図書館に通う―― 当世「公立無料貸本屋」事情

著者 :
  • みすず書房
3.22
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本棚登録 : 322
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622077626

作品紹介・あらすじ

編集者、翻訳権エージェントとして、長く出版界で生きてきた著者が第一線を退き、今度は本好きの一市民として発見した、街の図書館の魅力と変貌。みずからの半生と対話し、むかし営んだ貸本屋のこと、たくさん読んだエンターテインメントのこと、著作権の問題など、本と人を繋ぐエピソード満載。デジタル・ネット時代の図書館の可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 長年出版業界でご活躍されていた著者が一線を退いたのち、一般の一利用者として公共図書館を利用しながら感じられたことや考えられたことを綴った1冊です。
    世間では現代の公共図書館を否定的な意味合いで「公立無料貸本屋」という言い方をすることがあります。
    しかし、著者が投げかけるのは「なぜ図書館は無料貸本屋であってはならないのか」という問いなのです。

    著者は、編集や翻訳などに携わられていた現役時代に、国会図書館を調査に利用することはあったようです。
    ですが、娯楽のための読書を目的に公共図書館を利用するようになったのは引退されてからとのこと。
    そのため、現代の図書館事情には疎いようです。
    本書は一利用者(もちろん出版会の事情には通じていらっしゃいますが…)の視点で書かれており、それは私にとっては新鮮な視点でした。

    興味深く読みましたが、「読書のための図書館」という路線に偏っていることが、図書館関係者としてはやや引っかかりました。
    読書のために本を借りるのも1つの利用の形ですが、公共図書館は地域の人々にとって、興味を持ったことや生活に必要な情報を調べることができる身近な施設でもあるのです。
    出版界に通じており、なおかつ情報を入手するスキルを持った著者だからこその「図書館は無料貸本屋でもいいじゃないか」という主張なのかなぁとも思います。

  • 図書館利用者の視点から、図書館の役割、出版社や著者と図書館との共存に向けた私見などが綴られたエッセイ。
    電子図書時代に図書館が読者層を増やし、出版部数を増やすことに貢献し得ることや、大活字本により高齢者へ読書の楽しみを提供でき老人福祉にも貢献し得ることなどに気がつかされた。
    図書館での選書の方針には、確かに興味を唆られる。
    地域との対話を通じて読書の楽しみや課題解決の糸口の提供、地域資料や絶版本の保存などをし、読者層を増やすことが出来れば、無料貸本屋との謗りをはね返し、図書館の役割をアピールできるのではないかと思った。

  • 図書館は無料貸本屋として利用しています。
    著者はレファレンスサービスについてほとんど触れないので、私が無料貸本屋と図書館の違いの最たるものと思うものは著者にとって意味のないものなんだなと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「違いの最たるもの」
      そうなんだ、全部ご自身だけで完結させられる、お偉い方なのでしょうね。。。
      「違いの最たるもの」
      そうなんだ、全部ご自身だけで完結させられる、お偉い方なのでしょうね。。。
      2014/03/12
  • 月刊「みすず」に不定期連載されていたエッセイが一冊に(目次を見ると、とっても面白そうです)。。。

    みすず書房のPR
    「第一線を退き、図書館に足が向かう。発見があり疑問もわく。個人史をからめ、貴重なエピソードを満載。ネット時代に生き残る方策は? 」

    目次
    はじめに―図書館は「公立無料貸本屋」ではいけないのか/出版社がこしらえた図書館/『広辞苑』と『第二の青春』/『未刊行初期短篇』の公表/貸本屋と漫画喫茶/キングと『夏草』/『われらにとって美は存在するか』/『彼もまた神の愛でし子か』/『ドクトル・ジバゴ』とアメリカ文化センター/『アメリカの出版界』と図書館/『リリアン』と『オリンピア・プレス物語』/『蜩ノ記』とペーパーバック/『裏通りの紳士』と開架/ジャレド・ダイアモンドと運営委託/『暁の死線』と地域の図書館/『点と線』と書評の役割/『町奉行日記』と電子書籍/「異聞浪人記」/まとめ―インフラとしての図書館

