ジャン=ジャック・ルソー問題 (みすずライブラリー)

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (110ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622050216

作品紹介・あらすじ

人が近代について考える時、ルソーの存在はつねに新しく、つねに重要な「問題」として発現してくる。安易な一般化を許さぬ、逆説にみちた近代思想の父・ルソーの生き生きとした「精神の運動」の内部へ深く沈潜することにより、独自・鮮明なルソー像を描出した、カッシーラーによるルソー解読のための先駆的・基本的著作。

感想・レビュー・書評

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  • 感情の重要性。しかし単なる感情の強調ではなくその先の意志の重要性の認識。

  • エルンスト・カッシーラーによる、ルソー思想の根本を探求する試み。叙述それ自体はさほど長くないが、ルソーの自然主義的傾向(人間の「自然」を重んじる態度)と理想主義的傾向(革新的社会建設の呼びかけ)を統一的な視座で理解することができるか、できるとすればいかなる視座か、これがルソー問題の根本である。カッシーラーは、カントの実践哲学に引き付けつつ、ルソーが根本的に人間の「意志」にこそ全ての可能性を見いだしたのだとする。時に『エミール』のルソーと『社会契約論』のルソーの分裂が語られるが、カッシーラーのこうした解明に基づけば、それは解消不可能な分裂ではないと理解できる。感情と理性を自発的意志のもとに統合することこそ、ルソーが提起した根本的問題であったと言えよう。その意味で、ルソー問題はいまだ立ち返られるべき問題として在る。そうしたことを、この著作は教えてくれる。

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著者プロフィール

(Ernst Cassirer)
ドイツの哲学者。1874年ブレスラウ(現ポーランド)に生まれる。H.コーヘンに学び、マールブルク学派の一員として研究生活を始める。近代哲学と科学の関係を歴史的・論理的に考察した『近代の哲学と科学における認識の問題』(1906–20)で広く知られるようになり、『実体概念と関数概念』(1910)で科学における概念形成の変遷を論じる。また、ヴァールブルク文庫の、民族学・言語学・比較神話学・比較宗教学の膨大な資料に触れ、しだいにカント主義の枠を脱し『シンボル形式の哲学』(1925–29)という文化一般の体系的哲学を構築する。1929年ハンブルク大学総長に就任するが、33年ナチスの台頭とともに亡命を余儀なくされ、オックスフォード大学、ついでスウェーデンのイェーテボリ大学教授を経て、1941年アメリカのイェール大学に招聘されるなど活躍したが、1945年急逝した。

「2017年 『シンボル・技術・言語 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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