フロム・ヘル (上)

  • みすず書房 (2009年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (288ページ) / ISBN・EAN: 9784622074915

感想・レビュー・書評

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  • 複数の方面からの賞賛の声を見て、普段は日本以外のマンガは読まないけど、これは試してみることに。意図的にそうしているのかもしれないけど画一的なコマ割、区別のつかない人物描写(特に女性)、吹き出しの中に詰め込まれた読みにくい字たち。日本のマンガを読み慣れていると、これらの点はかなり辛い。内容が素晴らしくても、なかなか入り込めないってのが正直なところ。内容も複雑かつ結構難解で、読み返さないと掴みづらいってのもちょっとマイナス。下巻最後に解説がついているのを発見して、それを見ながら読み進めるのが良かったかも。

  • ずっと前に上巻だけ見つけて買ってみた。本の雰囲気はかっこいいのだが、絵もストーリーもめちゃくちゃ暗い。下巻にはトライしなかった。

  • 切り裂きジャックにインスパイアされたコミック。
    女王陛下と犯人との関係に!
    怖くてちょと気持ち悪い。でも読んでしまう。

  • 以前から、いろんな人の推薦を眼にしてたし、『ウォツチメン』も面白かったので、気になってた作品。ようやく読んだ。

    切り裂きジャック事件を題材にしてることと、ジョセフ・メリックが出てくることは、読む前に知ってた。

    最初、ちょっと挫折しそうになったけど、事件が動き始めると、俄然面白くなってきて、一気に最後まで読んでしまった。

  • なんたる密度。ページ一面にみっしり描き込まれた絵も、これまでの切り裂きジャック研究やそのほかロンドンの歴史・神話・伝説を渉猟して組み立てられたストーリーも。そこまでやられてもこっちがついていけないという情報量なのだが、叩いてみると身が詰まっていてぜんぜん虚ろな部分が無い手応えが帰ってくる。

    ストーリーにちょっとした仕掛けもあって、そこはお楽しみ。

  • 四次元的存在者、ガルくんの冒険1.

  • アラン・ムーア、すごい男だ。鬼才という言葉がふさわしい。良く丹念に調べて思考している。

  •  1888年のロンドンで、娼婦が次々にのどを掻き切られる連続殺人事件が起きた。世に名高い<切り裂きジャック>事件である。この事件は未解決であることも手伝い、今なお小説やドラマ、映画のモチーフに使われ続けている。そして、本書もその1つだ。
     過去に出た<切り裂きジャック>を扱った多くの類書と本書との最大の違いは、本事件および19世紀ロンドンに関わる膨大な資料の丹念で精緻な読み込みにより、作者が<切り裂きジャック>ではないかとすら思わせるような説得力を持って、上下巻で500ページをゆうに超える物語を語りきっているところだ。
     その憑依的とも言えるリアリズムは<漫画>という枠には入りきらず、<グラフィック・ノベル>と呼ぶにふさわしい芸術性をたたえることとなった。
     最後に補遺があり、全体像の理解の助けとなるのだが、これがまたあまりにも詳細で、本書に費やした作者の並々ならぬ情熱に、開いた口がふさがらない。

  • アメコミの傑作「WATCHMEN」のアランムーアによる、19世紀末にロンドンで起こった切り裂きジャック事件を題材にしたコミック。
    これは「WATCHMEN」を超えるムーアの代表作と言って良いと思う。
    物語の密度は濃く、生々しいほどリアルで、それゆえクライマックスのカタルシスは凄まじい。
    これには全編モノクロで描かれているのが素晴らしい効果を与えていて、自らが体験しているような光明溢れる幻視のシーンなどは、カラーではあり得なかったのだなと感じる。

    二度読み直したが、いつも以上に物語の情報量が多く、多重的である上、主人公たるガル博士の歴史観や世界観が独特であるので、物語の意味は断片的にしか理解できていない。
    しかし、簡単に読み解かれないというのも傑作の証であると思うし、今後何度も読み直すほど感覚を直に揺さぶるものの大きな作品である。

  •  

  • これも映画化されたアラン・ムーアのグラフィック・ノベル。
    ジョニー・デップやヘザー・グラハムが出演した映画公開の頃は、別に映画も悪くないと思っていました。
    しかしこの作品を読んでしまうと、
    「この原作でなんであんなのが仕上がるねん!」と。

