医師は最善を尽くしているか 医療現場の常識を変えた11のエピソード

アトゥールガワンデ

• みすず書房 (2013年7月19日発売)

感想・レビュー・書評

[Rafさんの感想 · 2024年2月5日]

医者の本音が語られるが、アメリカの事情なので日本とは少し異なるか。給料や裁判、医療訴訟に対する保険、手術室の確保などの問題。最前を尽くしても、医療過誤は起こり得るという。それは日本でも変わらないだろう。宗教上、ブルカを着用した相手への診療の仕方、など。

乳がん患者の話。放射性トレーサーが8時間以上前に注射されている、これは時間が経てば消えてしまう。救急の患者が割り込む。手術室の空きがない。それだけの理由で彼女に再度トレーサーを注射し、被爆を2倍にするのは契約違反だ。さあ、どうしたものか。

軍医についても。アメリカの負傷兵は多剤耐性バクテリアであるアシネトバクターバウマニによる感染症の流行をイラクからアメリカに持ち込んできた。軍部は、ファッションにも気を使い、ワイリー社のクールなフォルムの防弾サングラスに切り替えたことによって、目の外傷が見事に減少した。正しい事が、承認欲求により歪む。マスク着用文化にも通じそうだ。

運不運、技量や関係性によるトリアージ。人間の命に関わる現場は案外に手作りである。

[kulibmdさんの感想 · 2024年3月6日]

医学部分館２階書架 ： W 021/GAW ： https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169801

[suzukaさんの感想 · 2023年6月27日]

当たり前のようだが、手洗いがどれほど大切か伝わってくる。どんな時代でも。

[はるさんの感想 · 2023年4月13日]

感染症を防止するには医師の手洗いがとても大切
コンプライアンス(規則遵守)が大切

勤勉さ、真面目さはもっと評価されるべき

99.95%の生存率と99.5%の生存率。
一年たつと83%と16%になる。
0.01%の改善が全てを変える。医療に関してはそこに命がかかっている。

有効な解決に達するためには、のろのろとして困難な過程をのりこえるしかない。勤勉さこそが必要で、創意工夫が必要で、やってみようと言う意志が必要だ。

[薄明かりの絵画さんの感想 · 2022年8月13日]

・手洗いは重要。爪は短く切る。爪のお化粧はしない。
・細部にわたる調査、データ収集が改善に寄与
・戦況、兵士の負傷の傾向が変わっても、データの重要性は変わらない
・ヴァージニア・アプガー。アプガースコア
・正しいことを行え、しかも、今すぐ
・書く行為は、仕事から一歩引き、問題を見通す機会を与える。

[prokofikukoさんの感想 · 2021年2月7日]

どのエピソードも興味深く、深い洞察とこれからの指針になりうるものばかりだった。
勤勉であること、たゆまぬ努力を続けること、客観的相対的に自分を評価することなど、非常に地味で継続的な改善の積み重ねがいかに大切かを、どちらかと言うと淡々と描いている。
99.5%の成功を99.95%に引き上げようとする努力が、卓越したパフォーマンスとなる、というのは一つの結論ではあるが、それだけではない考察がまた好ましい。
あとがきに医学生に向けた5つのアドバイスがあるが、どんな人にも役に立つものだと思う。

[小野不一さんの感想 · 2020年8月15日]

当時、産褥熱の原因は瘴気（しょうき）と信じられていた。日本だと疫病の原因は「鬼」（き）と考えられてきた。節分の「鬼は外」も感染症の原因を祓（はら）う目的があった。鬼に関しては面白い話がたくさんあるのだが以下のページを紹介するにとどめておく。
https://sessendo.blogspot.com/2020/08/11.html

[mickeymegujさんの感想 · 2019年8月31日]

[目次]
第1部 勤勉さ
手洗い / 掃討作戦 / 戦傷者

第2部 正しく行う
裸 / 医師が尽くす相手 / 医師の給料 / 死刑執行室の医師 / 戦い

第3部 工夫
スコア / ベルカーブ / パフォーマンス

あとがき――ポジティブな逸脱をするための提案
引用文献 / 謝辞 / 訳者あとがき

[shinshuさんの感想 · 2019年3月5日]

☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB13152986

[mikahayashiさんの感想 · 2019年1月23日]

医師であり、「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者が、困難な状況でもより良い医療を目指して奮闘する医師たちの姿を記している。

感染症を予防するには
野戦病院での治療
ポリオ掃討作戦
出産

原題は『BETTER』。
絶対に正しい選択などない。だけれども、われわれの選び方を今よりもよくする方法は必ずある。

『BEST』ではないかもしれない。けれど、より『BEST』に近い医療を、医師たちは目指しているのだ。

[kaine131さんの感想 · 2017年8月22日]

