貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

  • みすず書房
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本棚登録 : 1010
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076513

作品紹介・あらすじ

貧困研究は、ここまで進んだ。単純な図式(市場vs政府)を越えて、現場での精緻な実証実験が明かす解決策。

感想・レビュー・書評

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  • ・「現実問題として、貧乏な人は重篤な病気の治療など手が届きません。検査や入院などで高いお金がかかるからです。だからちょっとした症状で私のところに来て、私は気分を良くする薬をあげるのです。」
    ケニアでAIDS治療に伝統的な心霊治療師や祈祷師が引っ張りだこなのも、同じ理由からでしょう。…このような藁にもすがる話は、何も貧しい国だけのことではありません。貧しい国の少数の特権階級や先進国の人も、対処方法が分からない問題に直面すると、同じことをしています。アメリカでは、うつ病と腰痛は両方ともよくわかっていないことが多く、症状も悪化しがちです。アメリカ人が精神分析医と心霊治療師、あるいはヨガ教室や整体術の間でふらふらするのはこのためです。どちらの症状も波があるので、患者は今度こそ、新しい治療法が効くはずだと束の間の期待を抱きながら、希望と落胆のどうどうめぐりに陥るのです。

  • 貧困問題に取り組むにあたってランダム化対照試行を用いた行動経済学のレポートと論考。極めて興味深く、刺激的な本でした。

    購買力平価で1日99セント以下で暮らす極貧の人達の生活。それをとりまく社会問題は様々で、ここでは食糧・健康・教育・家族計画・保険・金融・仕事・政府の問題が扱われています。

    問題を解決したいんだったら、とにかく先進国から金と人を投入すれば良い。極貧の人達でもアクセス出来る安価な食糧(カロリーベースで)や予防接種を提供して、学校を作り、コンドームを渡し、人口抑制・AIDS防止の教育プログラムを提供すれば良い。実際に現状を知らないとまずはこういう解決方法を思い浮かべます。しかし現実には上手くいくとは限りません。支援や制度が善のイデオロギーによるものであれば、その結果も善となる、というのは幻想だということです。

    本書では、最終目的に適うインセンティブを明らかにするために、様々なランダム化対照試行を実地で行ない、それによって因子を見つけ出し、解決プログラムに反映させるプロセスを多数紹介しています。そのどれもが新地平であり示唆に富むものであり、大いに読む価値があります。

    加えて、本の最後に付いている訳者解説がとても良かったです。解説で指摘されている通り、この本に書かれていることは貧困世界だけに留まらず、私達の身近な生活や社会にも通じます。合理的期待等に関する極貧の人達の思考パターンや行動パターンは、誰しも自分が苦手に思う分野に対するアクションの取り方に自ずと重ね合わせてしまい時には苦笑してしまうことでしょう。つまり、自分の目の前にある諸問題の解決に当たっても有益なことがこの本で語られているといえます。

  • どいつもこいつもピケティピケティ騒いでる中バナジー読んでみたwwww

    とりあえずwww思ったことなんだがwwwwなげーwwww読むの大変すぎワロタwwww

    んでwww内容がwwwむずいww移動時間中に読むような難易度ではないww

    ってことで読むのに大変苦労した上になぜかですます調で書かれているため何かとイライラするwww

    アフリカとか東南アジアとかでの救済に関する内容がメインだが、正直日本の生活保護問題とか関しても通じる部分が多く、そういったことを考えながら読むとまた楽しめるかもしれない。

    基本構造は、とりあえず貧乏人アホで何やったらいいかわかんないだろうから手ほどきしてやろうぜwwっていう供給派といやいや、あいつらもアホなりに色々考えてるんだから、おせっかいしないで、あいつらがほしいものだけあげようずwwwっていう需要派という2つのメインストリームについてどっちが有益なのかについて論じている・・・と思う。たぶん。あんま自信ない。

    とにかく山もなければ谷もない抑揚皆無な議論が延々と続いていく感じなので、ちょこっと気晴らしに読むものではない気がする・・・決して内容がつまらないわけではないが・・・

    そして、本書の謝辞でみんな大好き、ピケティの名が・・・

  • なぜ貧乏人は貧乏なのか、を世界規模でもう一度考え直す一冊。
    日本にも貧困の問題はあっても、程度としては、やはり豊かな中の貧しさなのだと思い知らされます。
    国自体も貧しく、そこで貧困の罠に捕らわれて暮らす人々が、なぜ貧困から抜け出せずにいるのか。
    先進国、赤十字、ユニセフなどが援助を続けているはずが、なぜ状況が改善されないのかの答えの一端が分かった気がします。

    ただし、ワクチン接種による病気の予防より、病気を発症してからの治療に多額の治療費をかけるという点や、薬を多く処方してもらった方が納得するという状況は、日本の一部にも当てはまると思いました。
    有効な予防接種にすら否定的な人や、病院に行っても薬を出されなかったら医者(病院)を替える人は身近に何人もいます。

