科学者心得帳――科学者の三つの責任とは

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 30
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622073277

作品紹介・あらすじ

いま科学はどうなっているのか?科学者はいかに考え、なにを為すべきか?原発の事故隠し・データ捏造からポスドク問題まで。若い人びとへの絶好の指針。

感想・レビュー・書評

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  • 『文献渉猟2007』より。

  • 【抜き書き】
    ・184頁
    “気をつけねばならないこともある。新自由主義が世界を席巻している現状において、倫理規範も変わり(変えられ)つつあることだ。例えば「自己責任」という言葉が流行している。これまでの、お上からお達しに従うとか、みんながそうするから自分もそうするとかの、他人まかせの人生から自分自身が己に責任を持った人生を送るという趣旨ならわかる。それは古典的倫理の範疇である。しかし最近は「公から民へ」という掛け声ですべてを市場原理に置き換え、それに乗り切らない人間を「自己責任に欠ける」として切り捨てるために使われるようになっている。格差社会も「自己責任」というわけだ。こうなると弱肉強食の論理を合理化するための「倫理」となってしまう。その意味で、倫理を個人レベルから組織や社会(企業や国家)レベルまで構造的に捉え直し、重層的な人間関係や社会的関係にまで拡大して論じなければならないことを痛感する”


    ・139~140頁。下記引用文に登場するフランクとは、ドイツから米国に渡った物理学者James Franck (1882- 1964)のこと。

    “ ここで、再び科学の二面性について二つの側面があることを指摘しておきたい。
     一つは、科学的には明確な結論が出て(白黒の決着が付いて)いる問題で、既に述べたように軍事用に使えるとともに民生用にも使えるという意味で二面性がある場合である。科学そのものは価値中立で、使いようによって人間の益にも害にもなるということだ。これには科学の知見が技術化された問題に多く、科学的な判断もしやすい。単純化して言えば、科学が悪用されるような事態に対してどう対応すべきか、という問題に帰する。
     ともすれば、科学そのものは価値中立なのだから科学者の責任範囲ではなく、社会が決めることだと考え勝ちになる。しかし、フランク報告が述べているのは、そのような言い訳は通用しないということである。科学の成果が社会に使われて悪用される危険性が認められるなら、科学者は専門家としてそれに対して意見を述べることが求められているのだ。私たち科学者は、科学は人間の幸福のために使われるべきだと考えているはずである。そのような原点に立って、専門家にしかわからないことであればよりいっそう、社会に情報を提供する義務があるのだ。”


    ・142頁。

     “私は、科学的に確証されていない段階でも、人間の健康や環境に害を及ぼす可能性のある問題に関しては、安全サイドに立った判断をすべきと考えている。いわゆる「予防措置原則」で、科学者として、どのような問題が引き起こされるかを想像し、それによって健康や環境に危害を与えると判断できた場合には予防的な手を打つよう勧告することである。その判断が正しかった場合はむろんのこと、間違っていても損害を少なく済ませることができる。科学者であればこそ、状況証拠からでも何が起りうるかについて論理的な判断が下せるはずである。そのような科学者としての知識を活かすべきなのではないか。”

  • 理科系の大学院生に向けての本ですが、大学生やこれから大学に入ろうかという人、その親も読んだ方がいいと思います。大学の今置かれている立場が判ります。 18歳人口が減り続け、大学の淘汰が進むでしょう。しかし教育、研究という分野は一朝一夕で成果が出るものではありません。また裾野が広くなければ高い山も出来ないのです。多くの人口や資源を持つ他国に互していくためには高い知性と感性で先を行くしかないと思います。なんか最近の制度改革は「百年の計」が無いように思われますが如何に?

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著者プロフィール

1944年兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。総合研究大学院大学名誉教授。名古屋大学名誉教授。宇宙物理学専攻。著書『親子で読もう 宇宙の歴史』(岩波書店)『お父さんが話してくれた宇宙の歴史1-4』(岩波書店)『科学者と戦争』(岩波新書)『科学者と軍事研究』(岩波新書)『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書)『これだけは読んでおきたい科学の10冊』(岩波ジュニア新書)『生きのびるための科学』(晶文社)『わが家の新築奮闘記』(晶文社)『科学は今どうなっているの?』(晶文社)『ヤバンな科学』(晶文社)『物理学と神』(集英社新書、講談社学術文庫)『宇宙論と神』(集英社新書)『司馬江漢』(集英社新書)『人間と科学の不協和音』(角川ワンテーマ新書)『科学の限界』(ちくま新書)『原発事故との伴走の記』(而立書房)『転回期の科学を読む辞典』(みすず書房)『科学者心得帳』(みすず書房)『寺田寅彦と現代』(みすず書房)『科学・技術と現代社会』全2巻(みすず書房)『科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか』(みすず書房)ほか多数。

「2020年 『寺田寅彦と現代 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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