消えた将校たち カチンの森虐殺事件

  • みすず書房 (2012年12月18日発売)
4.57
  • (8)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 69
感想 : 10
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (284ページ) / ISBN・EAN: 9784622076483

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • どんなてをつくしたスリラーより、こんな怖い話があるだろうか。
    1人殺しても、刑法で裁かれる世の中と信じて来たのに、国の法体制の中で整然と歴然と25000人の将校、知識階級を殺害した加害者たちは国の熱い保護の下で栄誉を受けた。

    西側の証言のみで記されたこの凄い記録、1962年当時のモノだが、今では陽の目を見る事件として知られている。
    カチンの森で9層にも12層にも重ねて「処理された」屍体に口がないから真実は何処までもソ連のみが握ったまま。。このままで終えていいのか、ナチス・ヒトラーが為したドイツの所業の行為は広く世に知られて今も解明が進められている・・が数こそ、殺されたユダヤ、ジプシーの数より少ないといえ、内容は隠されたままで許されるものでは決してない。

    それが今もウクライナ侵攻を「正義の元」の嘘とプロパガンダで塗り固められた旗印の下で堂々と展開している・・しかも国際連合では常任理事国すら降りようとはしない。

    子供に正義を教えられないのが地球か・・暫く、いや永久に心が凍ってしまいそうだ。

  • 面白かった、と感想を書くと不謹慎かな。
    カチンの森虐殺事件、
    以前読んだザフスラフキー氏の「カチンの森」より、ミステリアスで緊迫感があり、著者はアメリカに住んではいたが、ソビエト連邦がまだ崩壊していない時に、西側にある情報のみで書かれた。
    ドイツ、ソビエト、イギリス、アメリカ、ポーランド、各国の思惑が入り乱れ、ソビエト崩壊以前は、事実は有耶無耶にされていた。
    ソビエトは、ニュルンベルク裁判でドイツ人を裁こうとして事実を捻じ曲げた調書を作成したり、証言者を脅し、嘘をつかせたり。
    矛盾点が多く、指摘される点が多かったためソビエトは自滅した。
    ニュルンベルクで裁かれなかったのは、良かったが、
    ソビエトは裁かれていない。
    ボリシェヴィズムの考えでは、ブルジョア階級である将校は絶滅させなければならない、階級を無くそうとして階級制度を補強してしまった、ボリシェヴィズムの矛盾点をまた露呈させてしまった。
    ゆくゆくは、ボリシェヴィズムを追究したがためソビエト連邦を崩壊させてしまった一献ではあるが、間の抜けた話だ。
    ボリシェヴィズムは、共産主義者でもレーニン率いる党幹部の思想、
    それが元々間違っていたのだろう。

    誇り高き愛国者で自らの身をもって国を護ろうとされた無辜のポーランド将校たち。
    彼らがもし処刑されていなければ、戦後ポーランドは共産圏にはならなかったし、他の東欧諸国の運命も変わったし、朝鮮戦争で中国に捕らえられたアメリカ兵も無事に帰国できたが、この事件が起きたがため、中国、ソビエトの捕虜になったアメリカ人将校たちも洗脳されるか、殺されることもなかった。
    アメリカ兵捕虜の死亡率は、第二次世界大戦では、1.8%。
    朝鮮戦争では、約31%。

    アメリカやイギリスは、第二次世界大戦中に自国の捕虜にを虐殺したドイツ人は徹底的に追及し処刑したが、1万5000人ものポーランド将校たちを虐殺したソビエトの罪は追及しなかった。
    逆に事実を消そうとした。

    さあて、ナチスがしたこととソビエトがしたことの差はなんだろう?

  • ※厳しい言い回しや言葉使いがあるレビューなので注意!





