本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (482ページ) / ISBN・EAN: 9784622049128
感想・レビュー・書評
-
なぜこの狼狽、この混乱が生まれたのか。
(人々はなぜ難しい顔をしているのか)
なぜ通りも広場も早々と人がいなくなって
誰もがふぬけたように家に戻ってしまったのか。
夜のとばりが降りたのに、蛮族がやってこないからか。
たった今国境から戻った一部の兵士がいう、
蛮族はどこにもいない、と。
蛮族がいなくなれば、これからどうすればいいのだろう。
彼らは問題を解決してしまった民族なのだ。
1898年に書かれた彼の詩「蛮族を待ちながら」の一節。
古代都市の人々が皇帝に率いられながら門の外に出て、
征服された蛮族が到着するのを待つシーンにて。
簡潔だけど、暗示を含んだ文体で描いているのが素晴らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ギリシャを舞台に展開される詩の世界は硬質で、こちらをたじろがせる。中井久夫という知性の塊が翻訳したからなのか、詩の内容は平たいながらなかなか重厚で読み応えあり。池澤夏樹はカヴァフィスを意識して詩を書いたというが、確かに池澤の詩とカヴァフィスは似ているなと思わされた。寡黙な詩人が漏らす禁欲的な呟きを書き留めた、という佇まいが似ているなと思ったのだ。これは是非池澤訳も読んでみたいと思った次第。甘ったるい恋愛詩ばかりではなく、喧しいアジテーションでもなく、上品に綴られたスケッチがここにあるな、といった印象を抱く
著者プロフィール
中井久夫の作品
本棚登録 :
感想 :