    状況をよりよい状態に変えることは難しいし、こちらでうまくいったことがあちらでもうまくいくとは限らない。
    貧困はとても難しい問題ですね。

  • 「あなたの○○円で××人の子供を救う薬が買えます」という言葉に対して「本当かよ」と思う人や、「貧乏なのに何故子供を沢山産むのか?」と疑問に思う人にはオススメ。
    訳者あとがきを読んで初めて山形浩生氏の翻訳であることに気がついた。道理で読みやすいわけだ。

  • 貧乏人でも、お菓子とお茶は飲みたい、テレビも見たい、お葬式もちょっとは豪華に、と希望すると思いますが、それらはすべて否定されていました。
     たとへば、カロリー重視の食事をもっと追求して、貧乏人には、栄養バランスのとれた流動食を支給して、喉に付けたプラグから摂取してもらう、というアイデアを考えました。ついでに排泄も人口肛門からにして、決められて時間に密閉パックのなかにすれば、衛生状態も大幅に改善するでしょう。うわぁ〜、なんか『マトリクス』か『未来世紀ブラジル』みたい、とバカなことを考えていました。 
     マイクロファイナンスのところで、利用率が低いのは、みんながみんな商売や軽工業のオーナーを目指しているわけではない。勤め人になりたい人が、ほとんどである。仕事があれば、工場で働きたい、とありました。やっぱりそうなんだ、と思いました。

  • 人類がいつの時代も直面している「貧困」。

    本書は、簡単に言うと、以下の方法による貧困の根絶を提唱しています。
    ・貧困に関するあらやる問題を同じ一般原理に還元する紋切り型の発想による解決策をやめる。
     -貧困を解決する唯一のレバーなどない。
    ・「貧乏な人の行動原理」に焦点をあてて、辛抱強さが必要だが一つ一つの貧乏な人のケース・行動原理を知り、それに応じた解決策を取る。
     -徐々にではあるが確実に貧困を減らす。

    だから、本書の名前は「貧乏人の経済学」。

    本書ではこのアプローチを「ランダム化対照試行」という方法によって現場に適用・推進した事例集でもあります。
    「ランダム化対照試行」を簡単に言うと以下のような考え方に基づいています。
    ・理念だけあれこれ議論していても、結論はでない。
    ・実際にやってみて成果があがるかどうかをきちんと検討して、はじめてその手法がいいか悪いかを判断できる。
    ・きちんと検討するには、その施策を実施した場合と実施しない場合とを、条件を揃えて比べる必要がある。

    言葉だけ聞くと当然のようですが、適用対象が現実社会であり生身の人間であるところに、特徴があります。
    言葉を変えると「細部を見逃さず、人々の意思決定方法を理解して、実験を恐れず」とも表現されています。

    本書には、これらの実際の適用事例が溢れています。
    食生活・健康管理・教育・金融市場・資産運用・身分制度・起業や労働・政策と政治・・・貧乏な人の様々な場面での意思決定方法を理解し、
    実験・検証した事例・データにもとづいて書かれた本書は、
    ・これまで私が知らなかった意思決定のしくみを明らかにしてくれます。
    ・これまで私が理解していると思っていた意思決定のしくみを覆してくれます。
    ・これまで私が考えもしなかった施策とその結果を教えてくれます。
    ・これまで私が知っていた施策が永続的な結果につながらない理由を教えてくれます。
    ・私に対して「もっと理解し・考え・試行する必要がある」ことを教えてくれます。
    ・etc・・・。

    ナイーブな議論や、お涙頂戴なストーリーが先行しがちなテーマ「貧困」。
    貧困とはなにか、貧困を減らすには何が必要なのかについての知識を得たいと思い手に取った本書ですが、
    私にとって想定以上のものを与えてくれ、お土産まで持たせてくれました。

    「貧困」に限らず、あらゆる問題解決に重要なヒントを与えてくれる一冊です。

  • 「貧困研究はここまで進んだ」「世界の貧困問題に関心のある人の必読書」との宣伝文句は、その通りでしょうね。

    貧困問題について、実際のところ何がおきているのか、全てではないにしても、垣間見れたような気がします。

    訳者解説で述べられているように、貧困問題の宣伝パンフにあるような内容が、本質ではないことを知らされるのは、確かにいささかショックでした。

    そして、極貧の人も私も、人間として本質的な部分は少しも変わらないのだ、という、わかってみれば当たり前のことが、改めて知らされました。

    例えば「飢えている人でもカロリー増よりおいしいものやテレビのほうを優先する」というのは、かなり意外でしたね。まあ、考えてみると当然なのですがね。

  • ○この本を一言で表すと?
     安易な結論に惑わされない根本的な対策と検証による開発経済学の本


    ○この本を読んでよかった点
    ・RCT(ランダム化対照試行)という手法で導入を検討しているアイデアの実効性を確かめるやり方は、貧困の環境が多様である中で、各環境に適合した施策を検討する上で有効だなと思いました。訳者解説に書かれている通り、「適用した側と適用しない側に分けて試すのは差別だ」という批判がいかにも出そうな手法ですが、理論だけでいきなり全体に展開することの全体コストを考えてみれば明らかに有効な手法で実践すべきだと思います。

