雨過ぎて雲破れるところ

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622073208

作品紹介・あらすじ

「われわれはよぼよぼの老人になっても山小屋で遊びたい」-地域社会とともに育まれ、世代や職種を超え人々が参加する詩人のコミューン。珠玉のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生の頃からユースホステル(YH)を使った旅をしていまして
    最初はサイクリングツアーの宿泊手段だったのですが
    やがてYHに泊まること自体が目的になってきました
    ワタクシ、気に入った場所があると通いつめるタイプでして
    「行きつけのYH」というものができてきます
    周りから見ると、いわゆる「常連」ってやつですね

    当時のYHというのは多感な青春時代に利用して人と人が出会う場でもありますから
    泊まり合わせた者同士が意気投合し、連れ立って次の宿に向かったり(これはまともな旅人)
    連泊して一日中トランプ遊びに興じたりするのです(ワタクシはこっち?)

    落ち着いて考えたらちょっと変わった人間関係かもしれません
    住んでいる所もバラバラで、本名も知らずにニックネームで呼び合って
    それでも一致団結してYHのイベントなんかを盛り上げてしまうんですね
    全国から集まってきて毎年運動会をやっているYHもありましたっけ

    ワタクシはよく「一匹狼の群れ」と呼んでいましたが
    一人旅を愛する人ほど、反面では人恋しいのかもしれません

    で、このホステラー(YH利用者のことです)のチカラを
    地元の人たちと融合させて何かできないものか
    そんなことを考えていた時期がありました。社会学を学んでいた大学生の頃ですね
    ペアレント(YH経営者)はその地で生活している人ですから
    当然地元とのかかわりを持っています
    だからペアレントを媒介して、各地からやってきた人と地元の人が
    一緒になって何かをやるイベントやコミュニティというものが
    あったらいいなと思ったものですが
    実際にはなかなかペアレントが呼びかけてできるようなものではなかったようです

    まぁ今でこそグリーンツーリズムだとか体験型旅行なんて言われて
    いろんな企画が行政面からも提案されていますが
    それもちょっとワタクシがイメージしている「自然な交流」とは
    違うような気がするんです

      その程度のことなら昔からやっているYHがありましたよ
      琵琶を弾く老人を紹介してもらって聴きに行ったり
      知り合いの牧場を見学させてもらったり

    で、いつしかそんなことをあまり考えなくなった折も折
    「こんど小室等さんとトークショーをやる佐々木幹郎さんって、どんな人なんだろう」
    そんな気持ちで読んでみたこの本に感動したのです

    この本を読んでいると、地元からも都会からも気軽に「山小屋」にやってきて
    みんなでコミュニティを作っているんですね
    それぞれの特技や個性が発揮され影響しあって、ひとつの文化が生まれようとしている
    何よりそれがこの本を読んで感動したことでした

    図書館にあった佐々木さんの著作の中で
    出版時期が一番新しかったという理由だけで選んだ本だったのですが (^^ゞ
    佐々木幹郎という人がどんな文章を書くのかということより
    こんな人たちがいるんだという発見が
    この本を読んでよかったなぁと思えることなのです

    http://todomatsu.com/archives/2007/09/27/post_1006.php
    http://todomatsu.com/archives/2010/11/26/post_2097.php

  •  広大な自然が広がる浅間山麓・群馬県嬬恋村に、20年来東京から通い続ける詩人。季節毎に綴られた「週末の山小屋生活」が1冊になった。「よぼよぼの老人になっても山小屋で遊びたい」。思いを同じくする仲間とセルフビルドで増築した「遊び空間」には、職業も世代も異なる人々が集い、リリカルなコミューンができていく。
     山小屋の名前は「アリス・ジャム」。毎夏、野生のすぐりやブルーベリーのジャムをみんなで手作りする。著者は1947年生まれ。親や過労で体を壊した弟の介護をする年齢にさしかかり、「私にとって、山小屋での遊びがこれまでいかに大事だったかを知った。仕事をしているだけではだめだ。仕事をしながら、どんなふうに遊びの空間を作るのか。私たちは実践の歴史を積み重ねてきたのだ」と語る。焚き火にあたり、風を感じながら、自称「山小屋バー」で仲間と傾ける杯。ベランダで開かれるコンサート。ネパール人の青年が青竹でブランコを築き、樽ランプを作る木工作家が現れる。「若者の周りに優れた大人が自然にいる」山小屋ならではの文化は、職人を目指す少年やハープを奏でる村の少女たちに継がれていく。「雨過天晴」とは、雨の後、最初に現れる空の青のこと。著者の一番好きな色だという。(S)

  • 詩人の週末の山小屋生活エッセイ。仲間と共に作った山小屋を拠点として、地域住民と訪問者である音楽家や詩人などのアーティストたちの交流が描かれる。都会生活と週末の自然を満喫する時間、人々との交流も素晴らしい山小屋生活は本当にうらやましい。「雨過天晴雲破処」の青い空から名づけられたタイトルどおりの気持ちよい本だ。

  • 山小屋の作り方の本だと思って手に取ったら、山小屋での暮らし方でした。それも焚き火料理の仕方や天候の読み方ではなく、世代単位の時間の流れの感じ方や、コミューンの作り方を学ぶ本。
    実際には著者が自分の経験を語っているだけ、ハウツー本ではありません。

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著者プロフィール

詩人。1947年奈良に生まれ大阪で育つ。同志社大学文学部哲学科中退。
ミシガン州立オークランド大学客員研究員、東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文芸非常勤講師を歴任。
詩集に『蜂蜜採り』(書肆山田、第22回高見順賞)、『明日』(思潮社、第20回萩原朔太郎賞)など。
評論・エッセイ集に『中原中也』(筑摩書房、第10回サントリー学芸賞)、『アジア海道紀行』(みすず書房、第54回読売文学賞)、『やわらかく、壊れる』(みすず書房)、『雨過ぎて雲破れるところ』(みすず書房)、『旅に溺れる』(岩波書店)、『瓦礫の下から唄が聴こえる』(みすず書房)、『東北を聴く―民謡の原点を訪ねて』『中原中也―沈黙の音楽』(ともに岩波新書)など。『新編中原中也全集』全6巻(角川書店)責任編集委員。
最新刊に、共著『大正=歴史の踊り場とは何か── 現代の起点を探る』(講談社選書メチエ)、詩集『鏡の上を走りながら』(思潮社)、英訳詩集『Sky Navigation Homeward』(Dedalus Press)。
第1回大岡信賞受賞。

「2020年 『猫には負ける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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