- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622077510
作品紹介・あらすじ
「ここで起こったことを証言するために生きておくれ」。わたしは瀕死の女性からパン切れを受け取り、彼女の目の前で食べた――。16歳で家族とアウシュヴィッツに収容され、ただ一人生き残ったハンガリー系ユダヤ人女性の回想録。ナチスへの告発ではなく、恐怖を超えてその後の人生をいかに生きのびたかを美しい断章で綴り、フランスで評判を得た。著者は今年86歳。新たな世代のために勇気をもって語られた、貴重な証言。
感想・レビュー・書評
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アウシュヴィッツから生還した数少ないハンガリーのユダヤ人の著者による、内省的な再生の記録。決して多くは語られずむしろ少なすぎるくらいの詩のような形で語られる言葉は、しかし確かにこちらに向かっている。一見内省的な断片に思われるが、筆者は過酷な人生の過程で理解した事を勇気を持って発信し、そして彼女は収容所で倒れていった大切な人々と今もなお共に在る。読めて良かったです。
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深く長い忍耐による思索の末に導かれた、短く鋭い、真理をとらえた言葉たち
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ハンガリーユダヤ人の数少ない生き残り。収容所で瀕死の女性が著者に4つのカビの生えたパンを差し出し、後世に伝えて欲しいと言った。
(参考)アウシュビッツ文学(記録)
フランクル 『夜と霧』(ドイツ)、プリモ・レーヴィ 『アウシュヴィッツは終わらない』(イタリア)、ケルテース・イムレ 運命ではなく(ハンガリー) -
アウシュビッツやショアについて書かれた本はたくさんあるけれど、本書は特異な作品。詩のような短い文章で、死について…ではなく、光をめざして命を叫んでるような作品。必読。
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ビルケナウで瀕死の女性が合図を送ってきた。手のひらには黴びた4つのパン切れ、辛うじて聞き取れることで、私に言った「ほら、これあげる。あんたは若いんだから、ここで起こったことを証言するために生きておくれ」私は4つのパン切れを受け取り、彼女の前で食べた。見つめる彼女の目の中には善意と自棄の両方があった。私は若く、この行為とそれを支える重みをどう受け取ればいいかわからず途方に暮れた 。私の人生は16歳で止まっている。アウシュビッツでは母と妹と見つめあうことも手を振ることもなく分かれた。ポーランド人のカポに聞くと、そっけない苦闘でこう言った「炎の吹いている煙突を観ろ、みんなもうあの中だ」私の人生はそこで止まった 。飢えと渇きにはモラルがない。飢えが私を食らいつくした。私が飢えとなっていた。私自身が渇きとなっていた 。ユダヤ人を絶滅させることで、ナチスは彼らの内なる神のきらめきを殺し、それをわがものとすることによって、神の地位を奪い取ろうとした。そこにたどりつくために、彼らが当てにしたのは、想像を絶していること、人間の忘却能力、そして世界の不信仰だった 。
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第二次大戦中のハンガリーのユダヤ人政策や実態の証言としても貴重。
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ナチスの時代に、ユダヤ人である著者は、強制労働か死かという状況を生き延びた。あまりにも凄惨な日々をやっとの思いで振り返り、その後の人生において得たものを、この本は伝えている。
一晩で読み終える分量だが、内容は深い。『夜と霧』と同様、生きることへの前向きな姿勢に励まされ、読後感は清々しかった。