一日の終わりの詩集

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622047155

感想・レビュー・書評

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  • 真夜中の、時が今日から明日へ一歩踏み出したとき、または今日が昨日に変わった瞬間に、あたたかい飲み物ともに手に取りたい1冊の詩集。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    「いま、ここに在ること」「マイ・オールドメン」「一日の終わりの詩」という3章からなる、詩人・長田弘(おさだひろし)さんによる詩集です。
    表紙とタイトルだけ見ると、70年代の画家による絵画集のようにも見えます。

    そんな昭和感もある表紙でありながら、なかの詩たちはまさに「いま」を感じられるものが多かったです。
    「マイ・オールドメン」の章は、正直、内容が難しい詩だな、と思うものばかりだったものの、「いま、ここに在ること」「一日の終わりの詩」は、「あ、この“感覚”、なんだかじんわりするな、好きだな」と思う詩でした。

    言葉にしなければ思いは人には伝わらないけれど、その言葉を生むためには、自分の思いや感じる力がなくてはいけません。
    思いや感じる力があり、それを伝えたくて考えた末に言葉ができたのではないか、と思います。
    この詩集には、「感じるための言葉」があふれています。
    真夜中の、時が今日から明日へ一歩踏み出したとき、または今日が昨日に変わった瞬間に、あたたかい飲み物ともに手に取りたい。
    そして、自分のなかにあふれる想いや言葉を、じんわりと自分に溶かしこみながら読みたい、そんな1冊です。

  • 2000年という二十世紀という長い一日の終わりに編まれた詩集だそうです。

    「間違い」という詩が印象に残りました。
    (前略)
    いつかはきっと
    いつかはきっとと思いつづける
    それがきみの冒した間違いだった
    いつかはない
    いつかはこない
    いつかはなかった
    人生は間違いである
    ある晴れた日の夕まぐれ
    不意にその思いに襲われて
    薄闇のなかに立ちつくすまでの
    途方もない時間が一人の人生である

    ひとの一日はどんな時間でできているか?

    泣ける詩です。
    一日の終わりというより、非常に残酷な人生の終わりのようだと思いました。

  • なんだか詩を読んでいることが恥ずかしいかなと今まで思っていたけれど、初めて買ってもらった詩集がこの本でよかった。
    問題集の中に出てきた、言葉、という詩に惹かれた。今まで心に積んできた気持ちが初めて名前をつけてもらった気がして、心を動かされた。

  • (2022/3/18読了)
    ブグログにUPされてる「まことさん」さんの文庫本の感想を読んで、興味が湧いて借りてみました。
    その感想は、文庫本だったけど、私は単行本。
    詩集で、80ページにも満たない本なのに、なかなか読み進まない。私の読解力が足りないのです。さらにこのところの忙しなさ。字の如く、心を亡くしているようです。
    生死に係る文章。ひとつずつの詩より、その中のフレーズにいきなり心が反応します。
    友人が死んだ日から生やしはじめた髭
    いつかきっと → いつかはない、いつかはこない、いつかはなかった
    こんにちは、と言う。ありがとう、と言う。結局人生で言えることはそれだけだ。
    幸福つまり幸せであると言うが、それもちがうネ。幸福は、じつは福である。…中略…忌憚なく言えば、愛です。
    人は死ぬ。赤ん坊が生まれる。ひとの歴史は、それだけだ。そうやって、この百年が過ぎてゆくのだ。何事もなかったように。

    そんな中『意味と無意味』には、自分以外にもこんな考え方の人がいることに驚きました。
    自分のために、全文記しておきます。
    (もし、ダメなことなら教えてください。消します。)

    うつくしいものはみにくい
    慕わしいものは疎ましい
    真剣なものはふざけたものだ
    確かなものあるべきものはない
    何でもあるしかし何もない
    必要なのは不必要なものだ

    くだらないものはすばらしい
    すばらしいものはくだらない
    もっとも賢いものはもっとも愚かなものだ
    どんな出鱈目もけっして出鱈目ではない
    本当のことこそ本当のことだ
    必要なものは不必要なものだ

    正しさは間違いだ間違いが正しい
    間違いをおかさぬものは誤たない
    誤たぬものは悲しまない悲しまないものは
    笑わない笑わないものは笑うものを憎む
    憎むものは憎むことを憎むことができない
    必要なのは不必要なものだ

