あたらしい美学をつくる

  • みすず書房 (2011年5月24日発売)
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本 ・本 (266ページ) / ISBN・EAN: 9784622076025

感想・レビュー・書評

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  • こんなことを考えている人がいるのか!こんな学問があるのか!ということにまず驚き、感動。本書のテーマを語る「はじめに」で惹きつけられました。

    書き出し:
    美学と題された本を読み始めて一番困るのは、それが何を目的にしているかがわからないことです。美学というくらいだから『美』を論じるはずと期待しても、語られるのは『芸術作品』のことばかり。それじゃ単なる芸術学です。芸術作品の目的は美じゃない。…

    芸術学すら学んだことがない私ですが、たしかに「美学」と言われると「絵画を分析したりすんのかな」と想像してしまいます。芸術と美は違う、と言われれば頷けないことはないですが、固定観念というやつですね。

    そう言われると今度は「じゃあ美学って、人が美しいと思うときの脳の動きとかを調べたりするのかなぁ」などと想像しました。
    しかし筆者のやり方はそのようなものではありません。

    「はじめに」と第1章だけでも読む価値ありました。筆者の考える美学ってどんなものなのかと、そのベースになっている(最終的には一部取り替えるが)カントの美の定義について書いてあります。

    ただ、筆者の考える美というものをすんなり受け入れられるかというと難しかったです。筆者は人の感性や直観を前提にせず、自然科学を基礎に美学を打ち立てているのですが、するとどうしても「これが美、、、なのか…?」と違和感。多分自分の美に対する先入観(自然科学ではなく、人の感性や直観を前提にしている)が相当強いためだと思います。それを打ち破ろうとする斬新な主張に出会えて良かったです。また読み直して勉強したい。

  • 精読解題中。再び、待ち時間にカントの主張の読みの可能性について考えます。
    2011.07.20.

  • 芸術学とも芸術論とも、個別の美術とも無縁の、学問構築の試み。
    「美」の所在を探求するために自然科学を応用し、最終的に数理計算に近い処理を可能にしようという姿勢は斬新です。
    論理の展開も分りやすく、依拠する先行論に関する言及も分りやすいのですが、まったく、同意できません。先んじて反論を封じようとする手口が少々あざといのには目をつむるとしても、ほとんど不毛なのではないか、少なくとも、自然科学の手法によって美学を再定義するということは、あまりに楽観的すぎるではないか、と、そんな疑問が残ります。

  • 精読解題中。再び、待ち時間にカントの主張の読みの可能性について考えます。
    2011.07.20.

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著者プロフィール

1966年、岡山市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了(美学美術史学)。博士(文学)。名古屋大学大学院情報学研究科准教授。専門は美学。現在は、未来社会における幸せとは何か、そのために美学や芸術学は何ができるかという視点から研究を行っている。2018-2020年度、文化庁メディア芸術祭アート部門審査員。
著書に『絵の幸福――シタラトモアキ論』(みすず書房、2020年)、『あたらしい美学をつくる』(みすず書房、2011年)、訳書にR・シュスターマン『ポピュラー芸術の美学──プラグマティズムの立場から』(勁草書房、1999年)他。

「2020年 『絵の幸福 シタラトモアキ論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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