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/60093

  • うーん、図書館司書資格の講習でも聞いたような話がいくつか

  • 図書館の利用者の視点、考え方捉え方参考になる

  • 「当世公立無料貸本屋」のサブタイトルが結構刺激的。
    寄り道も多々あれど、提言されているものはなるほどと頷かされるものが多い。介護施設に大型本の提案だとか、ブックレビューの蒐集だとか。
    エッセイゆえ総論的なものがなく、とっ散らかっているように読めたのが少々残念。

  • 『図書館に通う――当世「公立無料貸本屋」事情』
    著者:宮田昇

    四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/256頁
    定価 2,420円(本体2,200円)
    ISBN 978-4-622-07762-6 C0095
    2013年5月17日発行

    編集者、翻訳権エージェントとして、出版界で60余年を生きてきた著者。第一線を退き、今度は本好きの一市民として、街の図書館の奥深さと変貌を、つぶさに経験する。
    同時に、みずからの半生と対話しながら、たくさん読んできたエンターテインメントのこと、むかし営んだ貸本屋のこと、貧しいハンガリー移民のピューリツァーが、アメリカで図書館を学校として育った逸話、図書館と著作権の問題をはじめ、誰も書かなかった、本と人を繋ぐエピソードを満載。
    アイデアにみちた提案とともに、デジタル・ネットの時代に、図書館も書店も出版社も、ともに活躍できる道を探る。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/07762.html

    【目次】
    はじめに――図書館は「公立無料貸本屋」ではいけないのか

    1 出版社がこしらえた図書館
    2 『広辞苑』と『第二の青春』
    3 『未刊行初期短篇』の公表
    4 貸本屋と漫画喫茶
    5 キングと『夏草』
    6 『われらにとって美は存在するか』
    7 『彼もまた神の愛でし子か』
    8 『ドクトル・ジバゴ』とアメリカ文化センター
    9 『アメリカの出版界』と図書館
    10 『リリアン』と『オリンピア・プレス物語』
    11 『蜩ノ記』とペーパーバック
    12 『裏通りの紳士』と開架
    13 ジャレド・ダイアモンドと運営委託
    14 『暁の死線』と地域の図書館
    15 『点と線』と書評の役割
    16 『町奉行日記』と電子書籍
    17 「異聞浪人記」と『知の広場』

    むすび――インフラとしての図書館
    謝辞

  • 図書館
    本の本

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著者プロフィール

宮田 昇(みやた のぼる)

一九二八年東京に生まれる。元、早川書房編集者。同社を退職後、チャールズ・E・タトル商会で勤務する傍ら、数多くの児童書の執筆・翻訳を手がける。一九六七年に矢野著作権事務所(のちの日本ユニ・エージェンシー)を創業、一九九一年、日本ユニ著作権センターを設立。戦前戦後のわが国の翻訳権、出版権の変遷の歴史を熟知する数少ない一人であり、翻訳著作権に関する著作も多く、斯界の第一人者として知られている。
一九九九年、『翻訳権の戦後史』で第二一回出版学会賞、二〇〇二年には、第二三回著作権功労賞を受賞。
著書に、『東は東、西は西――戦後翻訳出版の変遷』(早川書房、一九六八)、『翻訳出版の実務』(日本エディタースクール出版部、一九八九)、『翻訳権の戦後史』(みすず書房、一九九九)、、『新編戦後翻訳風雲録』(みすず書房、二〇〇七)、『図書館に通う――当世「公立無料貸本屋」事情』(みすず書房、二〇一三)、『小尾俊人の戦後――みすず書房出発の頃』(みすず書房、二〇一六)、『出版の境界に生きる』(太田出版、二〇一七)ほか多数。

「2017年 『昭和の翻訳出版事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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