    ■概観
    カチン事件がドイツ犯行説だった1962年に刊行された本書だが、このポーランド人虐殺事件はソ連が起こしたものだと数々の証拠は告げており、現在ではそのような見解が通説となっている。しかしソ連崩壊まではスターリンのつく大嘘が長年通用し(根岸隆夫氏)、なんと米英もそれに同調しドイツ犯行説の立場を取っていたというのだ。この本はそんな空気の中、公然とソ連犯行説を主張したということで勇気のいるものといえる。6章の「証拠分析」を読めばわかるが、これはどう見てもソ連が怪しい。これでいやドイツがやったんだと言うのは流石に苦しい。そんなのはチャーチルやルーズヴェルトのような老獪な政治家なら当然理解していただろう。しかし彼らは政治的判断から虐殺犯のソ連の味方となったのだ。ここが本書のポイントだと思う。著者はただ真犯人はソ連なんですと主張したかっただけではなく、連合国側、つまり勝者側の欺瞞を指摘し批判することにも重点を置いている。得てして戦争の勝者側の残虐行為や嘘・捏造行為はうやむやのうちに許容されてしまう。これは一つの問題だろう。ドイツ・ソ連両者から国を侵略されたザヴォトニーには、どっちの味方をしようかという党派性はない。驚くべき中立性で全ての権力者の行動パターンの欺瞞を指摘している。ポーランド人としての恨みつらみをぶちまけてるだけだったり、強き者、勝者にすり寄って勝ち馬に乗るような卑しい行いをしないところも本書の古典的価値を上げている。

    「カチン事件をとおして知っておくべきは、主権国家の行動基準が列強への力関係への考慮から生まれるということである。第二次大戦中はそうだったし、平和時もそうだった」
    「配慮すべきは倫理か権力かと迫られたとき、彼らは後者を選んだ」

    戦争の勝者である連合国側が、己の掲げる法と正義の理念から逸脱し、密かに全体主義国と通じ、その犯罪行為に目を瞑っていた。しかし勝者ゆえにこの欺瞞は誰からも責められず、ニュルンベルク裁判でもカチン事件の犯人が究明されず、処罰もされずに幕を閉じた。これらのことが果たして正常か?と著者は問うている。いやあってはならないと言う。ゲシュタポとNKVDは協力してポーランドが今後独立国として存続できないように知識階層を抹殺していたのに、片方は裁かれたがもう片方は裁かれるどころか裁判官となった。著者は戦勝国敗戦国関係なく審理する裁判所が必要だろうと述べる。このとき裁かれなかった犯罪者が、今でもこれが正しいやり方なんだと言わんばかりに、ウクライナ国家の存在を否定し、捕虜を暴行したり殺害したり洗脳したりしているなら猶更だろう。解説の根岸氏は、英米がカチン事件にその本質が集約されていたソ連全体主義の思想と行動を正しく理解しなかったことは、スターリンが英米の沈黙を弱腰ととらえ、東欧諸国の抑圧や、朝鮮戦争の遠因もそこに求められるかもしれないと指摘している。自分としてはウクライナ戦争の遠因もここにあるのではないかと考えている。

    本書はポーランドではなく米国で公刊された。当事者なのに当時のポーランドでは出版できなかったのは、根岸氏が言うように、ソ連の傀儡だったからだろう。ポーランドで本書が陽の目を見るのは1998年まで待たねばならなかった。

    ■まだ解決してない
    ロシア側が資料の公開を阻んでいるので、スターリンとベリヤの間でどんな詰めが行われたのか、殺すだけなら極寒の地に放置すればいいのになぜ銃殺したのか、5千人の犠牲者がまだ不明だが彼らの処刑場所や埋葬場所はどこか、このようなことが未だに不明。
    殺害されたのも将校だけでなく医師、弁護士、大学教授、中高教師、技術者、パイロット、実業家、芸術家、ジャーナリスト、裁判官、高級公務員、聖職者、憲兵、警察官等のポーランドのほぼすべての知識層が裁判なしで殺害されたことが判明している。またカチンの森で2万2千人全員が虐殺されたのではなく、現在のベラルーシやウクライナでも処刑と埋葬は行われていた。
    彼らが殺された動機は、階級闘争の理念によりブルジョワ階級は排除すべき敵だから、とされている。

