- Amazon.co.jp ・本 (122ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622074298
作品紹介・あらすじ
1952年、ユネスコが世界の人種問題に関する小冊子のシリーズを刊行する。その1冊としてレヴィ=ストロースが書いた、初期の論文。西洋文化の位置付け、歴史的時間の偶然的性格を、専門領域を超えて議論し、明晰かつ的確な言葉でその問題意識を伝える。その視野の拡がりは、個々の文明を相対化する力を持ち、21世紀を生きるわれわれにも強く訴えかけてくる。
感想・レビュー・書評
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文明や人種の優劣を図る尺度についての論文です。
産業革命によって拡散した西洋文化こそが、世界文明なのでしょうか。
紙と墨で書を残し火薬を武器に転用しなかった中国や、高度な暦や農耕技術を持ちながらも石器を利用していたメソアメリカなどは、本当に西洋よりも劣っているのでしょうか。
時代と環境の違いは、そこで育まれる文化や技術の向きに個性を与えます。
その時を一生懸命に努力してきたのが「人類」であり、それに人種は関係なく優劣は決められない、と考えさせられた一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「偶然の産物? やってみれば!」
土器に関する記述が情熱的。
この人は人間の持つ英知や技術、そしてその根本にある思想や文化を心から愛しているのだと伝わってくる。 -
西洋文明が世界を覆い尽くしている昨今では、やっぱり未開社会に対して偏見があることは確かなことで、その未開に住む人々を見るまなざしには、生物学的ダーウィニズムのように彼らは我々の辿ってきた進化の途中にいるという一方向のみの歴史の進化が、意識的にせよ無意識的にせよ潜んでいるはず。
そこに「否」という意見を投じた本書。浸み込んでしまったその考え方を払拭する、あるいは中和するにはもってこいの本ではないかと思うところです。レヴィ・ストロースの取り上げる例がおもしろい。だがやっぱりむつかしい。
「8, 偶然と文明」がこの本の真骨頂だと勝手に思ってます。おもしろいです。