    意味に意味はない何も語らないために
    語り何も学ばないためにまなぶ
    読むとは読まない聴くとは
    聴かないこと知っているとは
    何一つ知らないということだ
    必要なのは不必要なものだ

    われわれ自身をわれわれは信じていない
    われわれが得たもの得るだろうものは
    すべて失ったもの失うだろうものだ
    あなたは誰? ではない問わるべきは
    誰があなたなのか? ということだ
    必要なのは不必要なものだ

    結ぶ言葉はない初めからなかった
    大きな松の木の枝の一つずつに
    百羽のカラスが飛んできて
    百の黒い影をつくった
    青空にほかならない
    無 のなかに

  • 読了。
    初めて詩集というものを読みました。
    詩って、いいですね...

    時間をかけて言葉に触れられる。

    とてもいい言葉たちに出会えました。


    感情は信じられないが
    感覚は裏切らないとおもう

    沈黙ということば

    ことばという、勇気


    ことばを大切にしていきたい

    そう思える本でした。

    長田弘さん
    こんなにことばを大切にされる方なんですね。
    長田さんの本をこれからも読み続けたいと思います。

    #一日の終わりの詩集
    #長田弘
    #みすず書房

  • 一日の終わりに読んで心穏やかになるような詩集かと思ったら、一生の終わりに人生を振り返るような作品だった。

  • 長田弘さんの詩は、陽だまりのようだなと思う。冬の晴れた日、冷たいけれど澄んだ空気の中で浴びる、あたたかなひかり。表と裏が決して離れることのできない存在であるように、正しさと間違い、真実と嘘もそうなのであって、冷たさとあたたかさを共有する彼の詩もまたそうなのだと思う。
    その相反を、受け入れるでも、抗うでもなく、ただそこに在ると知る。

  • よろこびを書こうとして、かなしみを発見する。かなしみを書こうとして、よろこびを発見する。詩とよばれるのは、書くということの、そのような反作用に、本質的にささえられていることばなのだと思う。
    人生ということばが、切実なことばとして感受されるようになって思い知ったことは、瞬間でもない、永劫でもない、過去でもない、一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ、ということだった。
    一日を生きるのに、詩はこれからも必要なことばでありうるだろうか。
    (長田弘『一日の終わりの詩集』2000年)

    「愛する」(いま、ここに在ること)
    「鴎外とサフラン」(マイ・オールドメン)
    「午後の透明さについて」(一日の終わりの詩集)
    「新聞を読む人」(同)
    「意味と無意味」(同)

  • 一つの言葉から放たれる、ひっそりとしながらも芯の太い穏やかな灯りに、一人自問自答しながら読み進める。本作は確認作業に似ている。一日の、一年の、あるいは今までの自分の生に対する確認。どうしても流れがちな日々の暮らしの中へ投入される問いかけ。
    「一人の私は何でできているか?」
    「ひとの一日はどんな時間でできているか?」
    「一人の言葉は何でできているか?」
    「一人の魂はどんな言葉でつくられているか?」
    私は答えに躓く。

  • 長田弘さんの言葉は全て美しい…
    どの題の詩だったか、激情は言葉を美しくしない…といった事が書かれていて納得。
    思ってる以上の事、口走っちゃうことあるんだよなぁ。
    静かに1人で読みたい本。
    長田弘さんは言葉にしたら色が褪せてしまうものをとても大切にしている。
    それが伝わってくるから、そういう感覚を読んでて思い出して落ち着いたいい気持ちになる。
    おばあちゃんになって、色んな感情を持ったらもっともっとしみじみ感じられるような気がする。
    そんな温かい詩でした。

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著者プロフィール

長田弘(おさだ・ひろし)
1939年、福島県福島市生まれ。早稲田大学第一文学部独文専修卒業。詩人。65年、詩集『われら新鮮な旅人』でデビュー。98年『記憶のつくり方』で桑原武夫学芸賞、2009年『幸いなるかな本を読む人』で詩歌文学館賞、10年『世界はうつくしいと』で三好達治賞、14年『奇跡―ミラクル―』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。また、詩のみならずエッセイ、評論、翻訳、児童文学等の分野においても幅広く活躍し、1982年エッセイ集『私の二十世紀書店』で毎日出版文化賞、2000年『森の絵本』で講談社出版文化賞を受賞。15年5月3日、逝去。

「2022年 『すべてきみに宛てた手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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