• Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622077831

作品紹介・あらすじ

インドシナ半島奥地に広がる熱帯の高地=ゾミア。そこには、モン、アカ、チン、カレンといった少数民族が独自の文化を築いてきた。彼らはなぜこの辺鄙な山中に定着したのだろうか? 彼らの生業・文化は《国家からの逃避》を目指した結果だ、という大胆な仮説を展開する脱国家のグローバル・ヒストリー。

感想・レビュー・書評

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  • 壁にかけている地図において、地面は平らに展開している。他方で、地図を「横にしてみる」と、ずらりと並んでいる様々な地理的空間によって作られている世界像が現れてくる。国家の形成は、こうした様々な空間のせめぎ合いの中で生まれる。本書が取り上げた「ゾミア」とは、中国の西南部から東南アジアをわたった、盆地による国家統治の蔓延から逃げてきた山地民の生活空間である。

    モーラル・エコノミーで有名になったJ・スコットは、本来の政治・経済学の分野を超えて、歴史学や人類学的なアプローチも取り組んできました。大量な史料をもとに書かれた『ゾミア』は、出版された当時から研究者に高く評価されるとともに、批判や論争も多く巻き起こしている。

    資料の引用の間違いが多くあるのではないか。山地民の主体性を過大評価したのではないか。国家を妖魔化しすぎたのではないか。”The Art of Not Being Governed”(『ゾミア』英語版のタイトル)に対して、"The Art of Governed”(M・Szonyi 2017)を題する本も最近出版され、スコットに喧嘩をうっているようにもいえる。

    百年前の山地民は本当はどう思っているのか。それを実証することは難しい。山地民の実態よりも、『ゾミア』によってたくさんの議論が喚起されたことは、私に大切なことを教えてくれたのである。それは、文字と国家形成に象徴されている「文明」に排除され、矮小化された人びとの汚名を洗おうとし、さらに無意識的にも文明側に立っている自らの姿を見直す、というスコットの決意である。

    「理性的な声」を世の中に出すことは研究者の仕事であるのは間違いない。しかし、「問うべき問い」を見つけて多少雑でありながらも答えを示していく覚悟も不可欠であろう。そういう意味では、『ゾミア』は、開発と国家文明の関係を考えるための豊かな素材と視点を示しているだけではなく、人びとの理性の深い所に働きかける一冊ともいえよう。

    (東京大学大学院新領域創成科学研究科 博士課程 汪牧耘)

  • ☆ゾミアとは、ベトナムからインドにかけて広がり、中国の4省を含むアジアの山岳地帯である。山地民は国民国家に統合されていない人々で、奴隷、徴兵、強制労働などから逃れてきた者である。

  • モラルエコノミーの著者なのに気付かず読んでいた。
    スコット自身はタイ語などの一次史料を読めるわけではなくあくまで二次史料からの仮説で、その史料もかなり恣意的な編集をしているとの批判を聞いた。でもまあ仮説としては面白い。

  • J・スコット『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、読了。ゾミア(大陸部東南アジア山岳地帯)の歩みとは文明から切り離された未開社会なのか。国家主義的ナラティブは山地民を野蛮と断ずるが、著者はNo。ゾミアこそ「脱国家」の共同体である。 http://www.msz.co.jp/book/detail/07783.html

    山地民の歴史とは確かに「国家形成」から取り残された歴史だが、それは二千年にわたり、奴隷・兵役・徴税・戦争という国家形成のプロジェクトの抑圧から積極的に脱出した試みであるという。国家管理の無益さを追及する著者ならでは焦点に瞠目する。

    水田に拠点を置く権力が届きにくい山岳地。分散居住は水田国家の収奪を回避し、平等と自治が生命線となる共同体は首領権力を絶えず相対化する。ゾミアとは未開社会ではなく積極的な脱国家社会といえよう。著者は逃亡奴隷やロマにもその系譜を見る。

    ランケまで戻る必要はないが、主権国家を自明とする歴史「物語」が野蛮と文明を規定し、権力の正当性を担保するから、徴税できない人々は野蛮人。本書で示される世界の自由民たちの息吹は、認識の更新、そして共同体再生へ有意義な示唆となろう。

  • ジェームズ・C・スコットの壮大な見方の転換術とでもいうのだろうか。新しい考え方に触れた。授業でやりました。

  • 文明は山を登らない。「未開」ではなく、選択されたものとしての周辺性は、寧ろ「非開」とか「不開」とか言うべきかも。訳者じゃないけど、こういった本の読後って、日本人としては柳田國男とか宮本常一とか読みたくなるね。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784622077831

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著者プロフィール

1936年生まれ。イェール大学政治学部・人類学部教授。全米芸術科学アカデミーのフェローであり、自宅で農業・養蜂も営む。東南アジアをフィールドに、地主や国家の権力に対する農民の日常的抵抗論を学問的に展開した。ウィリアムズ大学を卒業後、1967年にイエール大学より政治学の博士号を取得。ウィスコンシン大学マディソン校政治学部助教授を経て、1976年より現職。2010年には、第21回福岡アジア文化賞を受賞。著書 『反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー』(立木勝訳、みすず書房、2019)『実践 日々のアナキズム――世界に抗う土着の秩序の作り方』(清水展他訳、岩波書店、2017)『ゾミア――脱国家の世界史』(佐藤仁監訳、みすず書房、2013)ほか。

「2019年 『反穀物の人類史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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