史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622070818

作品紹介・あらすじ

少なく見積もっても2500万人以上の死者を出したといわれる、1918‐1919年のインフルエンザ(通称「スペインかぜ」)。本書は社会・政治・医学史にまたがるこの史上最大規模の疫禍の全貌を初めて明らかにした感染症学・疫病史研究の必読書であり、アメリカでは1976年から現在まで版を重ね続けている。この中で著者は、世界情勢と流行拡大の関連のようなマクロな事象から一兵卒の病床の様子まで、当時の記録を丹念に掘り起こす。特に大都市での流行(第六章、第七章に詳説)が「グランギニョール的カオス」に至る様は、読者のこの病への畏怖を新たにさせずにはいられない。しかしインフルエンザの真の恐ろしさは、罹患者数の莫大さによって実はけっして少なくない死者数が覆い隠され、「みんなが罹り誰も死なない」病として軽んじられることにあると著者は警告する。もしウイルスが例年以上に感染力や毒性の激烈なものへと悪性化したら?実際、インフルエンザのパンデミック(汎世界的大流行)は大震災に似て、人類の歴史上数十年の間隔を置いて繰り返しているという。来るべきパンデミックに備え、改めて史上最悪のインフルエンザの記憶をたどり、社会あるいは個人レベルの危機管理の問題点を洗い直すために本書は欠かせない。

感想・レビュー・書評

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  • れはフィラデルフィアで始まった。空気感染し、死者から2次死者…N次と毒性を強め、各地に感染被害の猛火が飛び火、若年に死亡率高かった/折しも世界大戦の西部戦線は膠着した塹壕の消耗戦でアメリカの参戦だけが状況打開の途、世論は好戦的だったが’16年の大統領選「戦争はしない」公約でウィルソン大統領は僅差で再選/ドイツは不干渉を見込んで無差別潜水艦攻撃/参戦の決断。正義のためだ!キャンペーン/米軍営内とヨーロッパに感染をもちこみ戦闘死の何十倍の死者/当時は濾過透過性病原体を分離も不可能、ワクチン製造の術はなかったが、快復者から採った血清は治癒の能力があることは知られていた。実は大正天皇も罹患者で、血清療法で回復したという。

  • 2021年7月期展示本です。
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  • ふむ

  • 100年前のパンデミック
    1918年から1919年にかけて広がったインフルエンザの大流行はスパニッシュインフルエンザ(スペイン風邪)と呼ばれる。本書はアメリカから見たパンデミックの様子を描き、分析している。
    スパニッシュインフルエンザの拡大は、第一次世界大戦のさなかであったため、すぐには公にされなかった。中立国であるスペインに上陸してようやく情報が発信され、その名が付いた。スペインが発生源ではないし、突出して被害が大きかったわけでもない。
    コロナ禍の現在、本書を読むと100年前のパンデミックが遠い過去の災いとは思えない。ウィルスに対して、人間という生き物がこんなにも弱いものだったのだと思いしらされる。人とウィルスの戦いは終わっていなかったと知る。

    インフルエンザウィルスによる感染症に弱いのは幼児や高齢者である。スパニッシュインフルエンザは驚くべきことに、健康で丈夫なはずの若者がもっとも多く命を落とした。未知のウィルスは、誰を狙うのかわからないのだから恐ろしい。現在感染が広がっている新型コロナは不安を煽りすぎだったと批判する声もあるが、あのときは正体がわからなかったからあの対応でよかったんだと、読むとよく分かる。

    当時アメリカでは戦争を優先するため、スパニッシュインフルエンザを「みんなが罹り誰も死なない」病気として軽んじられたという。愛国心を盛り上げるため大々的にパレードなどをして大騒ぎをした。それが優先されるべき事だったとは思えないが、何を優先するかはとても難しい判断ではある。人の動きを止め病気を完全に押さえ込むか、他のことを優先するか。もっとも大切なのは正しく恐れることだといわれる。社会に恐怖が広がるとゼロリスクを求める風潮につながり危険だ。例えばコロナ警察はやりすぎ。冷静に見極めるのが重要だとわかるので本書をおすすめしたい。

  • 第三部第七章サンフランシスコのマスク着用条例から反マスク同盟のあたり、非常に興味深く読んだ。

  •  1918年頃に世界で猛威を振るったスペイン風邪(スパニッシュ・インフルエンザ)に迫る。

     本が出たのはだいぶ前なのだが、コロナ禍の今、非常に読む価値ある一冊。
     スペイン風邪と呼ばれるのは第一次大戦にスペインが参戦せず素直に感染者数を公表していたからだ。なぜこんな昔に世界的に大流行したのかと疑問だったが、パンデミックに気づきながら戦争を優先し人の移動を止めなかった為に世界的なパンデミックに発展してしまう。
     サンフランシスコではマスクが予防に効果ありと気づいてマスクの着用を法制化した。感染が弱まった後は反マスク運動も起きた。今起きてることのほとんどは100年前に起きていたのだ。
     興味深いのは感染症の被害は場所によって違うということだ。普段人の出入りが少なく外からの菌にさらされてない地域はいざ入られてしまうと感染症の被害が甚大になる。今回のコロナが欧米で被害が大きく東アジアで被害が小さいのは元々のコロナとの距離に寄るものが大きいのではないかと勝手に考えた。

     終章では人々がスペイン風邪を忘却した件についてふれている。私達は100年前から多くのことを学べるはずだ。

  • 1

  • 半分くらいまでは読んだけど、その段階でふと”これ、ずっと同じような調子がこの後最後まで続くんちゃうの?”と思ってしまった… そして実際、そんな考えが頭を掠めて以降、しばらくは頑張って読み進めてみたんだけど、やっぱり都市と時間を変えて、様々な地域で起こった、同様の出来事の繰り返し。さすがに得られるものはもう無いな、と思って止めました。基本的にパンデミックの構造は似通っていて、行政の動きの遅さに始まり、人々の認識の甘さがそれに輪をかけて、気付いたときには時既に…みたいな感じ。で、いざ対策をってなると、マンパワーやインフラの不足に悩まされる、という。色んな場面で耳にし目にするけど、いざ自分がその立場におかれると、やっぱりパニクってしまうんですわな。改めて身につまされたし、それだけでも読んだ価値はあろうってもの。

  • 高校生の頃に

  • スペイン風邪コワい!そして何度も繰り返すパンデミック・・・実際の出来事を書いているのでかなり描写がエグイところもありました。

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