    ■日本も無関係ではない
    英米のカチン事件隠蔽はソ連の対日参戦と連動していた。どうしてもソ連を日本にぶつけたかった英米は、スターリンの機嫌を損ねたくなかった。つまり、もし英米が虐殺を非難し、ソ連への莫大な支援を打ち切っていたら、もう独ソ戦がどうなっていたか分からない。ソ連が対日参戦の対価として得た千島列島や樺太、満洲の鉄道港湾利権などもどうなっていたか分からない。実はカチン事件は日本と無関係どころか、かなり影響を与えている。解説の根岸氏は、ポーランド捕虜の尋問と洗脳で得た経験を、シベリアの日本人捕虜にも活かしただろうと予測している。

    ■私見
    ここからは私見だが、恐るべきは階級の敵というだけで数万人の人間を裁判もなしに殺害できるその壊れた倫理観だ。人間達は階級闘争という力によって動かされているので、楽園の到来は約束されている。これは本当に当たる予言を手にしている人間の行動だ。つまり楽園は必然的に到来するのに、それを邪魔してる階級がある。それを排除することこそ正義であり、その間嘘をつこうと暴力を用いようと人を殺そうと楽園が一日でも近づくならそれが正義となる。ポーランドの知識階級の虐殺は楽園の到来を妨げている障害物を取り除いただけだ、なにが悪い。それで、ソ連に楽園は到来したのだろうか。ポーランド人の犠牲は報われたのだろうか。

    数万人の人間を裁判もなしに殺害できる権力の暴走も恐ろしい。共産主義者は民主主義を搾取のための詐欺システムとして信じていない。実際の民主主義は、権力者の権力を制御する現在唯一のシステムだった。これを排除したとき権力のストッパーがなくなり、権力がどんどん積み重なって、いつかその人物を合法的に取り替えられなくなってしまう。そしてそうなってからはもう遅い。権力が積み重なって社会建設の巨大プロジェクトを実施できるようになり、そのでいで国民に飢餓が起きても与党に対して批判も反論もできず、独裁政権に苦しんでいる人間が今でも多くいるように。

    もう一つ。この事件はロシアによる虐殺隠蔽の出来事というより、「虐殺捏造」の事件という側面もあると思う。ソ連はドイツがやったんだと捏造した。そして、その捏造に英米が乗っかったという事実。あの正義の勝者達が虐殺事件を捏造してお互いの利益のためにかばいあっていた、という側面を見逃してはいけないと思う。あったと思われた虐殺事件が実は捏造だったという珍しい事件。でもこういうことは起こるんだと、あるわけないと断言することは出来なくなった。もとより、人間は間違いを犯す生き物なんだから、勝者の作る歴史が無条件に正しいなどとは猶更言えない。こと歴史というととかくたった一つの方向に事実や解釈を確定したがる人達がいるが、この姿勢には以前から疑問だった。と、ここでにわかにロシアの擁護に回ると、本当にロシア(ソ連)の仕業でないのならちゃんと主張する機会を与えるべきだとも思う。ただ今回のケースは明らかに証拠はソ連がやったと告げていて、ロシア側が資料の公開に関して不誠実なのと、ウクライナに戦争を仕掛けてカチン事件で非難されたことをそのまま繰り返してるのも心象が悪くてよろしくない。それでロシア側の主張が信用できない。

    私としてはこれらの点が気になった。

    ■日本ではほとんど聞かないサンダルモフ事件
    カチンの虐殺から3年前の1937年、ソ連のNKVDはカレリアのサンダルモフの森でやはり様々な国の知識人達を銃殺していた。6000人が殺害されたが、特にウクライナは甚大な被害を受け、289人の知識人(科学者、劇作家、詩人、教師、技術者、聖職者等)が、後頭部への銃撃で一日で全員銃殺された。カチン事件とよく似通っている。近年ロシアが、虐殺はフィンランド人が行ったと主張し、別の犯人を提示し出したことも似ている。

