土星の徴しの下に

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622073239

作品紹介・あらすじ

ポール・グッドマン、アントナン・アルトー、レニ・リーフェンシュタール、ヴァルター・ベンヤミン、ハンス=ユルゲン・ジーバーベルク、ロラン・バルト、エリアス・カネッティ-この7名の人物と作品から、著者は何を読み取ろうとしたのか。1980年、ソンタグの最も充実した時期に刊行された秀逸な批評集。

感想・レビュー・書評

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  • ソンタグの評論を読むのは初めてだが、客観的になりきれないソンタグの感情の声に魅せられた。目当てのベンヤミン論よりレニ・リーフェンシュタールへの痛烈な分析に舌を巻いた。ナチスの映像作家だった汚辱のキャリアを翻すべき自然を謳歌する写真家としての後年の作品まで、一貫してファシズムの視線が根付いていることを看破する。それと照らし合わせてナチスのスタイルに演劇性を見出しシナリオを作り、性的エネルギーを喚起する現代社会の危険性をも切り込む。アルトー論は未読のアルトーをもう読まなくてもいいや、と思わせるほど面白かった。


    ポール・グッドマン、アントナン・アルトー、レニ・リーフェンシュタール、ヴァルター・ベンヤミン、ハンス=ユルゲン・ジーバーベルク、ロラン・バルト、エリアス・カネッティ。以上7名の人物と作品への批評集。

  • 文学
    思索

  • アルトー
    私の精神の綜体に裂け目がはいっている。
    書くとは沸騰する無定向の熱いエネルギーを放出することだ。
    肉体的感覚の複雑さ、激烈さと、神経組織からくる発作的直感とが、それらを言葉で言い表そうとする能力と、たえず衝突しているように思える。
    変身の儀式としての演劇、肉体と精神の二元的対立を超克しようとするグノーシス派、芸術と狂気、病、また人生と芸術の亀裂をも埋めようとする。現実と表層の統一。
    社会のなかでは狂気、沈黙、自殺となる。
    それは物品ではない、事件なのだ。極限状態における意識の地図。アルトーを流用することは不可能だ。取り込むことの不可能な声、存在。

    ベンヤミン
    土星(サトゥルヌス)、メランコリー。冷淡、優柔不断、緩慢。
    記憶とは自分を逆向きに読むこと。
    土星の徴しの下に生まれたものにとっては、時間とは束縛と無力の、反復と味気ない成就の媒体でしかない、時間の中にいる限り、人間はその時の自分でしかありえない。だが空間に於いては、別の人間になれる。
    メランコリー気質の人間と世界との深い交感は必ず(人間よりむしろ)ものを対象にして生ずるのであり、この真正の交感こそが意味を開示する。
    顕微鏡的な視線。
    麻痺状態にある無意味のものから意味を引き出すアレゴリー。
    アイロニーと自意識。


    写真
    現実を自分のものにすると同時に、それを対象となるものに変えてしまうカメラの二重の能力。
    1スペクタクル(大衆)として、2監視装置として現実を捉える。
    感情は言葉によるスローガンよりも、写真のまわりの方に結晶化しやすい。集合的な教示の機能。

    サド・マゾヒズムとは
    性が人格、人間関係、愛などから切り離されたとき、現れるものであった。主人と奴隷。ナチスのシンボルである黒・皮・美・エクスタシー・死との結合。

  • 外に顕れているもの=スタイルこそが思考であると主張してきた「反解釈」「ラディカルな意思のスタイル」の著者が、かつてスタイル美の極致と位置づけたリーフェンシュタールをそのスタイル至上主義故の倫理性の欠落を手厳しく批判した一文が、著者の一見変遷に見える一貫性を物語る。

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著者プロフィール

1933年生まれ。20世紀アメリカを代表する批評家・小説家。著書に『私は生まれなおしている』、『反解釈』、『写真論』、『火山に恋して』、『良心の領界』など。2004年没。

「2018年 『ラディカルな意志のスタイルズ[完全版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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