    物語は19世紀末、ロンドンの貧民街ホワイトチャペルで起った
    「切り裂きジャック」の事件をモチーフにしています。
    地理的に忠実に再現したヴィクトリア朝のロンドン、
    基本的に実在の登場人物
    アラン・ムーアはそれらを使い、魔術的な物語を編みます。
    「誰がジャックなのか?」
    と言うのは、ここでは全く重きをおかれません。
    そんなものは物語の始まり直後に分かります。

    読者はムーアの提示する魔術や哲学、建築に隠されたもの、秘密結社などのモチーフに幻惑されるまま読み進めるしかありません。

    読みながら思い出すの荒俣宏先生の「帝都物語」。
    ロンドンの街での娼婦殺人で古代の神の封印を解こうとするガルは、まさに東京を滅ぼそうとする加藤保憲です。

    陰惨な物語です。
    誰しもにお勧めできる本ではないのですが、
    今まで読んだ事のないような「コミック」が読めます。

  • コミックではなく、グラフィックノベル。しかも超重量級。心に余裕がないと読み通せないというか、正月休みにようやく読み通しました。それでも、1回読んだくらいでは、読んだウチに入らないと思います。切り裂きジャックの真相を描く……というより、人間の暗部そのものを描こうという野心がうかがえます。グラフィックノヴェルという体裁のおかげで、その当時の風俗の圧倒的なリアリティにのけぞります。

  • 感想は下巻にて。

  • 何が天命だ。ただの人殺しじゃないか。

  • 読みづらい。。。

  • 『脳内の水面下の領域でおこなわれる活動はすべて魔術なのだ。吟唱詩人たちは心の中に浮かぶ言葉を拾い上げ、それを聞く者の心に植えつけ、やがて見事な花を咲かす。あるいは残虐行為・・・(後略)』-『第四章「王は汝に何を求めたるや?」』

    もう「昔」と言ってもよいくらい随分前に、札幌の美術館で「ムンク展」を観たことがある。「ムンク」と言えば、だれもがほとんど無思考に「叫び」と返すことができると思うけれど、当時の自分もクイズ番組の回答としての価値しかない程度の知識しか「叫び」に対して持っていなかった。だから、美術館に並べられた画たちを目の当たりにして驚愕した。「叫び」とは、あの余りにも有名な構図の一枚の絵のことではなく、夥しい数の似通った絵画からなる作品群のことだったのだ。ムンク展行きはデートのようなものだったのだが、作品に圧倒されてろくな会話もできずに、ひたすら一枚一枚「叫び」を観て行ったことを、何故か思い出した。

    こういう作品を手にしてみると、日本の漫画というのが如何に「動き」を強調したデフォルメや、コマ毎に変わるアングルなどで動画的な様式に裏打ちされているのかが改めて分かったような気になる。反対に、アメコミと呼ばれるらしいジャンルに属するこの作品では、物語の進行上必要なやや説明的と感じてもしまう会話の場面や、一つの場所である程度の時間経過がある場面などで、執拗に同じ構図が繰り返される。その結果、心理的な抑圧が読み手に迫ってくる。よく見ればほんの少しずつ何かが変化しているのだけれど、そうやって意識の虫めがねの倍率を上げて読み進めていると、たちまちに息切れしそうになってしまうのだ。その、視界が極端に狭くなって呼吸が早くなるような心持ちこそ、自分がかつてムンク展で感じたものだったのを思い出したのだ。

    そしてもう一つ気付いたのは、日本の劇画と似て非なるタッチの絵は、はげしい動きのある場面でも、どこか静止しているようだということ。動きにつれてポーズは変わりはするものの、そこに描かれた人物や物は、凍りついたように見えてしまう。実はムンクの「叫び」のあの人物も、今にも叫び声が聞こえてきそうに描かれていながら動きの気配がない、とも言えるように思うのである。そこにもまた「フロム・ヘル」と「叫び」の間で呼応するものがあるように自分の脳は反応している。

