カヴァフィス全詩集[新装版]

  • みすず書房 (1997年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (482ページ) / ISBN・EAN: 9784622049128

感想・レビュー・書評

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  •  なぜこの狼狽、この混乱が生まれたのか。
     (人々はなぜ難しい顔をしているのか)
     なぜ通りも広場も早々と人がいなくなって
     誰もがふぬけたように家に戻ってしまったのか。
     夜のとばりが降りたのに、蛮族がやってこないからか。
     たった今国境から戻った一部の兵士がいう、
     蛮族はどこにもいない、と。
     蛮族がいなくなれば、これからどうすればいいのだろう。
     彼らは問題を解決してしまった民族なのだ。

    1898年に書かれた彼の詩「蛮族を待ちながら」の一節。
    古代都市の人々が皇帝に率いられながら門の外に出て、
    征服された蛮族が到着するのを待つシーンにて。

    簡潔だけど、暗示を含んだ文体で描いているのが素晴らしい。

  • ギリシャを舞台に展開される詩の世界は硬質で、こちらをたじろがせる。中井久夫という知性の塊が翻訳したからなのか、詩の内容は平たいながらなかなか重厚で読み応えあり。池澤夏樹はカヴァフィスを意識して詩を書いたというが、確かに池澤の詩とカヴァフィスは似ているなと思わされた。寡黙な詩人が漏らす禁欲的な呟きを書き留めた、という佇まいが似ているなと思ったのだ。これは是非池澤訳も読んでみたいと思った次第。甘ったるい恋愛詩ばかりではなく、喧しいアジテーションでもなく、上品に綴られたスケッチがここにあるな、といった印象を抱く

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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