- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622074915
作品紹介・あらすじ
いわゆる「切り裂きジャック」の連続殺人事件が本作のモチーフ。ノンフィクション・ノベルに奇想をはめこんだような巧妙なプロットに、作者の本領たるダイナミックな構成力、奥行きのある世界観・人間観が活かされている。丹念に再現されたヴィクトリア朝末期の英国社会に、いくつもの象徴が生み出す複雑な磁場がはりめぐらされる。小説的な読み心地と鮮烈な絵の力を兼ね備え、サスペンスとイリュージョンに満ちた、無類のエンターテインメント。鬼才として知られるコミック原作者によるグラフィック・ノベルの傑作。
感想・レビュー・書評
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複数の方面からの賞賛の声を見て、普段は日本以外のマンガは読まないけど、これは試してみることに。意図的にそうしているのかもしれないけど画一的なコマ割、区別のつかない人物描写(特に女性)、吹き出しの中に詰め込まれた読みにくい字たち。日本のマンガを読み慣れていると、これらの点はかなり辛い。内容が素晴らしくても、なかなか入り込めないってのが正直なところ。内容も複雑かつ結構難解で、読み返さないと掴みづらいってのもちょっとマイナス。下巻最後に解説がついているのを発見して、それを見ながら読み進めるのが良かったかも。
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切り裂きジャックにインスパイアされたコミック。
女王陛下と犯人との関係に!
怖くてちょと気持ち悪い。でも読んでしまう。 -
以前から、いろんな人の推薦を眼にしてたし、『ウォツチメン』も面白かったので、気になってた作品。ようやく読んだ。
切り裂きジャック事件を題材にしてることと、ジョセフ・メリックが出てくることは、読む前に知ってた。
最初、ちょっと挫折しそうになったけど、事件が動き始めると、俄然面白くなってきて、一気に最後まで読んでしまった。 -
なんたる密度。ページ一面にみっしり描き込まれた絵も、これまでの切り裂きジャック研究やそのほかロンドンの歴史・神話・伝説を渉猟して組み立てられたストーリーも。そこまでやられてもこっちがついていけないという情報量なのだが、叩いてみると身が詰まっていてぜんぜん虚ろな部分が無い手応えが帰ってくる。
ストーリーにちょっとした仕掛けもあって、そこはお楽しみ。 -
四次元的存在者、ガルくんの冒険1.
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アラン・ムーア、すごい男だ。鬼才という言葉がふさわしい。良く丹念に調べて思考している。
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1888年のロンドンで、娼婦が次々にのどを掻き切られる連続殺人事件が起きた。世に名高い<切り裂きジャック>事件である。この事件は未解決であることも手伝い、今なお小説やドラマ、映画のモチーフに使われ続けている。そして、本書もその1つだ。
過去に出た<切り裂きジャック>を扱った多くの類書と本書との最大の違いは、本事件および19世紀ロンドンに関わる膨大な資料の丹念で精緻な読み込みにより、作者が<切り裂きジャック>ではないかとすら思わせるような説得力を持って、上下巻で500ページをゆうに超える物語を語りきっているところだ。
その憑依的とも言えるリアリズムは<漫画>という枠には入りきらず、<グラフィック・ノベル>と呼ぶにふさわしい芸術性をたたえることとなった。
最後に補遺があり、全体像の理解の助けとなるのだが、これがまたあまりにも詳細で、本書に費やした作者の並々ならぬ情熱に、開いた口がふさがらない。 -
アメコミの傑作「WATCHMEN」のアランムーアによる、19世紀末にロンドンで起こった切り裂きジャック事件を題材にしたコミック。
これは「WATCHMEN」を超えるムーアの代表作と言って良いと思う。
物語の密度は濃く、生々しいほどリアルで、それゆえクライマックスのカタルシスは凄まじい。
これには全編モノクロで描かれているのが素晴らしい効果を与えていて、自らが体験しているような光明溢れる幻視のシーンなどは、カラーではあり得なかったのだなと感じる。
二度読み直したが、いつも以上に物語の情報量が多く、多重的である上、主人公たるガル博士の歴史観や世界観が独特であるので、物語の意味は断片的にしか理解できていない。
しかし、簡単に読み解かれないというのも傑作の証であると思うし、今後何度も読み直すほど感覚を直に揺さぶるものの大きな作品である。