- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622048015
作品紹介・あらすじ
「教えてほしいの。シモンのことがどうも腑に落ちなくて。あなたは私なんかよりも古くからの知り合いでしょ。どうしてあんな風になったのか、ぜひ教えてほしいのよ」名門出のシモンは、何故すべてを投げ出して姿を消してしまったのか。その挫折の原因を、ルネは女友達のローリスとともに探索する。街路樹の木蔭の小暗い部屋に閉じこもり、六月の長い長い一日をかけて…。二人がすでに六十代に入っている現在と、戦中・戦後のさまざまな過去との間を時間は行き来する。幾重にも重なる時間のひだの奥から、シモンとそのまわりの男女が姿を現わし、消えて行く。いかにもグルニエ的なこの小説は、日本において戦後民主主義高揚期の解放気分とその後の幻滅を味わった世代に共通する物語=歴史でもあるだろう。
感想・レビュー・書評
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深い哀愁。何かに手が届きそうだったのに、何にもなれなかった人たちの物語。普通、平凡、何もない人生の居た堪れなさと諦めが身にしみる。ルネは他人に期待し過ぎたのかも知れない。余りにリアルで誰の人生にも起こり得る手触りのある虚さは嫌いじゃない。
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ミステリアスな雰囲気。
移り気なシモンと、紫の女ヴィオレッタ。
二人はとても似ている気がする。
人を惹き付ける存在であるのに、本人たちはいつも孤独だ。
過去を振り返るようになると、人は時の流れを流れる漂流物みたいに思えてくる。
大江健三郎さんの「日常生活の冒険」をちょっと思い出した。 -
昔の友人のことを回想していく男女の物語で、大きな出来事や、大きな感情の高まりがあるわけじゃないけど(あえて避けているようにもみえる)、文章や翻訳と共にシンプルに感じて好きだった。