環状島=トラウマの地政学

  • みすず書房 (2007年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784622073390

みんなの感想まとめ

トラウマとその周囲の人々との関係性を深く掘り下げる本書は、当事者主義や差別構造についての重要な議論を展開しています。著者は「環状島モデル」という独自のメタファーを用いて、当事者、支援者、研究者、傍観者...

感想・レビュー・書評

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  • 「当事者」であればあるほど、トラウマにより発言から遠ざかって行く。当事者だけが発言を許されるのか、誰が当事者なのか、という議論に、誠実な回答を与える本。宮地の示す「環状島モデル」を使うと、その議論がおどろくほど精緻で整理されたものになる。

  •  社会運動の一つの成果として出てきた当事者主義や差別や支配の構造を剔抉しようとするポストコロニアリズムの議論が非常に重要であることは論を俟たない。しかし、同時に「当事者とはだれか」「支援者はどうあるべきか」などの付随する問いへの向き合い方が(少なくとも世俗的なレベルでは)必ずしも共有されずに混乱が生じている部分もあるように思われる。

     それは例えば「誰が反差別を語る(代弁する)資格があるのか」と言った議論や、当事者間で起こりがちな「本当に抑圧されている当事者とは誰か」といった難問(アポリア)に代表される。

     本書はそうした問いを考えるためのヒントとして、「環状島」という一見不思議なメタファーを用意している。そのメタファーの上で、当事者・支援者・研究者・傍観者・加害者などが、一体どこに位置しており、その関係性はどうなっているのか、各者の間で起きがちなトラブルはなにか、それはどのように防ぎうるのかといったことに対して、一つの見取り図を提供することで整理をはかっている。ちなみに著者は性被害等によるPTSDなどにも精通した精神科医。

     もしも社会運動に関心を持っている人や、運動に参加している人(また、その中で悩んでいる人)は、とりあえずこの本を読んで欲しいと思う。話はそれからである。

  • 私がずっと考えていた部分 
    当事者と援助者側に立ってみた差異 
    あるいは当事者同士の中にある差異

    例えば何かの当事者だとして沸き上がる想い
    「言葉で表現しようのない」出来事に 
    声を発する事が出来る自分は 本当は軽いのではないか
    もっと悲惨な想いをした人はいるのではないか・・・という自らへの問い・・・(それは死した被害者への疑問)
    じゃあ 何故自分は生き残ったのだろうか・・・?

    援助側 傍観者 加害者 立ち位置を
    「環状島モデル」に例えて 説明可能にしている

    ~*~*~
    戦争から児童虐待にいたるまで、トラウマをもたらす出来事はたえまなく起きている
    「言葉では表現しようのない」この出来事は、
    それでも言語化されていった。
    しかし、言葉にならないはずのトラウマを
    伝達可能な言語にするという矛盾は、発話者をも聞く者をも揺るがせる。

    「なぜあなたが(もしくはこの私が)その問題について語ることが
    できるのか」
    「もっと悲惨な思いをした人はたくさんいるのではないか」に
    始まる問いは限りなく、
    お互いの感情を揺さぶり、自身を責めさいなむ。

    「だからここで考えてみたい。
    トラウマについて語る声が、公的空間においてどのように立ち現れ、
    どのように扱われるのか。
    被害当事者、支援者、代弁者、家族や遺族、専門家、研究者、傍観者などは
    それぞれどのような位置にあり、どのような関係にあるのか」
    著者は「環状島」をモデルに、加害者も含め、
    トラウマをめぐる関係者のポジショナリティとその力動を体系的に描いた。

    ~*~*~*
    自分の立ち位置を整理する、というのか
    そういう意味で とても参考になった本だ

    • silenciosaさん
      nyancomaruさん へ
      こんばんは^^
      ご丁寧に感想を書いて下さり ありがとうございます

      そうですね
      著者の誠実さ、そして温かい視点...
      nyancomaruさん へ
      こんばんは^^
      ご丁寧に感想を書いて下さり ありがとうございます

      そうですね
      著者の誠実さ、そして温かい視点に救われる想いがします
      2013/05/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「温かい視点に救われる想いがします」
      真摯に係わって来られたからでしょうね。
      「温かい視点に救われる想いがします」
      真摯に係わって来られたからでしょうね。
      2013/05/07
    • silenciosaさん
      いつもご丁寧に書いて下さり
      ありがとうございます。
      とても嬉しいです^^

      そうですね
      私も宮地さんの本はほとんど拝読していますが

      「トラ...
      いつもご丁寧に書いて下さり
      ありがとうございます。
      とても嬉しいです^^

      そうですね
      私も宮地さんの本はほとんど拝読していますが

      「トラウマ」というものについてずっとかかわってこられた方の想いや現場の声だなと思います
      2013/05/08
  • 493.7

    25/3ごろ
    かこむ会、古賀さんを招いた回に来られていた社会運動家?の男性おすすめ

  • p.167
    PTSDを発症する(発症できる)のは、人間を人間として認める力が残っていたからかもしれない。

    勉強になりました。

  •        -20090325

    戦争から児童虐待にいたるまで、トラウマをもたらす出来事はたえまなく起き、今日の社会に満ちている。トラウマについて語る声が、公的空間においてどのように立ち現れ、どのように扱われるのか。被害当事者、支援者、代弁者、家族や遺族、専門家、研究者、傍観者などは、それぞれどのような位置にあり、どのような関係にあるのか。

