- Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622074663
作品紹介・あらすじ
ますます自在な詩法、深く緩やかな言葉で綴られた、静かに心をつないでゆく、寛ぎのときのための詩集。
感想・レビュー・書評
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“目に見えるどんな風景も、その風景のなかに、ここから消えていった人の、目に見えない記憶をつつみもっている。”
あとがきに残されたこの言葉が、胸に染み渡ったのは、3.11東日本大震災から7年目の朝のことでした。
『冬の夜の藍の空』がすき。
“空が、最初にこの世につくったのは、
闇と、夜だ。その二つが結ばれて、昼が生まれた。”
“明るさに、人は簡単に目を塞がれる、
夜の暗さを見つめられるようになるには、
明るさの外に身を置かなければならない、と。”
闇と夜を知っている人は、きっと美しい人なんだと思う。だって星は夜の闇の中だからこそ、あんなに綺麗に瞬くのだから。
何気ない風景のなかに、ありふれた日常のなかに、美しいものはちゃんと存在していて。それは姿を消し去ったものが後に残してゆくものなんだと。
あぁ、そんなふうに思うことが出来たら。ほんの少しでも癒やされる人がいるかもしれない。
たくさんの記憶と祈りを抱く世界にわたしは生かされている。 -
あまり詩を読むことがなく、読んでもいまひとつ分からない…そんな私が久々に詩っていいなとずっと持ち歩いて読んだ一冊。
大好きな児童文学作家・翻訳家のひとり、長田弘さん。長田さんのことばの表現はいつも穏やかで優しく、そして何とも言えない心地良さがある。もう安心と信頼の長田さんです。
まだ詩の世界は分からない、けどなんだか気になる。
(読んだ数少ない詩のなかだと中原中也の 「全身」と「心臓」が好きでした。)
図書館で探し物をしていたとき、いつのまにか詩のゾーンに入っていて詩かぁ…と思っていた時に目に飛び込んできた 長田弘 、、!!
「世界はうつくしいと」
二十七篇ある詩のなかの心にのこった作品をあげようと思いましたがどれも良かったので雰囲気が伝わるようタイトルと、一部のみ。
・なくてはならないもの
・世界はうつくしいと
・大いなる、小さなものについて
・聴くという一つの動詞
・シェーカー・ロッキング・チェア…他
◆ 二〇〇四年冬の、或る午後 一部抜粋 ◆
うつくしさを知ったのも、色彩なしだった…
どんな色彩あふれる世界よりも、ずっと、ほんとうの世界に近いのだ。 …
世界を、過剰な色彩で覆ってはいけないのだ。
沈黙を、過剰な言葉で覆ってはいけないように。
表紙のようなうつくしい世界が静かに広がっている素敵な詩集でした。
さっそく本屋へ迎えに行かなくては。 -
澄んだ水が流れるような、染み入る言葉一つひとつと、優しくもしっかりと物事を見つめた詩。
机や窓などの物質的なもの自体を、物質ではなくて記憶を止める媒介のように捉えて、机を見てみると、そこであった数々の物事や、嬉しい思い出、時には苦しい、悲しい思い出が蘇る。時を止めて、深呼吸してみよう、そうすると忙しい中にもふっと、落ち着く何かがある。
クレージーサラダを作る、新鮮な葉野菜をちぎって、オリーブオイルとチーズをかけて食べる。そういうシンプルな生活と、クラッシックの中にある静寂を、すごく大切に、楽しんで過ごしているように感じる。いつも何かが起こっているような喧騒の、カオスの現場にいればこそ、静寂と神聖な時を感じるということは非常に贅沢に思える。人の一日に必要なのは、意義であって意味ではない。いい言葉だと思う。 -
《詩人の仕事とは、何だろう?
