フラゴナールの婚約者

  • みすず書房
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本棚登録 : 42
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622046486

作品紹介・あらすじ

現代フランス屈指の小説家による短篇傑作選。チェーホフ、フィッツジェラルドの世界に通う、苦くて可笑しい20の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「おーい!この本、最高に面白いぞー!」と
    叫びたくなるほどの、本!

    20編をおさめた短編集

    「乗換え」

    高等小学校の生徒監督の仕事につき、
    勤務地へ向かう電車に乗っている青年
    その車両で出会った見た目はエレガント、
    自称(?)陸軍大佐の男に、
    目的地を変え、自分と一緒にニースへ
    行かないかと誘われ…

    その人の意のままにそわないと言う理由で、
    恐ろしいほど傷つけられる、
    気付かずにいたけれど、
    なんだか自分がちっぽけな話のわからぬろくでなしであったか?
    と思わされる、ということは
    よく、とは言わないがたまにある。

    「視学局」

    これは「乗換え」の青年パスカル君がなんとかニース男を
    振り切って、着任したお話。

    校長の留守中に突然学区長が現れ、
    留守番をしていたパスカル君は…

    その他、

    少年をだしにするお父さんに笑ってしまった「プラリーヌ」

    会えなくなって、時間がたてばたつほど、
    その人が好きだったということがしみじみわかってくる…、「ベルト」

    出張の折り、昔愛した人の面影を探す…、「ウィーン」

    変てこな犬を飼う、超変てこな人との交流、「アルルカンの誘拐」

    「ノルマンディー」、他人に理想をみてしまう主人公、
    なんだか身につまされてしまったなあ。

    「フラゴナールの婚約者」
    別れた妻の、妹。
    かわいかった彼女は旦那に銃で頭を撃たれ、言葉を発せなくなっていて…
    二人はたまに会い、史蹟めぐりをする…。

    知らなかったなあ、ロジェ・グルニエ、素晴らしい。
    山田稔さんの訳も上手い、と言う気がする
    (フランス語、わからないけれど)

    知らなかったから、まだまだ読んでないグルニエ作品がある、
    と言うのが、なんとも嬉しい!

  • グルニエの短編集。グルニエの作品は初めて読んだが、最初から文学的インパクトがあった。気に入るフレーズも多かった。また、引用のセンスがいいと思う。好きだった作品は、「第六の戒律」、「春から夏へ」、「ウィーン」、「アルルカンの誘拐」、「三たびの夏」、そして表題作の「フラゴナールの婚約者」。(2011/11/12読了)

  • 諦めるというより人生と折り合いをつける、そして愛する。その境地でなおも純粋であることの価値を知ることができる物語。

  •  ふと、この 『フラゴナールの婚約者』 (みすず書房) を
     読み返したいと思いました。

     フランスの作家、ロジェ・グルニエさんの短篇集です。
     手元にありません。
     引っ越しなどにまぎれて、どこかに行ってしまった本です。

     最初に出合ったのは、刊行間もない、8年か9年前です。
     ちょうど、高橋源一郎さんの本を編集しているときです。

     高橋さん宅に打ち合わせで行くと、
     高橋さんの本棚にも1冊、見つけました。
     ちょっと珍しい、濃いオレンジ色のカバーなので、
     すぐに目につきます。

     「『フラゴナール……』、いいですよね」(わたくし)
     「うん、いーよねー」(高橋さん)

     2人とも、そのまましばらく、黙り込んでしまいました。
     2人とも、それぞれの読後感を味わっています。
     少なくとも、わたくしには、そう思えました。

     こうした出合いのころのことを思い出していたら、
     また、どうしても、すぐに会いたくなります。

     行方不明になった、この旧知の友を、本棚に探します。
     やっぱり……いません。

     音信不通の人間の友達を探すのは、大変な作業ですが、
     幸い、本の場合は、本屋さんを巡れば、
     再び出合うこともできるのです。

     何軒目かで、再会しました。
     あの、濃いオレンジのカバーです。

     手に取って、カバーをなでてみます。
     この手触りです。

     外見だけではない。
     版面 (はんづら)も美しい。
     そういえば、この版面をまねて、
     文芸書を編集したこともありました。

     実際に読み始めて、驚きました。
     最初に出合ったときとは、
     お話の中身が、まるで違っているのです。
     姿形はまったく同じなのに、8年か9年で、
     こんなにも中身が変わるものなのだろうか。

     旧友は、わたくしが知らぬうちに成長を遂げていたのです。

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著者プロフィール

Roger Grenier(1919-2017)
フランスの小説家、ジャーナリスト、放送作家、編集者。
ノルマンディ地方のカーンに生まれ、フランス南西部のポーで育つ。大戦中はレジスタンス活動に関わり、戦後アルベール・カミュに誘われて「コンバ」紙の記者としてジャーナリストのキャリアをスタート。その後、ラジオの放送作家などを経て、1963年よりパリの老舗出版社ガリマールの編集委員を半世紀以上務めた。1972年、長篇『シネロマン』でフェミナ賞受賞。1985年にはそれまでの作品全体に対してアカデミー・フランセーズ文学大賞が授与された。刊行したタイトルは50以上あり、とりわけ短篇の名手として定評がある。邦訳は『編集室』『別離のとき』(ともに短篇集)、『黒いピエロ』(長篇)、『ユリシーズの涙』『写真の秘密』(ともにエッセイ)など。亡くなる直前までほぼ毎日ガリマール社内のオフィスで原稿に向かっていたが、2017年、98歳でこの世を去る。本書は生前最後の短篇集。

「2023年 『長い物語のためのいくつかの短いお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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