　11のエピソードが紹介されているが、どれも興味深いものだった。
　ICTに所属しているので、手洗いの項目はより身近な問題として捉えられた。感染症警察官にはなりたくない、という言葉がしっくりくる。ICTの一員として過ごすと、粗探しばかりをしているような気持ちになる。手洗いが不十分であること、消毒薬の開封日が記載されていないこと、マスクが正しく着用されていないこと……。
　注意しても効果は薄い上に、嫌な気持ちに陥ってしまう。どうしたら改善されるのかをスタッフ自身に提案してもらうのは現実的だと思った。

[eibunyasunariさんの感想 · 2017年5月30日]

「ニューヨーカー」のエッセイを書いていた現役米国外科医による様々な医師の生き様書。一見華やかで高潔に見えることもある米国のリアルな医療現場と、著者のインドでの見学や視察経験の間に見える医師の不変なる精神性。進路に迷う医学生や研修医だけでなく、現状を変えたい、変わらないと感じているすべての医師に読んでいただきたい一冊。最後の「ガワンデ５訓」は心に染みた。

[chu-yanさんの感想 · 2017年3月20日]

医師でもある著者自身による、医療におけるパフォーマンスに関する取り組みを「①勤勉さ」「②医師の報酬および過失における賠償」「③工夫」という観点で述べている。

実際の医師でもある著者自身が、様々なエピソードをもとにしつつ率直かつ臨場感のある表現で上記のテーマを述べている。

医療現場ではなくとも組織のパフォーマンスを向上させるために何をするべきか、という点で大きく参考になる良書であると考える。

以下、備忘用メモ：

■第1部：勤勉さ

1. 手洗い：
　・「手を洗えないのはなぜだい？」という問い合わせをもとに単純な工夫で手洗いの時間を作った事例
　・全患者について細菌検査を行うことで、菌保有者を早期に検出する事例
　・"ポジティブな逸脱"とは、何かを指示するのではなく。相手が持っている能力の上に工夫を積み上げていくアイディア。

2. 掃討作戦：
　・ポリオ根絶に向けた不確かで地味な仕事を継続しているWHOの医師のエピソード

3. 戦傷者：
　・統計を地道にとり続ける、既存のテクノロジーを組み合わせることで戦死者を大幅に低減させた事例
　　- ケプラー防弾チョッキの着用徹底
　　- 外傷発生時の一次対応の迅速化、および対応病院のティア化(CSH/レベル4/本国)
　　- 地道なデータ収集作業に基づく改善の気づき(例:失明の外傷発生率に基づく防弾サングラスの採用)

■第2部：正しく行う

1. 裸：
　・診察時における医師の振舞い方に関する考察。「礼儀正しく」「付き添い人を付ける」が医師側としてトラブル予防策。

2. 医師が尽くす相手：
　・元医者の弁護士による医療過誤訴訟のエピソード。

3. 医師の給料：
　・医療報酬と保険に関連する考察。

4. 死刑執行室の医師：
　・医療の倫理と薬物投与による死刑執行を補助する医師のエピソード

5. 戦い：
　・医師が出来る限界を超えるようなケースに直面した場合の葛藤に関するエピソード。「常に最善を尽くす」と「治療のやめ時」に関する考察。

■第3部：

1. スコア：
　・自然分娩と帝王切開に関する考察。医師側としては安全な分娩が可能な帝王切開が容易な選択である・
　・最後にある自然分娩に失敗した母親の言葉が素晴らしい「自分が自然分娩に失敗したと考えるのはばからしい。今は自分の子供に対して注意を向けるべき」

2. ベルカーブ：
　・嚢胞性線維症に関する治療パフォーマンスに関するエピソード。
　・ある専門領域における治療成績の良い病院はごく一部であり、全体成績としては"ベルカーブ"の曲線を描くグラフになる。
　・ドン・バーウィックの主張「複雑化・高度化した現代医療を正しく行うためには、"自分自身の評価"と"情報のオープン化"による、病院間の比較が必要」。これこそが道徳的に正しく、自身の生命に最終責任を持つ患者にとって知る権利であること。
　・わずかな違いの改善を追求し続ける姿勢が大きな治療結果の違いをもたらすワーウィック医師の事例(99.95%と99.5%の違い)
　・ベストの医療施設は学習し変化する能力を持っている。

3. パフォーマンス：
　・高度の医療器材を持っていても治療にはならない。
　・限られた資源の中でより良い医療行為を行うためにはパフォーマンスを測定し改善することが必要
　・限られた資源の中で医者自身の技術向上の努力によって目覚ましいパフォーマンスを発揮しているインドの医師の事例
　・問題を認識する意思となんとかしようとする決意が大事。
　・改善は可能。天才は不要。勤勉さ、道徳的な潔癖さ、創意工夫、そして何よりも「やってみようとする意思」が必要