無残なことばをつつしむ仕事、
沈黙を、ことばでゆびさす仕事だ。
人生は受容であって、戦いではない。
戦うだとか、最前線だとか、
戦争の言葉で語ることはよそう。》
(We must love one another or die)
「聴くという一つの動詞」「雪の季節が近づくと」が特に印象に残っている。
静謐で日常の一瞬一瞬を噛み締めるような詩集。
この詩集を読むと、時間の流れがゆっくりになり、身の回りにある自然、物、芸術、人生そのもの、全てがうつくしいものに思え、愛おしくなる。
広い世界を知っているからこそ書ける詩だと思う。
わかりやすいので、詩は理解するのが難しくて苦手だ、という方にもおすすめ。
ぜひ、静かな場所で、ホットコーヒーを啜りながら、窓を開けて外の風を感じながら読んでもらいたい。
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その時々で感じるものが違うのかも。
ゆっくり、何度も、何かの時に読み返したい。本棚に置きたい一冊。
表紙のミミズク/フリードリヒの絵がまた深い…
シェーカーのロッキングチェアに座りたくなった…
なくてはならないもの
うつくしいものをうつくしいと言おう。
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まず題名がいい。前にエッセイを読んだ時も思ったけど、言葉を取り扱う手つきみたいなものに愛がある。世界の「うつくしさ」をありのままにはすくいとれない言葉に対してできうる限り誠実に、ひたむきに取り組んでいる感じがして読んでいて温かい気持ちになる。この本の詩の中に「読むことは、本にのこされた沈黙を聴くことである」という一節があるけど、まさに言葉にならない沈黙を聴いているような、不思議な感覚がした。
一番好きなのは「雪の季節が近づくと」。雪がすべてを真っ白に消し去って、それと同時に遠いものを近づけていくような感じ、すごくわかる。東京ではそんな雪ってめったに降らないけど、子供の頃の思い出に一気に戻っていくようで胸がきゅーっとなった。 -
雪の積もった晴れた日に、ストーブにあたりながら読みたい。
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大人のための詩集。
表題作『世界はうつくしいと』は素晴らしい。
四季を感じ、自然を感じ、
人間なんて小さなものだ、と感じる。
『聴くという一つの動詞』の一節に、
「読むことは本にのこされた沈黙を聴くことである。
無闇なことばは人を幸福にしない。」とある。
あー、本当にいろいろごめんなさいと心で言ってみた。 -
タイトルに惹かれた。
一時、もう生きていたくないと思う時期があった。
それを経て思うのは、「生きたい」という気持ちは、世界はうつくしいと信じたい気持ちだということ。
この本を読んでいると、生きることの喜びって、そんなに大層なものじゃないなと思える。
ただ生きてそこに在って心の機微を感じること。
そういう静かな喜びを大切にしていたいと思う。
しみじみと感動が伝わる素敵なレビューですね。
長田弘さんが亡くなられた時は、まさに心に穴があいてしまったよう...
しみじみと感動が伝わる素敵なレビューですね。
長田弘さんが亡くなられた時は、まさに心に穴があいてしまったような、そんな気持ちになりました。
時々中学生向けのお話会でも、長田さんの詩を紹介したりします。
いつもしーん・・・・と静かになります。
今夜、この本を本棚から取り出して、また読み返そうと思います。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます(*^^*)
nejidonさんは、子どもたちに読み聞かせや中学生...
コメントありがとうございます(*^^*)
nejidonさんは、子どもたちに読み聞かせや中学生へのお話会など、ご活躍されてるんですね。すごく素敵ですね!本に対する子どもたちの感性は大人とはまた違うものがあるのではないでしょうか。
長田さんの詩を読まれた時の中学生のみなさんの様子、とても興味深いものでした。
人それぞれ、育ってきた環境や思い出、性格や感情が違うから、きっと読まれた詩への想いや、想像することはみんな一緒ではなかったはず。でも、そんなたくさんのモノを全てあるがままに受け入れて、大切な何かを一人ひとりに与えてくれる詩。詩ってそういうものなのかなって思いました。そして、そういう詩は読む年代を選ばず、時代を超えて残って行くんだと思います。
うーん(-- )うまく言えないな。
恥ずかしながら長田さんの詩は今回初めて読みました。『365日の本』という本で紹介されていたので、手にとってみました。読むことが出来て良かったです。