    ・貧乏人は可能な限り効率的に安くて栄養価の高いものを求める、というのは偏見で高価なものや食料以外のものを選択することもある、という話になるほどと思いました。マズローの欲求五段階説などで、食欲などの生存欲求が満たされないと高次の欲求は後回しという固定観念を持っていましたが、人間そんなに単純ではないのだなと思いました。(第2章)

    ・水を消毒する塩素漂白剤やORS(経口再水和溶液)、予防接種など安価な手段で病気を避けられるのに、「目に見える」治療法でないために貧乏人から信頼されず、むしろ高価な点滴や民間療法に頼ることになる、という状況になっていることを初めて知りました。知識がなければ「目に見えない」治療法を信頼できないというのは、現代日本人が民間療法を信頼できないようなものかなと思います。(第3章)

    ・貧乏人の教育に対しての感覚「教育は一定以上の学歴にならないと全くの無意味」から、教育を有意義な投資としてみなかったり、優秀な一人の子供に集中投資したりしている、というのはその立場になってみれば理解できなくもないなと思いました。その中ですべての子供が基礎能力を身に付けることができるという考えを実践しているNGOのプラサムは困難ながら有意義なことをやっているのだなと思いました。(第4章)

    ・人口抑制が国家の成長に貢献するという考え方からインドでかなり強引な政策を取ったことは他の本にも載っていました。子供を多く作ることは一つの選択肢であり、老後の保障のためにその選択肢を取る、という結論は初めて知りましたが、金融資産などの蓄積や年金制度などの制度保証がない状態で結局その選択肢を選んでいる、という話は理解できる気がします。(第5章)

    ・貧乏人が大きなリスクを数多く抱えていることからいくつかの収入の手段を考えたりしていること、目先のことで手一杯で先のことを考えていられない「時間不整合」で保険などのヘッジ手段をとれないことなどは、なかなか解決困難なことだなと思いました。政府が有効なマイクロ保険などを用意して効果的なリスク緩和手段を得られることになれば、確かに貧乏人のリスクが減り、全体としてもプラスになりそうな気がします。(第6章)

    ・ムハマド・ユヌスの自伝などで、貧乏人が地元の借入手段を利用すると利息が格段に高く、だれもそこから抜け出せない状態になり、マイクロファイナンスを導入することで彼らを救済できた、というエピソードがあり、そのまま真に受けていましたが、顔がわかる範囲で監視できることによる地元金貸しの管理コストや柔軟性と、マイクロファイナンスの顔がみえない範囲であることによる強引な取り立てや柔軟性のなさなど、今まで考えていなかった内容が書かれていて新鮮でした。昔からの社会的偏見を利用した「インドの宦官派遣」という取り立て手段は面白いなと思いました。(第7章)

    ・貧乏人は自制により未来に投資することが難しい、ということは他の章でもありましたが、先進国にいる私たちは自動的に貯蓄してくれたりする制度が当たり前のように備わっているおかげでできているだけで、条件が同じであれば同様に未来に投資することは困難だろう、と言う話はなるほどと思いました。(第8章)

    ・この本を読むまで「貧乏人は起業家精神に富んでいる」「貧乏人のビジネスは利益率が高い」という他の本の話を真に受けていましたが、貧乏人にとっての有効な選択肢が起業しかないこと、利益「率」は高くても利益「額」が低いことなど、納得できる話だなと思いました。起業はやはり困難なことであり、起業に必要なスキルを身に付けるのは日本でも難しいのに、それを学ぶ機会がより少ない貧乏人がP.291で書かれているような利益率が高い代わりに大きな資本投下が必要な案件に対する意思決定をするのは難しいことだろうなと思います。P.295の貧乏人が起業することを「職を買う」という表現で書いているのはかなり的を射ているなと思いました。(第9章)

    ・政治という場合に何事もトップダウンでやればうまくいくわけではない、という本書の意見に賛成です。周縁部(小さい地域)で変えていくというアイデアは、いきなりトップダウンで始めるよりかなり有効な策だと思います。理論家は大きな制度を考えることに集中しがちだが、個別の政策や周縁部にかなり改善の余地があるというのは納得です。(第10章)

    ・貧乏人が①情報をもっていないこと、②多くの側面について責任を背負わされていること、③アクセスできる取引に制限があること、④3I(ignorance:無知、ideology:イデオロギー、inertia:惰性)による古い制度設計による制限があること、⑤「何ができない」ということについて自己成就的な予言の縛りがあること、という5つの教訓はこの本全体の内容をうまくまとめているなと思いました。(網羅的な結論にかえて)

  • 開発経済学教科書

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