だが、犬という生き物と人間との関わりの深さを象徴してあまりある。ユリシーズは著者の愛犬の名でもある。その愛犬にまつわる話と、古今東西の文学の中に現れる犬についての逸話が集められた短編集。著者の文学に関する知識は広く、日本に限っても谷崎、漱石はおろか馬琴の『南総里見八犬伝』にまで話は及ぶ。愛犬家もいればそうでない人もいる。文学者としての評価はさておくとして、トーマス・マンの犬に対する無神経さや、R・L・スティーブンソンの驢馬(犬ではない)に対する無慈悲な態度には動物好きでなくても義憤を感じずにいられないだろう。一方、大の犬好きとして知られているフロイトは、晩年顎を癌に冒されていたが、愛犬のチャウチャウ犬ルーンは、その悪臭におびえ部屋の隅にうずくまったままだったという。愛犬によって自分の死期を知らされる思いはいかばかりのものであったろうか。一つ一つの話は単なる逸話にとどまらず、人間と犬についての深い考察が試みられている。犬好きでなくとも楽しめること請け合いである。

  • ちょっと読んでみようかな、と思わせることのできる本の紹介、について考える。

    こういう本のことだね。

    著者が強烈に犬好きだったのはもちろん窺えるのだが、それと同時に、犬を喪った経験がある、ということも強烈に感じられる。

    それでもなお、犬は犬でいてくれないと困るのである。

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著者プロフィール

Roger Grenier(1919-2017)
フランスの小説家、ジャーナリスト、放送作家、編集者。
ノルマンディ地方のカーンに生まれ、フランス南西部のポーで育つ。大戦中はレジスタンス活動に関わり、戦後アルベール・カミュに誘われて「コンバ」紙の記者としてジャーナリストのキャリアをスタート。その後、ラジオの放送作家などを経て、1963年よりパリの老舗出版社ガリマールの編集委員を半世紀以上務めた。1972年、長篇『シネロマン』でフェミナ賞受賞。1985年にはそれまでの作品全体に対してアカデミー・フランセーズ文学大賞が授与された。刊行したタイトルは50以上あり、とりわけ短篇の名手として定評がある。邦訳は『編集室』『別離のとき』(ともに短篇集)、『黒いピエロ』(長篇)、『ユリシーズの涙』『写真の秘密』(ともにエッセイ)など。亡くなる直前までほぼ毎日ガリマール社内のオフィスで原稿に向かっていたが、2017年、98歳でこの世を去る。本書は生前最後の短篇集。

「2023年 『長い物語のためのいくつかの短いお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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