  • 専門的な内容ですが、「支援する側」に立つなら必読。と思います。

  • トラウマ当事者と支援者の位置関係、どれだけ声を上げる事が可能か不可能か、その時の風当たりの現象など…を、地政学的に図解で示している。自分が何か問題意識を抱いた時や、世間の社会活動とそれに対する批判を目にした時、頭の中をスッキリと整理するのに役立つ。想いを馳せる事の重要性に気付ける。

  • 理論に関する詳細は他のレビューワーに譲るとして、いろいろな問題を考える際に、自分は今地図上のどの位置にいるのかと考えるだけで、他の人と立ち位置が違うことを理解することができる。それがわかるだけでもかなり大きいと思う。

    個人的には家庭内のいじめや虐待に興味があるので、アリス・ウォーカーの「投企的同一化」家父長制の暴力のあたりで目の覚める思いがした。

    『「外傷性精神障害」からみたトラウマとジェンダーの相互的影響』

  • 放送大学『死生学入門』第15章の参考文献。「トラウマとそれにかかわる人々を理解するための理論」ということだけど、他のことにも応用できそう。

  • 様々のトラウマにあって、それに関わる人々は「環状島」〜つまりドーナツ型の島の形状をなして分布する、という話。
    外洋は何の関係/関心もない人々
    外縁部はかつて関わりがあっても、今は外洋を向いており、何らかの理由でトラウマの解決には携わろうとしない人々
    内縁部は今実際に関わりを持ち、その解決のために活動している人々
    そして内海部は実際に関わりを持つものの、ほとんどそれに溺れ浸かっている状態にあり、出口のない状況に自律/他律的要因でおかれてしまっている人々

    本書ではとあるセクハラ裁判を具体例として示し、それぞれの場におけるあり方について論じている。
    今、私がこのドーナツから直に連想するのは「自宅介護」の犠牲になっている人々だ。厚労省、永田町は平然と「在宅ベスト」と言ってはばからないが、そのことだけとっても彼らが「外洋」に位置していることがわかる。

  •  図書館より。
     トラウマの当事者というよりもその当事者の周りの人(支援者や研究者など)の立ち位置を環状島、というたとえで分かりやすく書かれた本だと思います。

     どこまで当事者の方に感情移入するのか、逆に冷静すぎる目線で当事者の方と付き合うのも問題があるような気もするし、そうした問題の中で周囲の人々の立ち位置を考えさせてくれる内容になっていると思います。

  • 考えさせられることが多い。一度読んだだけでは内容を消化し切れた気がしないので、間をおいて再び読み返したい。

  • 支援者は被害の外側にいて、内側の当事者とは他人なのだと言うことを両者が了解する。そうすれば、無用な傷つき合いが減らせるかもしれない。そして、その外側の他者が淡々と仕事をこなすということも大事なのだ。

  • それぞれの立ち位置を判り易いモデルで説明されているが、、、<外海>に居る私には、踏み込むコトを躊躇わせる内容。その気持ちを乗り越える何かを見つけるために再読予定。。。

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    「戦争から児童虐待にいたるまで、トラウマをもたらす出来事はたえまなく起きている。「言葉では表現しようのない」この出来事は、それでも言語化されていった。しかし、言葉にならないはずのトラウマを伝達可能な言語にするという矛盾は、発話者をも聞く者をも揺るがせる。「なぜあなたが(もしくはこの私が)その問題について語ることができるのか」「もっと悲惨な思いをした人はたくさんいるのではないか」にはじまる問いは限りなく、お互いの感情を揺さぶり、自身を責めさいなむ。
    「だからここで考えてみたい。トラウマについて語る声が、公的空間においてどのように立ち現れ、どのように扱われるのか。被害当事者、支援者、代弁者、家族や遺族、専門家、研究者、傍観者などはそれぞれどのような位置にあり、どのような関係にあるのか」

    前著『トラウマの医療人類学』を継ぐ本書で、著者は「環状島」をモデルに、加害者も含め、トラウマをめぐる関係者のポジショナリティとその力動を体系的に描いた。<内海> <外海> <斜面> <尾根> <水位> <風>などの用語を駆使しながら、トラウマをめぐる全体像とあるべき方向性をしめした初めての試みである。関係者のみならず、クライアントと日々を共にする医師であり、マイノリティ問題にかかわる研究者である著者自身にとっても、本書は実践と倫理のための道標になるだろう。」

  • 現在「問題」として認識されているもの(セクハラ、DV等)は、被害の一側面の問題化(概念化)に成功したものである。一人の人間の物語・被害を取り上げた時に、問題を切り取る角度は複数あって、ベン図のように重なったり包含関係にあったりする、というのが興味深かった。トラウマを扱ってはいるが、日常生活のあらゆる物事に応用できるし、おすすめ(ざわ)

  • 東北に行ってみて感じた被災したことのあっち側とこっち側のもやもや、支援とか援助の見落としてしまう大事なこと、なぜ心ない風評が生まれるのか、そういう一切を得心させてくれる良い本だと思う。一方、自分のなかの震災に対する立ち位置を思い知る怖い本だとも感じた。

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著者プロフィール

宮地 尚子(みやじ・なおこ):一橋大学大学院社会学研究科特任教授。専門は文化精神医学・医療人類学・トラウマとジェンダー。精神科の医師として臨床をおこないつつ、研究をつづけている。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。主な著書に『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)、『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷つきのこころ学』(NHK出版)がある。

「2025年 『傷のあわい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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