4. あとがき：
　・ポジティブな逸脱をするためのアドバイス
　　1. 筋書きの無い質問を患者に行え
　　2. 不平を漏らすな
　　3. 何か数えろ
　　4. 何か書け
　　5. 変われ

[karma_fukaiさんの感想 · 2017年1月9日]

今年一本目のお勧め本。医療現場での派手さはない改善の力の大きさがメインテーマ。それ以外にも多様な11テーマについて、様々なエピソードを採り、バイアスを除き(個人的な信条を述べる時はその旨を記している)、そして平明な文章(訳も良い)で綴られた、良質なエッセイ集。やや値がはるけどその価値あり。

[別府さんの感想 · 2016年9月14日]

原題：Better: A Surgeon’s Notes on Performance
著者：Atul Gawande(1965-)
訳者：原井宏明(1959-)

【内容紹介】
「人々は医師の仕事を孤独で知的な作業だと思っている。しかし本当のところ、医学を正しく行うことは、頭を使って難しい診断をつけるようなことではなく、スタッフ全員にくまなく両手を洗わせるようなことなのだ」

　医師の仕事とは正確な診断をつけたり、手術の技術的な腕前を磨いたりすることだけではない。組織、金銭的コスト、医療システム、そしてスタッフや患者の家族など、さまざまな要素が混在するなかで医師は専門家としての結果を残さなくてはならない。本書に描かれるのは、そんな医療現場のやりくりの物語である。
　院内感染を減らすべく医療従事者に手洗いを徹底させる人、戦場の病院で日常では見ることもない傷を負った兵士を救う人、難病患者を一日でも長く生きさせようと戦う人……。科学技術の進歩を待つだけでなく、与えられた現場で最善を尽くすことで医療を変えていく人々がそこにはいる。
　『ニューヨーカー』誌のライターにして現役の外科医である著者が描くエピソードは、いかなる困難も乗り越えうる人間の豊かな発想力と可能性に満ちている。
＜http://www.msz.co.jp/book/detail/07768.html＞


【目次】
目次　[/]
序　[i-x]

第1部　勤勉さ　
手洗い　002
掃討作戦　018
戦傷者　039

第2部　正しく行う　
裸　058
医師が尽くす相手　069
医師の給料　099
死刑執行室の医師　116
戦い　139

第3部　工夫　
スコア　152
ベルカーブ　183
パフォーマンス　212

あとがき――ポジティブな逸脱をするための提案　[229-238]
引用文献　[239-246]
謝辞　[247-249]
訳者あとがき（原井宏明）　[250-255]

[摂南大学図書館枚方分館さんの感想 · 2015年2月26日]

配置場所：摂枚普通図書
請求記号：498.04||G
資料ID：95130829

[日獣大図書館さんの感想 · 2015年1月16日]

2014年12月新着

[nobuimamuraさんの感想 · 2014年2月12日]

訳者あと書きでも訳者自身が言っていたが思わず引き込まれる文章。翻訳本は読みにくいが、原作のためか、訳者の能力か、すごく読みやすいのがまず第一点。訳者は行動療法の第一人者の精神科医ということも味噌だろう。いくら医学研究が進歩しても医師もしくは医療のパフォーマンスが変わらなければ成果が上がらないということが実例を挙げて述べられている。そして、なぜパフォーマンスが変えれないのかも述べれていて興味をそそる。医師個人が価値のある違いをどのように生み出すかについての5つの助言が至言。第一に、筋書きにない質問をしなさい、第二に、不平を漏らすな、第三に、何か数えろ、第四に、何か書け、第五に、変われ。「社会に対するリスクと責任を他の誰かに押しつけてもいけない。何か新しいことを試し、何かを変えてみなさい。何回成功し、何回失敗したか数えなさい。それについて書きなさい。どう思うか人に聞きなさい。そして、会話がどこまで続けられるか試してみなさい。」

[ヒロさんの感想 · 2014年1月18日]

著者はあとがきにポジティブな医師になるために行う5点を書いています。
①　診療場面で筋書きのない質問をしなさい（雑談を勧めています）
②　不平をいうな（医師が不平をいいだしたらとまりません）
③　何かを数えろ（自分のやっていることを数えてどのくらいやったか数値化すること）
④　何か書け（自分のおこなったことを記録にとどめること）
⑤　変われ（新しいことにチャレンジしてみること）
とてもユニークだけどルーチンワークで謀殺される医師にとっては、実はかなり実用できなアドバイスなのです。

http://ameblo.jp/nancli/entry-11752403826.html

[k.sさんの感想 · 2013年12月29日]

愛媛新聞『読書　今年の収穫』
ノンフィクションライター　最相　葉月氏選定。