ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点

  • みすず書房 (2013年12月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784622078135

感想・レビュー・書評

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  • ノモンハン事件。
    かつて旧ソ連と旧日本の間で起きた激しい戦闘の事ですが、本書はこの出来事をテーマにしています。
    と言っても、この戦闘の詳説を主眼とした物ではなく、この事件がその後の世界情勢に与えた影響について論じた一冊となっています。

    私はノモンハン事件について、旧ソ連と旧日本との間で起きた国境紛争であり、日本がソ連に打ちのめされたとしか知らず、その為、丁度良い機会と思って本書を読んでみました。

    では前置きはこの位にして、簡単に内容をまとめてみます。

    関東軍に対して劣勢に立たされていたソ連。
    同国は関東軍の屈辱的な挑発に対しても極めて抑制的な対応を取った。
    これは、ナチスドイツと日本の双方を同時に相手するのを避けるとともに、ソ連を侮った日本が中ソ両国を同時に相手にするリスクを考えず、日中戦争を開始、これにより弱体化する事を狙った物でもあった。

    日本はこのソ連の思惑に気付く事なく、盧溝橋事件を経て日中戦争に突入。
    これにより余力を失った日本に対し、ソ連は従来の態度を改め、より強硬な態度を取り始めた。

    これに反発する関東軍は、ソ連に対し軍事懲罰を与え、日本に対する態度を改めさせようと中央の意向に逆らい始める。
    またソ連も日本に苦い教訓を与え、それによってその後日本がソ連に手出ししなくなる事を企図していた。
    そして独ソ不可侵条約締結により西部方面の安全を確保した後、満州方面へ大規模な兵力移動を行った。

    日中戦争による余力の欠如。
    ソ連の兵力移動。

    この2つにより彼我の兵力差は圧倒的な物になったが、関東軍は現実を直視せず、ノモンハンでの敗北への道を走り始めた。

    ノモンハンでの敗北は日本に大きな影響を与え、それはソ連の期待通りの物であった。
    と言うのは、第2次世界大戦の雌雄を決したモスクワでの戦いの直前、ドイツは日本に対し対ソ戦参戦を促していたが、ノモンハンの記憶が残る日本はこれを拒否。

    ゾルゲ率いるスパイ網により日本の姿勢を知ったソ連は、これにより東アジア方面の安定を確信。
    シベリアに配備していた大規模兵力を移動させ、モスクワの戦いに投入。
    これにより、ドイツの敗北が確定した。


    ノモンハン事件は、一方の当事者である日本においては、よく知られているとは言い難い状況です。
    これは敗北者と言う立場が影響しているのかも知れません。
    しかし、本書はこの事件があるいは世界の歴史を決めたターニングポイントだったかも知れない・・・と教えてくれます。

    また同時にロシアがヨーロッパとアジアの双方に属している、つまり双方から影響を受けると言う特徴を持つ事も教えてくれます。
    まるでロシアと言う反響板を通し、ヨーロッパとアジアが共鳴しているかのようです。

    加えて、関東軍の

    したい事(=ソ連との戦闘)をしたい様にする為には理性を発揮する(=命令の曲解や誤解を与える事を目的とする不十分な報告の作成等)が、そのしたい事が妥当か否かについて判断する際には理性がマヒする

    と言う姿勢。
    ここから学べるものは大きいと言わざるを得ません。

    なぜこうなる?
    そう思いながら読了

  • こんなアジアの僻地の紛争が、スターリンをしてドイツとの同盟に向かわせ、ヒトラーによるポーランド侵攻、およびその後に続いたあらゆる出来事の導火線となったとは! 著者曰く、「第二次世界大戦の起源の解明という、いわばジグソーパズルを組み立てるような試みにおいて、小さくはあるが重要な、ノモンハン事件というピースに光を当てる」。ロシア側にはいまだ未発掘の資料が多数あるため、小松原スパイ説も含め、更なる解明が進めばまた新たな様相を見せるかもしれないが、現時点でこの戦役からくみ取られる教訓は本書で語り尽くされている。