    コミックスとは言いながら、この上下分冊の大部の作品はいわゆる漫画を読むというような「眺める」と言ってもよい速度感とは無縁の、純粋な意味での「読書」を強いる。しかもかなり重圧的な感覚を伴う読書である。切り裂きジャックをモチーフにしてはいるけれど、ここに注ぎ込まれている歴史的記述や宗教的・哲学的記述を丹念に追っていると、謎解きの妙などは副次的にすら思えてくる。社会的な歪みと人間の精神の歪み。それは英国のこの時代だけが抱えていた問題ではない。多分に現代的問題でもあり、実のところ現代的とはすなわち常に繰り返される陳腐な問題でもある、というメッセージがひたひたと迫ってくる。内容といい、絵といい、これを読んで悪夢にうなされても、少しも不思議ではない。

  • 内容は面白かった。海外の漫画になれていないので、読み進めるのが少し大変でした。

  • 本書は重厚なアメリカン・グラフィックノベルである。
    それはとても凄惨で、濃く、分厚い物語―――イギリスで1世紀以上前に実際に発生した凄惨な連続殺人事件を、これまでの数々の証拠から矛盾無く構築した、フィクションともノンフィクションとも言える作品だ。

    質感十分な表紙をめくって最初に思うこと。とにかく読みにくい。翻訳小説を読んでいるかのような堅い台詞に、何が描かれているか分からない荒い描写のコマ。
    見せたいシーンを見せるという日本の漫画の手法と違い、映画の1シーンを切り取ったかのようなモノトーンのシーンが淡々と続いていく。日本で言うところのアニメコミック(アニメのセルをコマにして吹き出しを入れたもの)に近いかも知れない。

    数ページ読み進めるうちに、挫折してしまう人も少なくはないだろう。

    ところが、難解な小説を読むような抵抗を覚えつつ2章、3章と読み進めていくと…大分慣れてきたのか自然と話に引き込まれるようになる。4章で再びつまづき、5章、6章と食い入るように読み進め……後半はあっという間。最初の抵抗は何だったんだと言わんばかりにぐいぐいと目に、頭に物語が入ってくる。読みにくいコマ構成すら、終わってみればそれが最適だったと思える説得力も感じる。
    最初に辛い登りして、後は一気に長い物語を爽快に駆け下っていく、まるでジェットコースターに乗った直後のような読後感。

    切り裂きジャックとは誰なのか? 何故あのような事件が起きたのか? 切り裂きジャックのその後はどうなった?
    とっかかりの悪ささえ乗り越えれば、後にはたっぷりとした面白さが待ち受けている。


    ■つまづいた点
     ・不自然に難解…用語やストーリーが難しい訳ではなく、それらが伝わりにくいのが問題。漫画というより翻訳小説。お手軽に漫画を読む気持ちでは心が折れる。
     ・人物の見分けが付かない…一発で登場人物の覚えられたら、それは素晴らしい記憶力の持ち主。4章のアレも苦では無さそうだ。人物の歳も全く分からず、少女も老婆のように見える。意外と致命的で、これのおかげで人物への感情移入に一つ壁がある。

    ■お勧め点
     ・狂人の生き様を堪能…文字通り。ここまでの人物は、中々お目にかかれない。
     ・重厚な物語…19世紀の人々の苦悩と生き様。良いですよ。


    そういえばこの作画担当のエディ・キャンベル、人間に興味が無いのか分からないが、会話シーンだろうがセックスシーンだろうが殺人シーンだろうが何だろうが、実に淡々としている。翻って建造物の描き方は美しい。

    最後の楽屋話のはっちゃけた文章・作画が好き。

  • (後で書きます)

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著者プロフィール

アラン・ムーア
1953年、イギリス・ノーサンプトン生まれ。『ウォッチメン』『フロム・ヘル』『Vフォー・ヴェンデッタ』『プロメテア』などの著作で知られる英国コミック界の革新者。魔術や幻想世界への強い関心でも知られており、『プロメテア』は魔術の入門書としても読まれている。コミック引退を宣言したが長編小説『Jerusalem』、短編集『Illuminations』を上梓、映画「The Show」の脚本出演をつとめるなど多方面で活躍している。ロンドンを舞台にした五部作からなる魔術ファンタジーを執筆中。

「2023年 『プロビデンス Act2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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