人生と運命 2

  • みすず書房 (2012年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784622076575

感想・レビュー・書評

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  • 独ソ戦下のソ連での一家族が中心。ビール飲みながら読むには重すぎる哲学的文学。民族主義vs革命。前者では絶滅収容所の恐怖が生々しく描かれ、後者では個人に忍び寄る粛正の恐怖が静かに描かれる。480ページという厚さも気にならない。詳細な感想は3巻で。

  • 第2巻。
    グレーコフとアウシュヴィッツ、そして古参共産主義者と親衛隊員の問答がメインの巻。
    グレーコフは共産主義者的には落第だが、戦争の現実をよく知っておりどことなく憎めない人間だ。ひょうひょうとしているが自分が何のために戦っているか深く考えているような描写もあり、またそのことについてほのめかしはするものの決してペラペラとしゃべらないところがよい。
    アウシュヴィッツは本当に胸が痛くなるようなシーンで、電車の中で息をつめながら読んだ。実際にアウシュヴィッツに行ったことがあるが、その時はあまり現実感がなかった。皮肉にも、この本でそのシーンを呼んでいるときに昔見たアウシュヴィッツの情景を思い出して動悸が止まらなかった。
    古参共産主義者と親衛隊員の問答は、その1章あとの親衛隊に寝返った人間の手記を含めて興味深く読んだ。親衛隊員はファシズムと共産主義の原理は同じであり、指導者が違うだけだと主張する。古参共産主義者は惑わされるが、あと一歩のところで踏みとどまり、話しても無駄だと親衛隊員に伝える。寝返った人間は、この世の無私な善こそが何よりも強く、最終的に世界を救うと書いているが、自分は囚人仲間を裏切って密告者になっている。寝返った人間の手記が一番しっくりくるが、彼は裏切りものになっており、古参共産主義者の考え方は理解できない無慈悲なところがあるが、少なくとも彼は囚人を裏切ることはなかった。それぞれの理想と現実が交差するような仕掛けには驚いたし考えさせられた。

    この3章以外にも素晴らしい部分はたくさんあり、読み応え抜群だが、例によって前提知識が無いと読みにくいため星4とした。

  • ソヴィエトの全体主義が党員、兵士、科学者、農民たちの考えや行動を蝕んでいく様が伝わってきます。ドイツのファシズムも非人道的で狂気に満ちていますが、全体主義はそれよりももっと恐ろしい気がします。人々が密告し合うのです。誰もが他人を信用できなくなり、疑心暗鬼に陥ります。人々は知らず知らずのうちに国家に対して従順になります。現在の世界を見回してみても、中国然り、北朝鮮然り、ロシア然り、そしてじわじわと日本も。

  • おすすめ資料 第158回 (2012.10.5)
     
    20世紀ロシアの作家で、ワシーリー・グロスマンをご存知でしょうか。

    グロスマンはウクライナのユダヤ人家庭に生まれた作家であり、従軍記者でもあります。
    本書は第二次世界大戦時のスターリングラード攻防戦を舞台にした歴史小説です。

    一度はKGBによって原稿を没収されましたが...数十年の時を経て、ついに今年日本でも刊行されました。
    全三部作とボリュームたっぷりですが、ぜひ挑戦してみてくださいね。

  • 2015/4/27購入
    2020/2/26読了

  • 人生と運命1にレビューを載せています。

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著者プロフィール

(Василий Гроссман)
1905-1964。ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。43年、生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。次第にナチとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達し、50年代後半から大作『人生と運命』を執筆、60年に完成。「雪どけ」期に刊行をめざすが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収、「今後2-300年、発表は不可」と宣告される。「外国でもよいから出版してほしい」と遺言し、死去。80年、友人が秘匿していた原稿の写しがマイクロフィルムに収められて国外に持ち出され、スイスで出版された(仏訳83年、英訳86年、ソ連国内では88年)。

「2022年 『人生と運命 3【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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