エラスムスの勝利と悲劇 (ツヴァイク伝記文学コレクション 6)

  • みすず書房 (1998年1月1日発売)
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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784622046660

感想・レビュー・書評

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  • 表題作のみ読んだ。エラスムスというよりツヴァイクの思想を知るのに役立ちそうな本である。

    面白いし読ませる力があるが、ルターがあまりに悪魔的に描かれており、エラスムスとの対立構造がかなり強調されている。
    かといってエラスムスが英雄的に描かれているというわけでもない。(もともとエラスムスに英雄的な気質はないのだが)
    この本は、エラスムス=ツヴァイク、ルター=WW2下における狂信の全て(ナチ、反ナチ、ソ連etc)への重ね合わせの意味合いが強い。

    彼が言いたかったのは、エラスムスないしはヒューマニズム、そしてツヴァイク自身の中立精神が現実の暴力や分断の前にはあまりに無力であるということ、しかしその宿命的な「敗北」こそを賛歌しようではないかということである。
    発行当時はこの本がツヴァイク自身の非行動の弁護であるとして、かなり叩かれたようである。
    本作には解説がついていないので、あわせて「シュテファン・ツヴァイク『ロッテルダムのエラスムスの勝利と悲劇』試論」(杉山有紀子)などを軽く見ておくと良さそうである。
     
    エラスムスが『痴愚神礼讃』を書いた理由の解釈が独特で面白い。人間に備わる健康的な「痴愚」をエラスムスが礼賛したのは、このあまりに冷静すぎる文人が、心の奥底で自分の痴愚の欠如に悩み、人々の「痴愚」に憧れたことの表れだという。
    そうだろうか....?という気持にならなくもない解釈だが、斬新で面白い。しかしこの解釈からわかるのはエラスムス本人よりツヴァイクという人の思考回路であろう。

  •  
    ── ツヴァイク/内垣 啓一・猿田 悳・藤本 淳雄・訳
    《エラスムスの勝利と悲劇 19981101 みすず書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4622046660
     
     ツワイク≒ツヴァイク伝記文学コレクション 6
     ルネッサンス期最大の人文主義者の評伝 a049 D071 #0299 No.212
     
     Erasmus Roterodamus, 14661027 Rozenburg  15360712 70 /Desiderius 司祭
     Zweig, Stefan  評論 18811128 Wien Brazil 19420222 60 /ユダヤ系作家 No.208
     
    (20201027)(20210409)
     

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著者プロフィール

シュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig 1881–1942) 
1881年ウィーンのユダヤ系の裕福な家庭に生まれる。ウィーン大学で学びつつ、作家として活動を始める。第一次世界大戦中はロマン・ロランとともに反戦活動を展開。戦後は伝記小説等で人気を博しながら、ヨーロッパの人々の連帯を説く。ヒトラー政権の樹立後、ロンドンに亡命し、さらにアメリカ、ブラジルへと転居。1942年2月22日、妻とともに自殺。亡命下で執筆された自伝『昨日の世界』と、死の直前に完成された『チェス奇譚』(本作)が死後に刊行された。

「2021年 『過去への旅 チェス奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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