    Wikipedia
    Sandarmokh
    https://en.wikipedia.org/wiki/Sandarmokh

  • 5月に同じくみすず書房から本書の解説を書かれている根岸隆夫氏の『カチンの森』が出版されて、この時期(ロシアのウクライナ侵攻)だからか、と思った。

    ナチスドイツに英仏が宥和政策をとったようにソ連の虐殺行為にも連合国側は目を瞑ったわけで、戦争中に起こる出来事に直面したら、敵でも味方でもまず誰も助けてはくれないと思ったほうがよいのだろうな。

    どっちが良い者でどっちが悪者で、とかではなくとにかく戦争はしてはいけない。それだけ。

  • 【要約】


    【ノート】

  • まだソ連がカチン事件はドイツの犯罪だと主張していた時期に、様々な調査によって得られた真実をこうして書籍化したのは、すごいことだと思う。
    国がつくウソ、その許されざる行為に、真っ向から対峙していった勇気ある書籍。

  • 戦争犯罪人に対するニュルンベルグの公開裁判はカチンの森の犯人が究明されることもなく、処罰されうzにその幕を下ろそうとした。そしてそれに対してソ連政府からもポーランド共産主義政権からも、何の抗議もなかった。

    カチンの森で殺された将校や失踪した人々はポーランド社会の精鋭だった。大学教授、医師、科学者、芸術家など。
    思想強化は全体として失敗に終わった。ポーランド人には祖国への強い義務感、名誉など独自の価値観があった。

  • カチンの森で多数のポーランド将校らの遺体が発見された「カチンの森虐殺事件」。戦中戦後とおしてナチス・ドイツの仕業だと言われ続けてきたこの事件だが、あらゆる資料や証言に当たることことで、「真犯人はソ連ではないのか?」という真相を暴こうとする。
    事件の発覚から、真相を突き詰めていく過程がスリリングで、ぐいぐい読めた。1962年に出版され63年に邦訳された『カティンの森の夜と霧』の改訂版なので、この訳の中ではまだ真相は明らかにされない。しかし本改訂版が出るまでの50年のあいだにソ連が崩壊し、ロシア政府がソ連秘密警察の犯行だったと認めたので、63年版の邦訳から50年の間に明らかになったことが解説として最後に付記されています。劇的だなぁ。
    国家権力・国家間の利害が働くと、何万人もの虐殺事件の真相もひっくり返ってしまうという恐ろしさ…。でも逆に考えると、どんなに国家ぐるみで真相を隠そうとしても必ずほころびがあり、誰かがその気になれば真相はいつか暴かれるんだ、とも言えるのかも。

  • みすず書房からは、ヴィクトル・ザスラフスキーによる「カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺」も出ていますが、どちらがお薦め?
    (ワイダが映画化したアンジェイ・ムラルチク「カティンの森」は積読中)

    みすず書房のPR
    「第二次大戦中の1943年2月、西ロシアのカチン地区を占領中のドイツ軍は偶然ポーランド将校数千名の遺体を発見した。
    今では、1940年春の虐殺がソ連の犯行だったことは周知の事実。しかし本書が米国で刊行された1962年当時は、米英ソは協調してヒトラー犯行説を主張、事実を隠蔽し、ソ連の一次資料も90年代まで封印されていた。
    著者は若いときワルシャワ蜂起に参加し、米国に帰化したポーランド人学者。ソ連以外の関係国の資料を可能なかぎり収集し(東京の国会図書館まで調べている)、生存者の証言を集め、いわば傍証から、ソ連犯行説を固める。まるで複数の大国を相手にひとりで戦うかのように。
    ポーランド将校たちはいつ、誰に、なぜ、どのように殺されたのか? 列強の隠蔽工作で誰が消されたか? ドイツ、ソ連、ポーランド三国の証拠品争奪戦の行方は? 読者は息詰まるような“ノンフィクション”を読むことになるだろう。
    ソ連の崩壊後、一次資料が公開されはじめると、ザヴォドニーの主張は裏付けられた。いまだに引用頻度がもっとも高く、基本研究書でありつづける稀有な存在だ。
    中野五郎訳『カティンの森の夜と霧』(読売新聞社,1963年)を大幅に改訂した新版。」

全9件中 1 - 9件を表示

J.K.ザヴォドニーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×