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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784622073451
感想・レビュー・書評
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1774年の英国で、海賊版書店のドナルドソンと大書店のベケットがコピーライトを争った有名な訴訟を扱った良書。当時の裁判の雰囲気が味わえる意味でも面白い。書店がコピーライトを巡って争うのも不思議な気がするが、当時の書店は小売だけでなく、本の制作、流通を含め、出版業全般を担っていた。それどころか、書店は学問に関わるあらゆるものを扱っていたという。
本書はたびたび所有権という言葉を著作権の意味で使っている。これは当時の書店主たちがロックの所有権理論からコピーライトを導き出していたからでもある。ただ、現在の法体系では、人の思想にかかる著作権と、物にかかる所有権は別物であるため、少し混乱してしまうかも知れない。
また本書著者はドナルドソンに明らかに肩入れしているため、大型書店主たちにはなかなか辛い評価となっている。大型書店主たちに擁護する点があるとしたら、彼らは企画、印刷、宣伝など先行投資をしている点だろう。わずかであるかも知れないが著者に原稿料も払っている。ただ当時は印税ではなく、原稿は買い切りであったため、どれだけ売れようとも著者にはお金は入らない仕組みである。これをして大型書店主が著者のためというのは欺瞞だと本書著者は弾劾するが、それを言うなら海賊版書店のドナルドソンは買い切りの原稿料すら著者に一銭も払っていないのである。つまりこの裁判では肝心の著者の権利は誰も気にしていないのだ。
本書著者は「おわりに」で現在の著作権を強く批判する。ただ少なくとも18世紀よりは住みやすい世の中になったんだなあと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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イギリスの出版の歴史・スコットランド啓蒙思想・著作権の成立に興味がある人には非常に参考になる本。イギリスの法制史に関する知識は全くないけれど、当時の法廷の雰囲気がわかるのもありがたい。
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【みすず書房サイトから】
エジンバラの「海賊出版者」アレクサンダー・ドナルドソンは、コピーライトを永久に独占しようとしたロンドンの大書店主たちに敢然と挑んだ。「なぜ、コピーライトに期限があるのか」――18世紀英国を舞台とした法廷闘争を軸に、その起源を社会・文化史的に検証する。著作権問題を史的に考察した力作である。
当時の出版状況の背景には、書店主、法律家、貴族、作家の関係やネットワークがあり、今日的問題へのヒントも多い。作品をめぐる思想と議論、登場人物の人間臭さなど、出版文化史としても出色の読み物だ。
「独占と「海賊」は、善悪の二分法で切ることはできない。両者はあくまで経済的な利益を追求していたのだが、自分たちの立場を擁護する便法として、著者の権利や読者の便宜をいってきた。両者の力と力のぶつかりあいに法律家たちの人間関係がからみあい、時代が動いてゆく――そんな歴史観を、この本では描いてみたかった。こういう書き方は、法学のひとのように、法廷での論理構成を綿密に分析することを大事にしている立場からみれば、邪道の極みだろう。しかし法廷のなかでの議論だけを追っていてはわからないことのなかに、歴史のうねりを作り出す源があるのではないだろうか。」(「おわりに」より)
<http://www.msz.co.jp/book/detail/07345.html>
【目次】
はじめに
第1章 本の「海賊」と独占
「海賊」出版者ドナルドソン/ドナルドソン書店のカタログ/独占出版者ミラーの評判/一八世紀イギリスの司法/両者のいいぶん
第2章 コピーライトに群がるひとびと
コピーライト法ができるまで/「アン法」の中身/書店主たちの戦争/ドナルドソン、ロンドンへ/永久コピーライト派の勝利
第3章 一九日間の法廷闘争
ドナルドソンの戦略/闘いは上院へ/開廷/五つの質問/沈黙と大演説/逆転/ジョンソンの見方
第4章 スコットランドの「悪徳な知」の系譜
スコットランドの運命の石/イングランドとの合邦/教会と識字率/出版業の隆盛/詩人ラムジー/エジンバラへ/『優しい羊飼い』/ラムジーの貸本業/蔵書のゆくえ
第5章 現代への遺産
画家ラムジーのネットワーク/法律家たちの晩年/ドナルドソン書店のその後/裁判がもたらしたもの
エピローグ/おわりに/参考文献/索引
著者プロフィール
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