学校の悲しみ

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622074489

作品紹介・あらすじ

ぼくはどうやって劣等生状態から脱出したのか?教育と学校についての燦めくような考察がちりばめられた自伝的=物語的エッセイ。2007年度ルノドー賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 社会
    教育

  • かつて劣等生/落ちこぼれでその後名をなした人が書くものは、概して当時のことをおもしろおかしく語ったものか、あるいは武勇伝、さもなくば更正物語と説教になるのだが、これはそのどれとも違う。劣等生の内側からから世の中がどのように見えていたかの描写が、フランス語のニュアンスになぞらえながら語られる。チカチカしていてリアル。苦痛だっただろうなということが伝わる。子供へのシンパシーからくる今の教育や子供を食い物にする社会への苦言も鋭い。
    [more]

    <blockquote>P100 劣等生でなくなるということはあり得るけれども、劣等生であったことによって受けた傷の数々が癒えることは決してないからだ。[中略]得意になるなど思いもよらない。かつて喘息持ちだった人間が呼吸困難で何十回も死にかけたことを自慢の種にするようなものではないか![中略]忘れたい、ただそれだけ。恥ずかしい過去に金輪際触れたくないのだ。それに、心の九足でちゃんと自覚しているのだ。ずっと劣等生のままでいても少しもおかしくはなかった、と。よくよく考えてみれば、一生どうにもならない劣等生がほとんどなのだから。だから、ぼくの胸からこれまで一度として消えたことのない感覚、それは自分は生き残りなんだという感覚である。

    P101 しかし、教師になって、一番できない生徒の前で未来を振りかざしてみても何の意味もないことを、ぼくは直感的に理解した。

    P102 テーマは何でもよろしい。ただし毎回、スペルの間違いなんかひとつもないように。「批評のレベルを引き上げるためにね」

    P177 もちろん、知識は本からやってきますけど、本は、もともとは、我々の身体から出てきたものですよ。思考って、音を立てるんです。本を読むのが好きだということは、言葉を口に出して言いたいという、いてもたってもいられない欲求が残してくれた遺産なんです。

    P217 おまえ、それ、わざとやってるんだろ。どういう状況でいわれるにせよ、このフレーズのカギは副詞の「わざとexpres」だ。

    P263 君たち、ブランドに頭をとられちゃってんのよ。おれのN、おれのL、おれのX・・・ってね!ブランドは君たちの頭をとって、君たちのお金をとる。言葉もとる。おまけに身体までとっちゃうんだ。

    P267 ああ世の先生がた!あなたがた、いったい、いつになったら、ばあさんのいうことを聞いてくれるんですか?この世は理解するためにあるのではなくて、消費するためにあるのだっていうことを、いつになったら理解してくれるんですか?

    P288 そしてとりわけ、選挙の時期になるたびに、そういうたぐいのプロパガンダが煽り立てる貧乏人に対する恐怖を僕は憎む!社会全体から見捨てられた若者たちを何の根拠もない国民的恐怖の対象にする輩は、恥を知れ!そういう連中は、名誉のかけらも残っていない社会、父性の感情までも失ってしまった現代社会の屑みたいなものだ。

    P322 今日、この地球上には五種類の子供がいる。西欧など先進諸地域に住む消費者としての子供。別の地域にいる生産者としての子供。さらにまた別の場所にいる兵士としての子供。売春をさせられる子供、そしてパリのメトロの駅の湾曲した壁に貼られた大きなポスターが伝える、死に瀕している子供。ー[中略]みんな子供だ。五人とも。そして五人とも何かの道具にされている。
    </blockquote>

  •  教師であり作家である著者のダニエル・ペナックは、アルファベットのaを覚えるのに1年かかった「劣等生」であった。そんな彼が教師として奮闘する様子が、劣等生だった過去の回想を織り交ぜつつ描かれる。
     劣等生がどうやって教師に? 文字を書くのが苦手だったのに、どうやって作家に? そんな疑問に、ペナック自身がこの本の中で答えてくれる。訳者水林章の訳注も詳しく、フランスの教育制度などについても知ることもできる。(ラーニング・アドバイザー/教育 KAWAKAMI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1770038

  • フランスと日本の教育状況は違っていても、学校でのつまずきを経験しない人がいるだろうか。表面上元気にしていても自分は劣等生であるといつもビクビク思っていたことを思い出した。あのときの自分の頭を優しくなでてあげたい気分になった。いい(?いろいろな意味で)教師に出会う事があるかないかは人生にとって大きいことだと実感している。
    私はラッキーだったと思う。勉強のできる優秀な子どもではなかったが、うまく長所を引き出してくれる先生に出会えたから…。そして直接影響を受けなくてもいろいろな先生を見て来れたのはよかった。
    翻訳もよく、含蓄のある美しい文章がたくさんあり、再読するだろうと思う。

  • 【配架場所】 図書館1F 370.49/PEN

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