よくできた女

  • みすず書房 (2010年11月24日発売)
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本 ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784622075615

感想・レビュー・書評

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  • みすず書房の新聞?で紹介されていたので、気になって読んでみた。

    面白い!!
    こういう世界は今もまったく(むしろ今のほうがより多くの人が感じているであろう)変わらずに存在する。
    主人公ミルドレッドは、30代前半、独身の一人暮らし。
    一応カンタンな仕事もあり、シュミで教会事業に携わって、そこでの人間関係もある。友人もいる。たまーーに一緒にご飯を食べる男性もいるが、恋愛・結婚という世界はない。
    安定している。でも、ふと我にかえると、自分のことを一番だと思ってくれる人がだれもいないことに気づく。

    そんなミルドレッドの部屋の階下に、なんだか「派手」な夫婦が引っ越してくる。
    彼らの交友関係に巻き込まれ、少し今までとは違った世界に接するものの、結局のところ、ミルドレッドの「おひとりさま」感覚には影響しない。

    随所にみられる、独特の黒いユーモアが楽しい。
    ミルドレッドは、「分別のある」、「よくできた女」なのだけど、心の中の妄想はけっこう動きが大きくて、もっと遠慮しないでいろんなことを発信すれば、男たちも寄ってくるだろうに、と思えた。
    (でも彼女はそういうのが好きじゃないんだろう)。

    作中で、結婚(恋愛)するのは、ヘレナやアレグラといった、自分で自分の面倒があまり見られない女性たち。という描写があった。
    結局、能力の高い人は自分一人で生きるのが平気だから一人でいるんだろうね。

    大きな事件は起こらないものの、じわりじわりと話は面白くなる。
    訳者のすばらしい言語センス、ちょこちょことジョン・ダンなどの詩が引用されていて、読むと楽しくなる。

    イタリアと縁のあるイギリス人たち、教区世界での人間関係など、
    なんだか「眺めのいい部屋」を思い出した。

  • とても素敵だった。
    某雑誌でおひとりさま小説として紹介されていたが、個人的にはおひとりさまよりも、ミルドレッド(主人公)の信仰心がかなり上手く表現されていて、それが良かった。
    ミルドレッドは信心深い故、心が穏やかになったり、逆に自分を恥じたりする。その心情はユーモアがありつつ、とても慎ましい。
    途中、「よくできた女」はみんなに振り回される都合の良い女にも見えてくるが、厄介ごとの渦中でも悪態吐かずに心を遣えるミルドレッドのことが好きになった。眠れない夜にミルドレッドが料理本を開いていた様に、私はこの本を開きたい。

  • 戦後間もないロンドンのよくできた女の日常。
    地味な彼女の本音と嫌みとうぬぼれがとても面白かった。

  • 【雰囲気ネタバレ】
    20世紀のジェイン・オースティン、という評には心から納得。
    でもオースティンより更にシビア。
    オースティンは最終的にこの二人が結婚してハッピーエンドね、というのが明白だけど、今作はどう進むのか全くわからなかった。
    誰と、以前に結婚が主人公の幸せなのかどうかもわからず、主人公も強く望んでいるわけでもない。
    結末も手放しのハッピーエンドではなかった。
    アップデート版オースティン(オースティンはオースティンでもちろん大好きだけど)。
    キリスト教の知識がもっとあればより楽しめたのだろうと少し残念だが、面白かった。

  • 30半ばで独身、午前中は教会や婦人会の仕事を手伝って、それ以外はアパートで静かに繕い物や読書をする日々。
    牧師やオールドミスやおばさまたちに囲まれ、結婚どころか男性とつきあう機会すらなく、そのことを周囲にも冗談ごかしや真剣に匂わされる主人公。
    結婚はしたいし羨ましくもあるけれど、思い切って飛び込めるほど期待を持てるほど若くもなく、いろんなカップルや異性のこともついつい皮肉に見てしまう。
    自然な感情の描写がうまくて、何かひとつ違ってたら自分もこうなってるかもと思わされる。
    読書って、別な人生を体験できる素晴らしい機会だとあらためて感慨深い。

  • ふむ

  • 30歳になる前に読みたい本と、どこかで見た気がして読んだ。とても心地よい文章。
    品よく素敵でありたい、でもズルいこととか思うことは思うし、私なんて地味でつまらないって捻くれた考えが漂うのも分かる。

  • ミルドレッドの語りが面白い

  • 20世紀のジェーン・オースティンといわれても、『高慢と偏見』には特に感銘を受けなかった。
    が、これはおもしろい。この種のおもしろさは経験したことがないかも。読みながら、くすりとも、にやりともしそうでしない状態がずーっと続いている感じ。不整脈のような波が頭の中に打ち寄せている感じ。

    再読まつり、前回は7年前
    私にとってバーバラ・ピムを読むのは津村紀久子を読むのと似たような喜びがある。

  • 日本人作家さんの小説が続いたので、海外のまだ読んだことがない作家さんの本を!と手に取った一冊でした。

    まず感じたのは、おひとり様小説と聞いて思い浮かべる人物像(いわゆる"喪女"を想像してました)とは少し違うなということでした。

    自分の実情に対して僻みっぽさやネガティブさはあるものの、それが過度ではないというか。

    彼女の言った「今のままの私でいさせてよ」「けっこう幸せなんだから」というセリフが彼女の人格を物語っているなと感じます。

    そして本筋とは外れますが「イタリア、ここでも君か!」というかんじで、イタリアの世界各国での愛されっぷりに笑えました。

    あと、口紅を買いに行く下りの休憩室からレストランの描写。どこの国でも(そして時代でも)同じなのですね~(^^;)

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