    一歩間違えればヨーロッパと日本によって反共同盟が結成されるかもしれない状況で、スターリンは資本主義国間を巧みに対立させながら弱体化を狙っていた。最後まで高みの見物とは行かなかったが、第二次世界大戦では主要参線5カ国のうち二正面作戦の罠にかからなかったのは、ソ連だけである。対する日本は、独ソ不可侵条約締結時には、赤軍に敗北した上にヒトラーには見放されるなど、常に翻弄されてばかりの情けなさ。

    最終的にソ連は英仏とともにドイツと全面戦争を展開するのだが、もしスターリンがヒトラーと同盟を結ばず、すぐに英仏と同盟を結べば、ドイツが日本と同盟を結成し、勢いを得た日本がソ連の脆弱な東側国境を脅かすなど、二正面作戦が避けられなかったのに対し、史実の通り先にドイツと不可侵条約を選ぶことによって、日本を名目上の同盟国ドイツから切り離したうえで、ノモンハンで徹底的に叩くことができた。二正面作戦は何としても避けるというスターリンの方針は、徹頭徹尾貫徹されていた。

    もしノモンハンで日ソが対決することがなかったら、日本は真珠湾攻撃へ突進することなく、独ソ戦へ参加し、ひょっとすると今ごろヨーロッパの公用語はドイツ語となっていたかもしれない。

    ノモンハンにおけるソ連軍の死傷者数が後年、日本に比べて大きかったことが明らかにされ、何か日本軍も敢闘したかのような印象を受けるかもしれないが、損耗率を考慮しない戦法はその後の大祖国戦争でのドイツとの死闘でも同じことが繰り返され、これがジューコフ、ひいてはスターリンの戦い方だとわかる。

  • あの大戦を理解する上で、次元の高い視点を与えてくれる良書です。国際政治の中にノモンハン事件の歴史的意義を位置づける手際が鮮やかです。生々しい外交現場の検証からは、ソ連のスターリンの秀でた外交手腕が活写されます。それにひきかえ日本は、という話ですが、国際政治の恐ろしさを未だ学習出来ていないのが深刻な問題です。

  • ノモンハン事件のあらましを追いつつ、
    これが日ソのその後の外交政策、
    太平洋戦争や第二次世界大戦に
    どのような影響を与えたかを考察する一冊。

    ところどころ日本人の性質に関する記述に
    疑問を感じる点もあったが、
    ノモンハン事件の持つ意味合いを深掘りしており
    非常に面白い。
    また、ノモンハン事件に至る経緯についても
    細かく描写されており、
    総じて外交としての戦争のあり方を考えさせられる。

  • 謝辞

    第一章  過去の遺産
    第二章  世界の状況
    第三章  張鼓峰
    第四章  ノモンハンー序曲
    第五章  ノモンハンー限定戦争における戦訓
    第六章  ノモンハン、不可侵条約、第二次世界大戦の勃発
    第七章  揺曳するノモンハンの影
    結語

    原注
    解題 麻田雅文
    訳者あとがき
    写真一覧
    参考文献
    索引

  • この本はものすごいです。 ノモンハン事件という、私たちも名前だけは知っている歴史上の出来事が想像もつかないほど巨大な影響を世界に与えていたということがこの本で明らかにされています。 日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか、なぜ軍部が暴走し無謀な戦闘を繰り返したのかもこの本では分析されています。読むとかなりショックを受けると思います。私もこの本を読んでいて何度も「嘘でしょ・・・」と唖然としてしまいました。それほどショッキングな内容となっています。

  • 反省しない国 そしてロシア恐るべし

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著者プロフィール

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。出版社勤務を経て、翻訳業に従事。訳書にブルース・カミングス『朝鮮戦争の起源 2・上/下』(共訳、明石書店、2012年)、スチュアート・D・ゴールドマン『ノモンハン1939』(みすず書房、2013年)。

「2014年 『朝鮮戦争論 忘れられたジェノサイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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